「北大西洋条約機構(NATO)憲章第5条については、多くの(numerous)定義があります。それをご存じですよね」
米国のドナルド・トランプ大統領は、NATO首脳会議に参加するためにオランダのハーグに向かった先月23日(現地時間)、米大統領専用機「エアフォースワン」の機内で記者団と短い会話を交わした。この日のやり取りの中心は、トランプ大統領が執着するNATO加盟国の国防予算の増額問題だった。多くの国が、2035年までに国防予算を国内総生産(GDP)の5%まで引き上げることに同意したが、ロシアの脅威からは比較的自由なスペインが抵抗していた。
対話の途中で、ある記者が「1カ国あるいは2カ国以上の国に対する攻撃を、全体に対する攻撃とみなして共同で対応する」(集団防衛)という内容を含むNATO憲章第5条の意味に言及すると、トランプ大統領は少し口ごもった。その後、欧州全体を震撼させる言葉を口にした。「それは定義次第です。第5条には多くの定義があります」
トランプ大統領の主張とは違い、この条項はいくら読んでも「多種多様な解釈」の余地はない。もし1カ国以上のNATO加盟国が攻撃を受けた場合、米国はこれを自国に対する攻撃とみなし、必要であれば武力を用いてでも該当の国を助けなければならない。まさにこの条項のために、ウクライナは「NATOに加盟させてほしい」として、3年以上にわたりロシアの過酷な攻撃に耐えており、これをそばで見守っているフィンランド(2023)とスウェーデン(2024)も同様に、長年の中立政策を放棄して加盟を選択した。もしトランプ大統領が暗示するように、この条項が米国の「自動介入」を保障するものではないとなると、NATOは一気に「張りぼて」に転落することになる。
NATOとは違い解釈の余地があるのは、韓国が大事な宝物のように受け入れた韓米相互防衛条約(1954年施行)だ。この条約で米国が約束したのは、韓国が攻撃された場合、これに「対処するために各自の憲法上の手続きに従い行動することを宣言する」ということだけだ。これは、韓国を助ける場合には米国議会の同意が必要だとする意味であり、厳密にみると、米国の自動参戦を保障するものではない。この余地を埋めてきたのが、一時は休戦ラインの前方に配置されていた米軍の存在(トリップワイヤー)と、韓国を徹底的に防衛するという米国の安全保障の公約だった。トランプ大統領は近いうちに「より大きな金額」を要求し、韓国に対する安全保障の公約を弱めようとするだろう。韓米同盟は今、大きな危機に直面している。