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[社説]韓国国民は尹大統領を審判した

登録:2024-04-11 07:47 修正:2024-04-12 05:52
過去2年間の無能と失政、これ以上我慢できず 
国政基調が変わらなければ、民意の警告がまた出てくる 
野党側も力を与えた国民の意向を深く考えるべき
尹錫悦大統領が4日、ソウル市龍山にある大統領室庁舎で開かれた民生討論会後続措置第2回・経済分野点検会議に参加して発言している/聯合ニュース

 民意は断固かつ厳粛だった。10日に行われた第22代韓国総選挙は、政権与党「国民の力」の凄惨な敗北で終わった。与党への審判という形ではあるが、本質は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する信任が相当部分失われたものとみなければならない。政権就任からの2年間、傲慢と独善、コミュニケーション欠如と退行の政治で一貫した成績表だ。尹錫悦大統領は、総選挙前よりはるかに大きくなった「与党少数・野党多数」の国会を前にして、早期のレームダック(権力漏水)が不可避になった。野党との積極的な協力政治なしには、正常な国政運営は困難になった。選挙結果は、異常な国政基調を全面的に刷新せよという民意のメッセージだ。一方通行式の統治は止めよというものだ。今こそ尹大統領が答えを出さなければならないときだ。

 まず、尹大統領は、選挙結果に表れた民意を謙虚に受け入れなければならない。他の誰でもない自身が招いた結果であるからだ。わずか2年前の大統領選挙では、国民は尹大統領が前面に出した「公正と常識」を選択し、国政を任せた。しかし、尹大統領は政権就任後、正反対の道に走った。海兵隊のC上等兵殉職事件への外圧疑惑、夫人のキム・ゴンヒ女史の「ディオールバッグ」授受とドイツ・モーターズ株価操作事件などで示した「自分に甘く他人に厳しい」態度はほんの一部にすぎない。尹大統領は総選挙を控え、C上等兵殉職事件の主要な被疑者であるイ・ジョンソプ前国防部長官を駐オーストラリア大使に任命することによって、国民の信頼と忍耐心を自ら損ねた。

第22代国会議員選挙日の10日午後、蔚山市南区の文殊体育館に用意された開票所で開票作業が行われている/聯合ニュース

 それだけではない。過去2年間、大多数の国民の生活で良くなったものはない。所得の不平等がますます深刻化し、高騰する物価に苦しめられているのに、大統領は事前に演出された875ウォンの長ネギを持って「合理的な値段」だと述べた。苦しむ庶民をさらに腹立たせる言葉だった。豪快に叫んだ労働・教育・年金改革は、一歩も進むことができなかった。野党とも手を取り合い対話する協力政治自体を敵対視した結果だ。代わりに、時代錯誤的な理念論争を触発して実体が曖昧なカルテルの廃止を持ちだし、国民を疲れさせた。国政経験が一度もない検察出身の側近を国政の要職に配置し、国政運営の動力を民意からではなく検察捜査から得ようとした。「バイデン・飛ばせば(ナルリミョン)」論争で示されたように、批判的なメディアを包容できない権威主義的な形態も見せた。

 何かにつけて拒否権行使で立法府を無視し、野党代表は被告人だという理由で最初から会おうともしなかった。与党をも掌握するために代表の交替もたやすく行ない、政党政治の独自性を損ねた。それでも不利な総選挙結果が予想されると、「民生討論会」を口実に露骨な選挙介入をはばからなかった。土建中心の公約を乱発すれば、それで与党の支持票を集められると思ったのか。終盤には、最側近のハン・ドンフン前法務部長官を与党代表として前面に押しだし、局面転換を図ったが、総選挙惨敗を防ぐことはできなかった。32年ぶりの最高値を記録した今回の総選挙の投票率(67%)は、有権者の失望と怒りがいかに大きく深いのかを端的に示している。与党惨敗は一言で言えば、尹大統領の自業自得だ。

 総選挙の民意は、国政の全面的な方向転換を強く要求している。我慢できずに「イエローカード」を取り出したのだ。まずは尹大統領自身から変わらなければならない。尹大統領は昨年、ソウル市江西区(カンソグ)区長の補欠選挙での惨敗後、「国民は無条件で正しい。いかなる批判にも弁解してはならない」と述べたことがある。側近たちにはそう求めておきながら、肝心の自分はまったく守らなかった。今回もそうであってはならない。総選挙後もコミュニケーション欠如・独善・退行を続けるのであれば、「レッドカード」が出てくるかもしれない。民意に応じるためには、過去2年間の国政運営全般を省察することが基本だ。内閣と大統領室の人的刷新もためらわずに行うべきだ。明確な行動を通じて変化の意志を証明しなければならない。協力政治は言うまでもない。

 野党側は期待以上の議席を得た。しかし細かく見れば、評価されて得た成績表ではない。尹大統領と政権与党の無能と実情が、野党側に大きな反射利益をもたらしたのだ。民意に順応すれば票を得て、民意を逆らえば審判されるという真理は、今回も間違いなく証明された。野党側はこれを重く受け止めねばならない。公認はもちろん、選挙運動の過程で明らかになった問題は少なくない。立法府の一員になるにはあまりにも不十分な候補者も多数あらわれた。選挙時のような嫌悪と暴言、排除の政治は、これ以上続けてはならない。第21代国会が一貫して「争いの国会」だったのは、もちろん与党の過ちが最も大きいが、野党の責任がないとは言えない。国民は「巨大な野党」が国会でどれほど生産的な政治をするのか、はたして政権担当能力があるのかを注意深く見守るだろう。

 今回の総選挙は、「国民に勝る権力はない」という平凡な事実を改めて確認させた。特に尹錫悦大統領と国民の力をはじめとする政権勢力には、最後の警告を明確に発した。また、野党側に対しては、本来の役割をしっかりせよというシグナルを送った。大統領を筆頭に、与野党すべてが厳粛な心で民意のメッセージを刻み込まなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1136113.html韓国語原文入力:2024-04-11 05:13
訳M.S

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