「軍人も不当な命令を拒否できるでしょうか。これは法律に書かれているでしょうか」。12・3戒厳内乱が勃発してから2日ほど経ったとき、筆者はある番組にパネリストとして出演した。司会者が上記のような質問をしたので、筆者は「拒否できます。法律に書かれています」と答えた。「ただし、抗命した瞬間、抗命罪に追い込まれ、その後の裁判の過程で無罪を主張する構造になっているので、当事者としては大変なことです。パク・チョンフン大佐がまさにその例です」と付け加えた。
恥ずかしいことに、間違った内容だった。判例を通じて確認された法理はあるが、明文の条項はない。大韓民国の法律のどこにも、「軍人は正当な命令にのみ服従し、不当な命令は拒否できる」という規定は存在しない。何度か立法の試みがあっただけだ。この寄稿を書く理由がそれだ。遅ればせながら、今からでも「不当な命令を拒否する権利」を法律に刻み込まなければならない。韓国を守る真の力は、不当な命令を前に躊躇し、そして拒否する軍人であることを、全国民が目撃した。
まずはファクトチェック。「不当な命令を拒否する権利」は、韓国の法律にはないのか。「軍刑法」第44条は「上官の“正当な命令”に逆らい服従しない者」は処罰されると規定している。この条項を根拠に「正当な命令でなければ拒否できる」というのを導きだすこともあるが、行き過ぎた解釈だ。「処罰されない」と「拒否する権利を持つ」ははっきりと異なる。
軍人の基本権を保障する基本法として2015年に制定された「軍人服務基本法」では、どうなっているのか。同法第25条は「上官の“職務上の命令”に服従しなければならない」と規定する。「正当な」ではなく「職務上」だ。「私的な業務指示」(上官の家族の手伝いなど)には従わなくてもいいという内容だ。「職務上の命令にのみ従え」程度の規定では、「非常戒厳だから国会に進入せよ」といった違憲・違法な命令に対する服従を阻止するには到底足りない。
2000年代以降、軍人の権利をめぐり、2回の立法的な局面が存在した。1回目は2005年に起きた論山(ノンサン)訓練所人糞事件と第28師団内務班での銃器乱射事件の後のことだった。この局面で盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は2007年7月、軍人服務基本法案(政府案)を発議した。「将兵の基本権を明示した初の基本法」を追求した同法案第21条は、「軍人は上官の“正当な”命令に服従」するというものだった。しかし、盧武鉉政権の任期末期に発議された同法案は、適切な議論の機会も与えられず、任期満了で自動廃棄された。
2回目の立法的局面は、2014年に発生した「ユン一等兵」「イム兵長」事件だった。このとき、参与連帯などの市民団体が国会に立法請願案を提出した。「軍人は、人間の尊厳を侵害する命令や国際法に反する命令、職務上の目的にそぐわない命令を履行してはならない」という内容の立法要求であった。これは、上記で確認した2015年の軍人服務基本法の制定につながったが、軍紀低下などを理由に「正当な命令にのみ従う」という内容は法律に加えることはできなかった。
筆者は、12・3戒厳内乱事態は3回目の立法的局面だと考える。今回のクーデターが失敗した重要な原因の一つは、軍人の躊躇と不服従だった。この不服従がいかに重要なのか、軍隊が怪物になることを防ぐ防波堤なのかを誰もが実感した。「処罰を受けない」ではなく「拒否する権利がある」という立法を行う必要がある。
立法の1次的効用は教育だ。筆者は「ベトナム戦争時の韓国軍による民間人虐殺事件」でベトナム人被害者を代理し、国家賠償訴訟を進めている。ベトナム戦争に参戦した軍人の1人が勇気を出し、2022年にソウル中央地方裁に証人として出廷した。「証人は、国際人道法や戦争法の教育を受けたことがありますか」「ありません」「証人は、非武装の民間人を攻撃することが国際法違反だという事実を、教育されたことがありますか」「ありません」。教育の不在は、当時の悲劇の原因の一つだった。
軍人服務基本法第25条を「軍人は職務を遂行する場合、上官の正当かつ職務上の範囲に属する命令にのみ従う」と改正しよう。この条項の改正理由として、12・3戒厳内乱を明示しよう。軍人教育にこの条項の立法趣旨と適用事例を必ず入れよう。この教育のもとで、民主主義社会における軍隊と命令の意味が何であるのかを絶えず喚起させよう。「服従する軍人」ではなく「悩み判断する軍人」だけが、「国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務」(憲法第5条2項)を完全に遂行できる。
イム・ジェソン|弁護士・社会学者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )