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李在明政権、「KOSPI5000」で住宅価格を抑える?【コラム】

登録:2025-10-20 03:09 修正:2025-10-20 09:21
KOSPIが3日連続で最高値を更新した今月17日、ソウル明洞のハナ銀行のディーリングルームにこの日の終値が表示されている/聯合ニュース

 今、韓国で株価上昇は万病に効く薬として、住宅価格の上昇は諸悪の根源として扱われているようだ。くだらないながらも本質的な問いを投げかけてみよう。なぜ同じ資産なのに株価上昇は善で、住宅価格の上昇は悪なのか。いずれの資産も所有していれば、両方ともぐんぐん上がるのがいちばんうれしい。李在明(イ・ジェミョン)政権のこの時期、(株価と住宅価格の上昇は)多くの資産家に満ち足りた気持ちを抱かせている。現政権の高官も例外ではないだろう。

 しかし、今の住宅価格の上昇を少しでも肯定的な口調で語れば、神経が疑われるだろう。住むための空間である住宅と、なくても生活に不都合はない株は異なるものだという、もう一つの常識のせいだとも言える。米国のトランプ大統領は1期目に「みなさん、私のおかげで住居価格が上がったのだから感謝すべきだ」と言っている。韓国ならとんでもない話だ。金に関する限り率直で寛大すぎる米国では、問題にならなかった。トランプも、米国の住宅価格が上昇し過ぎて、近ごろは住宅価格の安定を言い出している。

 李在明政権の基調は、株価を上げることで住宅価格を抑えるというものだ。不動産に偏っている資金を株式市場に流す。そのためには株式市場をもっと上げるべきだという、簡明な論理だ。株式市場は生産的金融、不動産市場は非生産的金融だという図式も強調されている。

 株式市場の活況は、このような脈絡からはうれしさが増すニュースだと思う。政府与党としては、商法改正や株価操作の取り締まり強化などの、株式市場を強調する政策の効果だと宣伝できる。共に民主党のチョン・チョンネ代表は「経済の飛躍のための李在明政権の努力を、株式市場が証明している」と述べている。歴代政権の中でも政権初期の株式市場の上昇幅が最も大きいというから、おかしな話ではない。

 だが、不幸にも住宅価格も高騰している。李在明政権にとっては不本意な面もある。住宅価格の上昇は前政権が供給政策をきちんと展開できなかった結果だとみなしうる余地が、かなりあるからだ。かといって、監獄にいる尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領に法律にもない「住宅価格急騰予備・陰謀罪」を適用するわけにもいかない。

 このような現状において、株式市場は活性化させる一方で住宅価格は抑えられたなら、文字通り一石二鳥だ。資金は不動産に行かなければ株に流れるという主張は一見、一理あるように思える。経済でも風船効果(どこかを抑えると他のところがふくらむ)はよくある。株と預金は、株式市場が活況かどうかや金利によって資金が簡単に移動する代表的な領域だ。

 だが、不動産と株の間にもこような関係が成立すると自信を持って言うことはできない。むしろ、この二つは長期的に同期する傾向を示している、とする研究や分析も珍しくない。低金利局面が再び繰り広げられている今のような状況においては、なおさらだ。安く調達した資金で、家であろうが株であろうが簡単に買えるからだ。投資家の立場からすれば、金になるならどちらでも構わず、資産の種類は二の次だ。不動産は多くの金がかかるという程度の違いはある。加えて、資産価値が高まれば金使いも荒くなるという資産効果も発揮される。保有株の価値が上がれば、不動産投資にも余裕が生まれるということだ。住宅価格の上昇が株式投資拡大のテコになる可能性もある。李在明政権の発足後も、この二つは同じ方向に動いていた。

 株式市場そのものの限界も見過ごせない。株式市場は企業の資金調達のルートとして重要な役割を果たしている。だが、株式市場は経済成長を反映しはするものの、それそのものが経済成長だというわけではない。誰かが保有している株が急騰したというのは、基本的には他の誰かが資金を投入したから起こるのだ。誰もが株の達人になることはできないし、もし誰もが達人になったら、金を稼ぐ人間はいなくなる。「内部の人間でもないのに株を取引する人は、月明かりの下で牛を買うようなものだ(よく見えない中で取引をする)」という話がある。株式市場に続々と飛び込む者の多くは、月明かりのような朧げな光のもとで、全般的な上昇と政府の積極的な浮揚の姿勢に期待しているのだろう。政府が浮揚すると言っているのだから、それを聞いて頭に浮かぶ自己実現的予言のような面もあるわけだ。しかし株式市場の歴史では、暴騰と暴落が繰り返されてきた。今いる場所が高ければ高いほど、落ちた時の痛みも激しい。

 民主党の一部は、「KOSPI(韓国総合株価指数)5000」という大望の実現のために不動産保有税の増税を主張する。住宅価格を抑えるために「KOSPI5000」を実現すべきだということなのか、「KOSPI5000」を実現するためには住宅価格を抑えなければならないということなのか、多少曖昧になってきてもいる。まずは、二兎を追うのは難しいということを認める必要があるのではないか。

 経済成長率は0%台であり、若年非正規労働者問題は深刻化しており、ドルは下がることを知らず、庶民のマイホームの夢はさらに遠ざかっているのに、「KOSPI5000」の旗ばかりがきらびやかになびいているように思える。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボニョン|経済産業部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1224179.html韓国語原文入力:2025-10-19 16:58
訳D.K

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