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誰にも分からないトランプの気持ち【コラム】

登録:2025-09-19 01:16 修正:2025-09-19 09:35
チョン・ユギョン|国際ニュースチーム記者
トランプ大統領が7日、メリーランド州のアンドリューズ統合基地に到着し、発言している=アンドリューズ/AP・聯合ニュース

 米国のアトランタからソウルまでの飛行時間は15時間以上。最近はロシア・ウクライナ戦争で北極航路が避けられているため、以前より時間が延びたと聞いた。米国で最も混雑する空港であるアトランタの韓国行きゲートの前は、韓国に帰る人々、そして韓国での新たな経験を期待する外国人旅行客で賑わっていた。拘禁されていた韓国人労働者たちはここでようやく安堵のため息をもらしたのだろう、ふとそう思った。

 数日前、言論財団の韓米ジャーナリスト交流プログラムに参加するために米国行きの飛行機に乗った時は、雰囲気が異なっていた。一部の記者たちのESTAが突如取り消され、その後、再承認されるという騒動があり、入国審査カウンターを前にすると招請状を所持していても緊張が隠せなかった。

 先日の米ジョージア州の現代自動車とLGエナジーソリューションの合弁によるバッテリー工場に対する米移民当局の急襲・取り締まりは、ワシントンとアトランタのいずれにも影響を残した。現地で会った政府関係者は暗に遺憾の意を伝えてきて、起きてはならないことだったと口をそろえた。この事件が韓米両国の経済協力にも悪影響を及ぼすことを心配していたが、トランプ政権を大っぴらに批判することには慎重になっているようにみえた。トランプ政権に逆らうような発言は避けたがっており、政府関係者さえもトランプの真意を把握しようと努めているようだという印象を受けた。

 トランプの気持ちは誰にも分からない。そこで出会ったシンクタンクの専門家たちは、一様にそう口をそろえる。発足当初は、長官を対中強硬派でそろえたことで、中国に対するけん制を強め、韓国もそれに同調するよう迫ってくるだろうという予測が大多数だった。しかし、近ごろ出会う専門家たちは、トランプの対外政策は個人の政治的、経済的な利害関係によっていつでも変化しうるし、彼は自身に回ってくる利益を最優先にする人物だということに意見の相違はないようだった。

 工場急襲への対応でもトランプ大統領は、最初は不法滞在者の取り締まりだとして断固とした立場を示していたが、取り締まりが外国企業による投資に悪影響を及ぼすという懸念が高まると、「熟練した外国人労働者は歓迎される」と述べ、その後は一歩引いている。かつての中国人留学生のビザ問題でも、最初は強力な措置を打ち出していたものの、後になって態度を変えているが、今回もそれと似ている。

 メトロアトランタのある共和党支部を訪問した際に出会った地域住民たちからは、韓国人労働者が概して合法的手続きの中で働いていたにも関わらず拘禁されたということはよく知らないという印象を受けた。逆に、現代自動車工場が期待していたほど雇用を増やせていないという強い不満を抱いていた。競合州の特性上、政治家たちも、外交問題よりも当面の地域の民意に敏感だった。ある外交業界人は、同州のケンプ知事が前回の大統領選挙でトランプ大統領を積極的に支持しなかった人物だということも、むしろ積極的に発言していない理由であると指摘した。

 時間がたてばたつほど、トランプ政権の最優先目標は外交ではなく中間選挙に備えた支持層の結集になるという印象を受けるようになる。物価上昇と両極化の深化の中で、反移民政策は不満の矛先を特定の集団に向ける手段となっていた。先日の極右のインフルエンサー、チャーリー・カークが殺害されてマスコミの関心がそちらに向くと、ジョージア事件はむしろ実務陣によって早期に収拾される雰囲気だ。交流プログラムで出会ったある現地のジャーナリストは、「問題を絶えず引き起こしてメディアの関心を分散させることがトランプの戦略」だと語った。一国の外交政策すら予想がつかないのなら、他国はどう対応すべきなのか。重い問いの残る帰国だった。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ユギョン|国際ニュースチーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1219527.html韓国語原文入力:2025-09-18 18:38
訳D.K

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