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朝米関係と「ペースメーカー」【寄稿】

登録:2025-09-01 06:34 修正:2025-09-01 08:37
ペースメーカーは何をすべきか。南北米三角関係で南北関係は速すぎても遅すぎてもいけない。韓米日と朝中ロの陣営対立も速度を落とさなければならない。そのため、韓中関係が重要だ。…不安定な朝米の橋を補う南北の橋は、制裁以前は経済協力だったが、現在は軍事分野の信頼構築だ。南北境界地域での平和経済に集中し、できないことについては言葉を慎まなければならない。

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授
李在明大統領とドナルド・トランプ米大統領が25日(現地時間)、米ワシントンのホワイトハウスで首脳会談中に握手している/聯合ニュース

 韓米首脳会談で朝米交渉のきっかけが作られた。ところが、中国の戦勝節を機に朝中ロ3カ国首脳会談が開かれる。中国とロシアの国際ルールをめぐる温度差により朝中関係と朝ロ関係の差は依然としてあるが、韓米日協力に対抗する朝中ロ協力は強化されるだろう。朝鮮半島の地政学で陣営間の対立は不利であり、避けなければならない。陣営をつなぐ橋、まさに朝米関係を再開すべきだ。朝鮮半島をめぐる秩序の構造のため、米国が動いてこそ南北関係の空間も開かれる。今後、朝米関係はどうなるだろうか。

 今すぐ越えなければならない山は、ロシアとウクライナ戦争の終戦だ。北朝鮮は戦争中であり、ロシアとの関係に集中するとともに、南方に向かう門を閉じた。ウクライナ戦線で培った実戦経験は、いつでも軍事冒険主義へと進む可能性がある。ロシアとウクライナの戦争が終わってこそ、北朝鮮は軍事から外交へと国家戦略の基調を切り替えられるだろう。

 慶州(キョンジュ)で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の前にロシアとウクライナの戦争が終わればいいが、容易ではないだろう。ただし「ピースメーカー」になりたいドナルド・トランプ米大統領は、終戦交渉が遅々として進まなかった場合、北朝鮮に関心を移す可能性が高い。これまでトランプ大統領は、コンゴとルワンダの紛争からタイとカンボジアの戦争、イスラエルとイランの戦争、ロシアとウクライナの戦争へと、次々と解決者としての役割を移してきた。

 もちろん紛争の解決はある日突然訪れるものではない。戦争から平和へと進む過程は、傷を癒す治癒の時間を要する。紛争解決も不信を信頼に変える過程の中、ゆっくりと前進し、時には後退する。指導者の決断で不可能な交渉が成功することもあるが、平和の持続可能性は信頼の構築にかかっている。争点の調整と合意の履行を管理するのは実務交渉の役目だ。

 すべての交渉は、首脳会談というトップダウン式と実務会談というボトムアップ式を補完してこそ成功する。トランプ外交のメリットであると同時にデメリットは、他でもなく実務交渉の役割がないという点だ。 韓米首脳会談を準備する過程で経験した実務と首脳の温度差は、後続措置の履行過程で再び繰り返されるだろう。朝米関係も同じだ。これまで朝米関係は、夏の浜辺の砂の城のように、少し積み上がっても、不信の波が押し寄せると、一瞬にして崩れた。2019年ハノイ会談の失敗原因の一つは実務交渉の不在だった。

 第2次トランプ政権は第1次と比べて、大統領の役割がさらに大きくなった。トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が慶州あるいは板門店(パンムンジョム)で再び会う可能性はある。それ自体で緊張緩和の効果は大きい。しかし、首脳会談で30年間解決できなかった北朝鮮の核交渉の解決策を作り出すのは難しい。必ず首脳会談の前後に実務交渉が必要だ。

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が韓国の役割を「ペースメーカー」とした理由がここにある。韓国の役割は、朝米関係の弱点である実務交渉の空白を埋めることだ。もちろん、2019年のハノイ会談で経験したように、北朝鮮と米国はいずれも韓国に実務交渉の役割を与えようとしないだろう。仲裁者の役割は双方を会談場に連れてくることで終わる。交渉を始めれば当然仲裁者の居場所はない。韓国に対する北朝鮮の不信感を考えると、南北関係で朝米関係を繋ぎ止めることも難しい。

 逆に膠着局面で北朝鮮は米国に圧力をかけるために、韓国に対する非難を強めるだろう。そうなれば、北朝鮮に対する世論は悪化し、対北朝鮮政策への支持基盤は弱くなる。冷戦反共主義を基盤とする野党の存在で、国民的合意基盤は常に揺らぐだろう。韓国政府は、対北朝鮮政策の支持基盤のために民主陣営の連帯を維持し、対北朝鮮政策が亀裂の口実を提供しないよう慎重を期さなければならない。

 では、ペースメーカーは何をすべきだろうか。南北米三角関係で南北関係は速すぎても遅すぎてもいけない。韓米日と朝中ロの陣営対立も速度を落とさなければならない。そのため、韓中関係が重要だ。北朝鮮の核問題については韓中両国の共感が存在する。 変わった情勢を反映して、新たな交渉案を韓米と韓中対話でまとめる必要がある。韓国の外交的存在感は解決過程で「何ができるか」にかかっている。北朝鮮核問題の解決策、すなわち凍結-削減-非核化の3段階で、凍結の環境づくりの具体的な解決策を講じなければならない。

 不安定な朝米の橋を補う南北の橋は、制裁以前は経済協力だったが、現在は軍事分野の信頼構築だ。南北境界地域での平和経済に集中し、できないことについては言葉を慎まなければならない。政府が直面した新しい秩序の複雑さを、国民は忍耐を持って見守らなければならず、政府はチャンスを作るために動かなければならない。実用外交の生命力はまさに柔軟性だ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1216166.html韓国語原文入力: 2025-08-31 18:41
訳H.J

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