朝鮮半島の平和と安全保障に重要な意味を持つ2つの国際会議が今年11月に開かれた。一つは韓米定例安保協議会(SCM)の翌日である14日に開かれた、韓国・国連軍司令部加盟国国防相会議(以下「韓・国連軍司令部会議」)だ。韓国と米国からは国防相が出席し、残りの16カ国は主に駐韓大使が代理出席した。同会議では、朝鮮戦争以降の停戦態勢の維持に対する国連軍司令部の貢献を評価し、今後の役割と機能のさらなる強化を約束する共同声明を発表した。
もう一つは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)を機に米国のサンフランシスコで15日に開かれた米中首脳会談だ。両国首脳は、経済と安全保障問題で硬直した関係の中で数年間断絶していた軍事対話チャンネルを復元することで合意した。具体的に、両国の国防および軍のハイレベルの意思疎通を含む「軍対軍の対話」の制度化に合意したのだ。これによって台湾海峡と南シナ海で緊張の高まりや、輸出統制と貿易摩擦、核兵器競争など、難しく敏感な問題を“管理”していけるという期待が生まれた。
一見すると、韓・国連軍司令部会議と米中首脳会談は、軍事安全保障的に相反する面がある。国連軍司令部の強化は、北朝鮮だけでなく中国も視野に入れたものと考えられるため、米中間の緊張緩和という首脳会談の趣旨に反する可能性があるからだ。実際、中国は韓・国連軍司令部会議について、外交部報道官を通じて「対決を引き起こし、緊張を高め、朝鮮半島情勢において火に油を注ぐようなもの」だと非難した。しかし、このような矛盾した行動は外交の世界では珍しくない。したがって、米国と中国がどうするかを見守るのも重要だが、韓国がどうするかを決めることがさらに重要だ。朝鮮半島の平和と安全保障がそうであり、最近議論になっている国連軍司令部の「再活性化」(revitalization)もそのような性格の問題だ。
戦時作戦統制権の移管に伴う権限の衝突
一般大衆にとって「国連軍司令部」(United Nations Command)は漠然として「当たり前の存在」として認識されているようだ。当初から、国連という名称が「盗用」(または誤用)されたもので、▽国連と何ら正式な関係のない米国の軍事組織であり、▽すでに国連総会で解体を決議して米国もそれに同意しており、▽国連の規定によって国連旗の使用ももはや合法的ではない、という「事実」が次第に広く知られるようになった。一部で国連軍司令部を「幽霊司令部」と呼ぶのもそのためだ。
国連軍司令部は1950年7月7日の国連安保理決議第84号により、米軍の将官が指揮する「統合司令部(Unified Command)」と呼ぶべきだが、米軍が恣意的に国連の名前を付けたものがそのまま使われている。停戦協定締結後、国連軍司令部は在韓米軍と韓国軍を指揮下に置いた作戦司令部であり、停戦体制を管理する最高軍事機構であった。さらに停戦協定を締結したその日、朝鮮戦争に参加した16カ国がワシントンに集まり、韓国に再び戦争状況が発生すれば再参戦するという決議を「ワシントン宣言」として発表しており、この宣言がこんにちの国連軍司令部加盟国会議の根拠となっている。
国連軍司令部はこれまで二度の「存廃の危機」を経験した。一度目は1975年11月18日の国連総会で、2件の決議案(3390A/B)が採択された時だ。西側と共産側がそれぞれ、停戦協定を平和協定に切り替えることと外国軍の撤退などを含め、国連軍司令部の解体を求めた。当時、米国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏は国連総会での演説で、1976年1月1日までに国連軍司令部を解体すると約束した。しかし、米国はこの約束を守らず、1978年11月に韓米連合司令部を創設して作戦機能を専門に担当するようにし、国連軍司令部は存置する一方、その機能を停戦協定の管理と有事の際の戦力の提供に制限した。韓国軍に対する戦時作戦統制権は形式的に国連軍司令官から韓米連合軍司令官に移管されたが、両司令官を同一人物が兼ねるため、内容的には変化がなかった。
二度目の危機は、韓国軍に作戦統制権を移管した後の国連軍司令部の地位と機能をめぐる論議であり、これは現在進行形だ。韓国軍が作戦統制権を行使するようになると、国連軍司令官の権限は在韓米軍と戦時増員多国籍軍に関連したものに限られる。この場合、戦時に韓国軍と米軍最高司令官の権限の関係が曖昧になる。不幸にも盧泰愚(ノ・テウ)政権から現在まで、作戦統制権移管をめぐる議論でこの重大な問題はまともに取り上げられなかった。特に文在寅(ムン・ジェイン)政権は作戦統制権の「移管」を、現在の連合軍司令部体制を維持したまま、司令官だけを韓国軍の将官に変更し、「再定義」することで米国と合意した。そうなれば、連合軍司令部副司令官である米軍の四つ星将軍(大将に相当)が国連軍司令官としての権限を行使する時、指揮権の「衝突」が起きるのは火を見るより明らかだ。
国連軍司令部、解体または統合すべき
米国(軍)はこの問題を当然認識しているだろう。だからこそ、国連軍司令部の再活性化の概念を持ち出した。その始まりは2000年代初めまで遡るが、本格的に進めたのは2014年からだ。韓国軍への作戦統制権移管の期限が一度延期され、2015年に決まったため、備えが必要だったのだろう。目的は国連軍司令部を存続させることであり、主な内容は参謀組織を独立化し拡大しながら、それによって機能と役割を強化することだ。在韓米軍が兼職していた国連軍司令部副司令官をカナダや英国などの将軍級に任命し、参謀部も多国籍で増やし、現在100人近くになる。
国連軍司令部の存在理由は停戦体制の管理と戦時増員戦力の提供にあるため、朝鮮半島の平和と韓国の軍事主権を犠牲にすることで維持される。非武装地帯と軍事境界線(休戦ライン)の通過に対する恣意的統制で、南北交流協力にブレーキをかけ、一国の大統領候補(尹錫悦候補の2021年12月陸軍3師団観測所訪問)まで停戦協定違反で調査すると脅しをかけた国連軍司令部だ。韓国軍に対する作戦統制権も、軍事組織と体系がどのように変わっても、ほぼ永久的に保有することを目指している。
国連軍司令部が戦闘司令部に生まれ変わるという懸念があるが、短期間でそうなる可能性は低い。韓米両国が公に否定するだけでなく、現行の作戦統制権と連合軍司令部体系が維持される限り、その必要性もない。しかし平沢(ピョンテク)に“拡張開業”した国連軍司令部が、日本に位置する7つの国連軍司令部の後方基地をさらに緊密に統合し、国連軍司令部加盟国のより積極的な参加を導き、朝鮮半島に堅固な地域統合司令部を構成する可能性は残っている。さらに国連軍司令部加盟国に日本が参加すれば、韓米日3カ国の類似同盟は国連軍司令部という外皮をもう一重まとった、政治軍事的に「完全かつ不可逆な」体系を整えることになるだろう。
朝鮮半島分断の固着化と軍事的緊張の高まり、そして対中対決構図の中で、韓国の軍事主権にも「不完全で回復し難い」状態が続くだろう。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権はこの方向が正しいと判断し、先頭に立っているものとみられる。しかし、「カエサルのものはカエサルに」返さなければならない。韓国が平和と主権レベルで軍事主権と停戦体制の管轄権をとり戻し、米国のものである国連軍司令部は名実共に在韓米軍または在日米軍と統合するか、解体されなければならない。