ウィ・ソンラク国家安保室長が6日、米国に向けて飛び立った。就任後初の訪米だ。出国前にウィ室長は記者団に対し、「今(韓米の)協議は重要な局面に入りつつある」と述べた。ウィ室長の言う通り、韓米関係は外交・安保全般にわたって重大な岐路に立たさている。李在明(イ・ジェミョン)政権の初代の外交安保の司令塔として、ウィ室長は今回の訪米で、韓米首脳会談の早期実現▽相互関税交渉▽国内の批判世論の改善という3つの課題を解決して帰国しなければならない。
ウィ室長はこの日午前、仁川(インチョン)国際空港の出国ロビーで取材陣に対し、「このかん韓米の間では、通商と安保に関する様々な懸案が協議されてきた」とし、「すでに私は北大西洋条約機構(NATO)会議の訪問でも同様の協議をおこなっており、今回の訪米はその協議を継続するためのもの」だと述べた。ウィ室長は今回の訪米でマルコ・ルビオ国務長官兼国家安保担当大統領補佐官と会い、安保・通商懸案について協議するものとみられる。
第一のミッションは、李在明大統領の具体的な訪米日程を決めることだ。発足したばかりの李在明政権にとって、トランプ大統領との首脳会談の早期実現は何よりも切実な課題だ。問題は、8月に予定されているトランプ大統領の夏休みが迫っているうえ、9月からは国連総会やASEAN首脳会議などの多国間会議の日程が控えているため、形式と内実を兼ね備えた2国間首脳会談が行える期間が限られていることだ。トランプ大統領が最高指導者同士の談判を通じて問題を「トップダウン」で解決することを好むことを考えれば、首脳会談が8月以降にずれ込むと、李在明政権にのしかかる負担はいっそう重くならざるを得ない。
相互関税の猶予終了(7月8日)が目前に迫っているだけに、関税問題もウィ室長が訪米期間中に扱うべき最重要議題だ。もちろん関税問題は、今月5日(現地時間)から訪米中の産業通商資源部のヨ・ハング通商交渉本部長が主に議論している可能性が高い。だが、現時点で李在明大統領が米国に送れる最高位級の人物がウィ室長であることを考えると、ウィ室長が「ディール」の大枠を提案することも排除できない。
注目すべきは、トランプ大統領が関税率を通告する書簡に署名し、12の貿易相手国に7日(現地時間)に発送する予定だということだ。送り先に韓国が含まれているかは分かっていないが、含まれているとしても、書簡の発送時期を遅らせることで猶予期間を延長したり、この書簡を効力が次の交渉までの「暫定通告」とするというかたちにしたりすることも、ウィ室長にとっては不可能ではないだろう、というのが外交家の評価だ。
李在明大統領とトランプ大統領の初の首脳会談が延期されたことで生じた国民の不安を解消することも、今回のウィ室長の訪米目的の一つだ。韓米首脳会談は当初、先月15~17日にカナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)を機に行われる予定だったものの、トランプ大統領が早期に帰国したため実現しなかった。その後、今月9日前後で調整されていたルビオ長官の訪韓まで取り消しになったことで、主に野党と保守メディアから「外交が時機を逸している」ことを懸念する声が強まっていた。外交部の元高官は「ウィ室長の今回の訪米は、結果的に場所が変わっただけで、同じ日に韓米の外交のトップが予定していた協議をそのまま進めるものであるため、国民の不安を解消する契機になるだろう」との見通しを示した。