卵が先か鶏が先か。
科学の分野には二つの事件の前後関係が曖昧な問題が存在するものだ。生命科学も例外ではない。「DNAが先かタンパク質が先か」という質問がその代表的な事例だ。DNAはタンパク質を構成するアミノ酸の情報を持っているため、DNAの方が先だと思うかもしれないが、化学反応を触媒する酵素であるタンパク質があってこそDNAを作ることができるため、そうとは限らない。
1970年代後半、驚くべき発見がこの論争を終わらせた。DNAと似た分子であるRNAが遺伝情報の保存と共に酵素としても作用するという事実が明らかになったのだ。米国の分子生物学者ウォルター・ギルバートは1986年、生命の起源を説明する際、自分の塩基配列を自ら複製するRNA分子が最初の生命体だったという「RNAワールド」の仮説を示した。約40億年前、地球上にRNAで構成された生命体が先に現れ、その後、より安定した分子であるDNAが情報保存を担当し、触媒効率がより高いタンパク質が酵素を担当するように進化したというシナリオだ。
このような壮大な内容にもかかわらず、RNAワールドはもちろん、RNAもマスコミにほとんど登場しなかった。ところが、2020年に新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、mRNA(メッセンジャーRNA)という用語が今やDNAと同じくらい身近になった。ちなみにmRNAは、DNA遺伝子の情報をタンパク質に翻訳する過程を媒介するRNAであり、mは「伝令」を意味する。抗原であるウイルスタンパク質の代わりに、その情報を持つmRNAを入れて、ヒトの細胞がウイルスタンパク質を作るようにしたのだ。魚ではなく魚の釣り方を教えてあげるということだ。
先週ノーベル賞週間に発表された科学賞の中で、mRNAワクチンの開発者たちが受けた生理学・医学賞がマスコミから最も大きな注目を浴びた。早ければ2021年にも受賞する可能性があるとされていたが、むしろ予想より受賞が遅れたわけだ。筆者を含め、ほとんどの韓国人がmRNAワクチンを接種したので、受賞者たちに感謝の意を伝えたい。
コロナワクチンの成功をきっかけにmRNA医薬品を開発する研究がブームになり、最新技術が続々と登場している。先月の学術誌「ネイチャー」には、mRNA塩基配列を最適化し、安定性とタンパク質合成効率を高める技法を紹介した論文が掲載された。mRNAの短所は、不安定さにより細胞に投入された後には短期間で破壊されるという点だ。ところがタンパク質の情報を完全に保ちながらも、もう少し安定した塩基配列を探す方法が開発され、従来よりも少ない量のmRNAで、常温でも流通と保管が可能なワクチンが出る道が開かれた。
先週「ネイチャー」には円形RNAという新しい構造が開発され、RNA医薬品の安定性と効率を画期的に高めるという記事が掲載された。従来のRNAは線形分子なので両端から簡単に破壊されるが、両端をつないで円形にすれば長く生き残ることができる。このような安定性のおかげで、円形RNA自体が標的を認識して働きかける薬物として作用できるようになった。中国の研究陣はmRNAを円形に作ったワクチンを開発し、8月に臨床試験に入った。
現在、世界各国の巨大製薬会社はもちろん、多くのスタートアップが各自のアイデアで多様なRNA医薬品を作る研究に取り組んでいる。韓国のあるメーカーも最近、円型RNAをきれいに整えることで、潜在的な副作用を最小化する方法を開発したという論文を発表した。40億年前、DNAとタンパク質に主役の座を明け渡し舞台裏に下がっていたRNAが、再び前面に躍り出ている。