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[コラム]「安倍談話2.0」と大韓民国のアイデンティティ

登録:2024-03-20 06:37 修正:2024-03-20 07:25
日本の安倍晋三首相は2015年6月、東京で開かれた韓日国交正常化50周年記念行事で、「これまでの50年間の友好の歴史を振り返り、これからの50年を見据えよう」と提案した=東京/ロイター・聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「外交・安保政策」を主導する人たちのアイデンティティは何だろうか。この問題について2年近く考えてきた。「基本的価値」を共有する隣人である日本と良好な関係を維持すべきというのが個人的な持論ではあるが、それにあまりにも「全賭け」するような姿には理解に苦しむところがあったからだ。

 長年の疑問が解けたのは、尹大統領の三一節記念演説と、来年には韓日共同宣言(金大中・小渕宣言)に代わる新たな文書を作りたいという大統領室高官の発言を聞いてからだった。これは、実はかなり前に日本で聞いたレパートリーの「二番煎じ」だった。元祖は安倍晋三元首相(1954~022)が2015年に発表した「安倍談話(戦後70年談話)」だ。この二つのメッセージは、韓国が(または日本が)インド太平洋地域で中国に対抗し、米国中心の国際秩序を守り抜くのに積極的に貢献するという同じ内容を打ち出している。そのような意味で、安倍元首相が代弁した日本の保守と尹政権を率いる核心勢力は事実上同じイデオロギーを共有する「同一の集団」と言えるかもしれない。

 安倍元首相は談話で、「『いかなる国』の恣意にも左右されない、自由で、公正で、開かれた国際経済システムを発展」させ、「価値を共有する国々と手を携えて、『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献していく」という覚悟を明らかにした。ここでの「いかなる国」が、当時東シナ海と南シナ海で強圧的な姿を見せ始めた中国であることは言うまでもない。また、日本と歴史問題で対立してきた韓国などには「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」として「寛容」を求めた。

 今年、尹大統領の三一節記念演説も同様の内容で構成されている。尹大統領は韓日両国が「自由・人権・法治の価値を共有し、共同の利益を追求し、世界の平和と繁栄のために協力するパートナー」になったとしたうえで、北朝鮮が嫌がる吸収統一に対する強い意志を表わす「自由な統一大韓民国」という主語を使い、韓国は「北東アジアはもちろんインド太平洋地域と世界の平和と繁栄に貢献する」と宣言した。

 これまで韓日は、歴史問題をめぐる対立や北朝鮮と中国に対する見方の違いのため、一つに密着した共通のビジョンを持つことが難しかった。歴代の保守政権も日本との関係を重視したが、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の独島(トクト)訪問(2012)、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の慰安婦外交(2013~2015)を見る限り、歴史問題と関連した本質的な原則を損なうことはなかった。「血を分けた」北朝鮮はもちろん、冷戦後に密接になった中国への接し方においても根本的な違いがあった。李明博政権が南北首脳会談のために秘密裏に北朝鮮にアプローチしたこと(2009・2011)や朴元大統領が中国との関係改善のために天安門の望楼に上がったこと(2015)などが良い事例だ。しかし、尹政権は昨年3月、強制動員被害者賠償問題と関連し、日本に一方的な譲歩案を示してから、一度も謝罪と反省を求めていない。日本が求めた寛容を実践したのだ。また、北朝鮮核問題の解決が事実上難しくなり、米中の戦略対立が深まる隙を狙って、両国の対中・対北朝鮮観を劇的に一致させている。

 尹政権はここで満足せず、両国の世界観を完璧に一つに合わせるという抱負を明らかにしている。大統領室高官は13日、両国が韓日共同宣言をアップグレードする時期を迎えたことは明らかだとしたうえで、「韓国と日本がともに志すビジョンも地理的に(朝鮮半島を越えて)さらに拡張されなければならない」と述べた。同高官の言葉が現実になった場合、新たな宣言には台湾(東シナ海)と南シナ海を含むインド太平洋の広い地域で両国が軍事協力を進めるという内容が含まれる可能性が高い。日本の反省的歴史認識と平和憲法に基づいて作られた金大中・小渕共同宣言は歴史の中へと消え、歴史は忘れて軍事協力に重点を置こうという新たな宣言に取って代わることになる。

 こうして作られた新たな宣言に最も適した名称はおそらく「安倍談話2.0バージョン」だろう。尹政権の発足から2年で南北関係は破綻し、韓日は「結合双生児」になろうとしている。尹政権を率いる人々が目指すのは、新冷戦という変化に合わせて、韓国の歴史認識、対北朝鮮観、対中国観を再構築することだ。大韓民国のアイデンティティを完全に覆すことに他ならない。

//ハンギョレ新聞社
キル・ユンヒョン|論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1132986.html韓国語原文入力: 2024-03-19 18:37
訳H.J

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