尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の夫人キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受疑惑について、検察をはじめとする韓国の司正機関は沈黙を守っている。現大統領の夫人が「賄賂」を受け取った情況が明らかになったにもかかわらず、これを捜査し取り調べなければならない機関が知らないふりをしている。キム女史は少なくともキム・ヨンラン法(不正請託及び金品などの授受禁止法)に違反した情況が明らかで、「金融委員人事」など、国政に介入した疑惑も持ち上がった状態だ。にもかかわらず、キム・ヨンラン法に違反したかどうかを調査する国民権益委員会はもちろん、捜査権を持った検察と警察もこの問題から目をそらしている。 これが尹錫悦政府の言う「公正」なのか。
「キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受」動画を公開したチェ・ジェヨン牧師側は、キム女史がプレゼントを用意したというメッセージを読んでから訪問を許可しており、ブランドバッグを遠慮なく受け取ったと主張する。これは動画を通じて公開された。キム・ヨンラン法は、公職者またはその配偶者が同一人物から1回100万ウォン(約11万円)または1年300万ウォン(33万円)を超過する金品を受け取った場合、処罰の対象にしている。特にチェ牧師側は、ブランドバッグを渡す前に、キム女史の金融委員人事請託の情況を目撃したと主張している。
国民権益委員会は8月と11月、前韓国放送理事長と前放送文化振興会理事長に対し、キム・ヨンラン法違反の疑いがあるとし、それぞれ最高検察庁に捜査を求めた。ところが、今回の事件についてはまったく動いていない。このように選択的行動を取るから、「放送掌握」のために動員されたと言われるのではないか。
最高司正機関の検察の沈黙も恥ずべきことだ。刑事訴訟法は「検事は犯罪の疑いがあると思料するときは犯人、犯罪事実と証拠を捜査する」と定めている。検事が犯罪容疑を知りながら捜査しないのは職務遺棄だ。これまで野党関連の質問には厳しい態度を示してきたハン・ドンフン法務部長官が、この事件に関する質問には「内容をよく知らない」として卑怯な態度を取ったのも、職務遺棄という批判を避けるための対応とみられる。
一部では「おとり取材」を理由に挙げ、違法に収集された証拠は捜査に使えないという「毒樹の果実」を口実に掲げる。しかし、「毒樹」(証拠)は捜査機関が収集した違法な証拠を指すもので、この事案には当たらない。また、この事件の本質は「おとり取材」ではなく、「大統領夫人のプレゼント授受と関連疑惑」だ。何が重要なのかを考えるべきだ。保守メディアでさえ世論の悪化を懸念し、この問題をそのまま見過ごしてはならないと主張するほどだ。
尹錫悦大統領は前政権で「生きた権力による捜査」で世論の支持を集め、政権を握った。ハン・ドンフン長官とイ・ウォンソク検察総長は当時、尹大統領の中核的な参謀だった。ところが、今検察はなぜ野党の前だけ威勢を張り、尹大統領の前では身を低くするのか。今後もそれを続けるつもりなら、これ以上「公正」を口にしてはならない。