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[コラム]露ウ戦争と朝鮮半島、その奇妙な関係について

登録:2024-02-27 00:51 修正:2024-02-27 06:52
南北、ロシア・ウクライナ戦争の主要な兵器供給元に 
戦争終結と朝鮮半島情勢の転換は切実
20日(現地時間)、ロシア軍のミサイル攻撃を受けたウクライナのクラマトルスクの浄水施設から煙が立ちのぼっている=クラマトルスク/ロイター・聯合ニュース

 2022年2月24日のロシアによる不法な侵攻で始まったロシア・ウクライナ戦争が2年を超えた。この戦争を見つめる視線は様々だ。露ウ戦争が朝鮮半島情勢と高度につながっていることも見逃せない。米国とロシアの代理戦の色が濃いこの戦争で、韓国の「親米」と北朝鮮の「反米」が激しく衝突しているからだ。これは修辞的なレベルにとどまるものではない。南北が露ウ戦争の主要な兵器供給元になっているのだからなおさらだ。

 昨年、米国の主要メディアは、米国が韓国から提供を受けてウクライナに供給した砲弾の量は、欧州諸国の全供給量より多かったと報道した。このような動きを注視しつつ「韓ロ関係は破綻するだろう」と警告したロシアは、ついに北朝鮮と手を取り合い、そして差しのべた。9月の朝ロ首脳会談を契機として全方位的な協力が本格化したが、その結果の一つこそまさに北朝鮮のロシアに対する兵器提供だ。朝ロの否定にもかかわらず、様々な情報と情況を総合すると、多量の北朝鮮製の砲弾やミサイルがウクライナの戦場に投入されたのは確実なようにみえる。

 1940年代の朝鮮半島の分断と南北の単独政府樹立から1989年の米ソの冷戦終息宣言に至るまでの40年あまりにわたって、韓国は米国から、北朝鮮はソ連から軍事支援を受けていた。また近ごろ韓国と北朝鮮は、互いを主敵と規定して戦争準備に没頭している。にもかかわらず、ユーラシアの東端にある韓国と北朝鮮は、反対側で起こっている戦争の主要な兵器供給国となっている。このような馴染みのない奇異な現象は、どうすれば理解できるのだろうか。

 最近の情勢に目を向けると、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が標榜してきた「価値観連帯」と金正恩(キム・ジョンウン)政権の「反米連帯」がウクライナで衝突していると解釈できる。韓国政府がかつてのように最小限の均衡外交の脈絡からロシアとの関係を重視していたなら、砲弾をよこせという米国の要求を簡単に受け入れることはなかっただろう。北朝鮮政権がかつてのように米国と親しくなることを望んでいたなら、地球上で最も強力な対ロ支持・支援国とはならなかっただろう。したがって、韓国と北朝鮮の相反する選択は、韓国の「親米盲信」と北朝鮮の「親米挫折」が生んだ結果だ。

 こうした脈絡から考えると、北朝鮮の核武装は「ゲームチェンジャー」としての属性を持っていると言っても過言ではない。通常の軍事力で韓国より格段に劣勢にある北朝鮮が、ロシアに多量の兵器を提供しえたことの背景には、核武装による自信がある。これはロシアの思惑の変化ともつながっている。かつてのロシアは国連安保理の常任理事国、かつ核不拡散条約(NPT)のオリジナルメンバーとして、核の不拡散を重視していた。だから、国連安保理の北朝鮮に対する糾弾と制裁にも参加していた。しかし最近、地政学的環境が変化したと判断したロシアは、北朝鮮の核武装を容認するとともに、北朝鮮製の兵器の提供を受けている。ロシアによる北朝鮮の核の容認と北朝鮮のロシアに対する兵器提供の交換が行われているわけだ。また、北朝鮮の核能力の高まりにつれ、韓国の対米依存はさらにひどくなりつつある。これはもう一つの交換を生んでいる。米国は韓国に対してより強力な拡大抑止を提供し、韓国は米国の要求に従ってウクライナに砲弾を迂回支援する様相を呈しているのだ。

 だが、全般的な情勢は朝ロ連帯に有利に展開している。昨年夏のウクライナの反転攻勢は事実上失敗に終わり、西側のウクライナ支援疲れもかなりのものだ。逆にロシアは長期戦を展開しうる力量を蓄積しており、朝ロ連帯もロシアの大統領選挙後に予定されているプーチン大統領の訪朝を機としてさらに強まる勢いだ。このような状況でドナルド・トランプが再び政権の座につけば、露ウ戦争と朝鮮半島情勢にも大きな波乱が起きることになるだろう。手遅れになる前に、関係する当事国がこう着状態に陥っている露ウ戦争の終結と、対話は消え去り対決ばかりが幅をきかす朝鮮半島情勢の反転を図るべき理由がここにある。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所 所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1129782.html韓国語原文入力:2024-02-26 07:11
訳D.K

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