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[特派員コラム]米国の指導者たちがますます率直になるわけは

登録:2023-12-01 08:27 修正:2023-12-01 10:08
10月19日、ジョー・バイデン米大統領がホワイトハウスの執務室でイスラエルとハマスの衝突について国民向け演説をしている/AFP・聯合ニュース

 帝国の特性の一つは余裕である。帝国にとって、威厳と寛容はコインの裏表の関係にある。中国の王朝は朝貢貿易で従属国が捧げるものより多く施したりもした。冷戦時代、ソ連は自国より豊かな東欧諸国を無償で支援した。実際には(それらの国々から)取り上げるものが多くても、寛大で気前が良い姿を見せるのが帝国の治世方式の一つだった。

 ところが、米国では最近、そのような姿があまり見られない。追い込まれると本音が飛び出すように、偽善を取り除いた発言も多くなっている。ジョー・バイデン大統領は10月19日の演説で、ウクライナへの追加支援が米国の雇用を作り出すと述べた。ジェームズ・オブライエン国務次官補は11月8日、上院外交委員会の聴聞会で、兵器の在庫をウクライナに渡せば、米国の兵器庫を新しく効率性の高い兵器で満たすことができるため、ウクライナへの支援額のほとんどが米国に対する投資だと答弁した。ホワイトハウスは、兵器工場がある州別に予算がどれだけ回るかを示す地図まで作った。税金の無駄遣いと批判する共和党議員に「愚か者たちよ! そのお金は結局、あなたたちの選挙区に戻ってくるのだ」と反論しているわけだ。

 これはウクライナの自由を守るための「崇高な」支援の裏に、冷静な計算があることを示す場面でもある。ロビイストたちが先を争ってウクライナ政府のために無料ロビーを買って出る奇妙な状況も、一方的な支援という主張が近視眼的であることを示している。お金は結局、米国の軍需企業の懐に入るため、ロビイストたちはそこで自分の分け前を確保すれば良いのだ。軍産複合体の営業秘密を打ち明けるような異例の説明は、米国が隠してきた真実をもはや内外に明らかにせざるを得ない境遇になったことを現わしている。そうでもしなければ、有権者を説得できない。

 米国が先頭に立って築いてきた自由貿易秩序を自ら傷つけているのも、このような態度転換の一形態である。「サプライチェーンの安定」は結局、中国の浮上を阻止するという意味だ。米国にとっては、学年順位1位の生徒がほかの生徒にノートを貸して問題の解き方を教えたところ、自分の座を狙うほど勉強が上手になったのと同じようなものだ。だから、雅量と余裕が消えたのだ。

 バイデン大統領はイスラエル軍のガザ地区民間人大量殺害に関しても非情なほど「率直な心境」を打ち明けた。10月25日、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相との共同記者会見中、「パレスチナの民間人が多く死んでいる」という指摘に対し、「確かに罪のない人々が死んでいると思うが、それが戦争を繰り広げる代償だ」と答えた。戦争を起こした側の人は、たとえ罪がなくても代償を払わなければならないという話に聞こえる。

 米国の影響力の減退と中国の浮上は、米国をさらに焦らせ、率直にさせるだろう。韓国などの同盟にも何かを差し出すように督促が続くだろう。ドナルド・トランプはこの雰囲気を巧みに利用して大統領になった。トランプほど嘘が上手な人もあまりいないが、逆説的に彼はあまり本音を隠さない。生涯を欲望に素直で忠実だったトランプは、大衆の率直な不満、危機感、コンプレックスを「アメリカファースト」のスローガンにまとめることに成功した。率直さが彼の成功の秘訣だというのは言い過ぎだろうか。

 国家であれ個人であれ、余裕と体面を捨てると、強情できつくなる。米国はバイデンが再選すれば緩やかなスピードで、トランプが再選すればより速いスピードでそうなるかもしれない。

//ハンギョレ新聞社
イ・ボニョン|ワシントン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1118592.html韓国語原文入力:2023-12-01 02:38
訳H.J

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