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[特派員コラム]ユン・ミヒャン議員と総連「理念論争の悲劇」

登録:2023-09-08 06:06 修正:2023-09-08 08:19
無所属のユン・ミヒャン議員が1日、東京墨田区横網町公園で開かれた「関東大震災朝鮮人虐殺100年東京同胞追悼会」に参加している=東京/キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 関東大震災朝鮮人虐殺100年にあたる1日、時ならぬ「理念論争」が登場した。韓国と日本の市民数百人が東京の真ん中で日本政府に対して真相究明と謝罪を要求した声が、「理念論争」を前にあっけなく打ち消されてしまった。「痛みが癒されるよう、日本政府が出てきてほしい」。慶尚南道居昌郡(コチャングン)から東京まで来た朝鮮人犠牲者遺族のチョ・グァンファンさん(63)の切実な叫びが埋もれてしまい、非常に痛ましい。

 事件の発端は、在日本朝鮮人総聯合会(総連)が1日午後、日本の市民団体と共同で主催した「関東大震災朝鮮人虐殺100年東京同胞追悼会」にユン・ミヒャン議員が参加したことだ。韓国の国会議員が親北朝鮮団体である総連の行事になぜ出席したのかということで、保守メディアが攻撃を始め、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、事実上これを「反国家行為」だと規定した。

 在日本大韓民国民団(民団)中央本部は4日に談話を出し、ユン議員の国会議員職の辞職を要求し、「韓国当局が反国家的勢力とのつながりを徹底的に調査するよう」求めた。

 民団の談話は矛盾している。1日には関東大震災朝鮮人虐殺が起きた別の場所である埼玉県でも追悼行事が行われた。埼玉県の本庄市、上里町、熊谷市の3つの地方自治体が、それぞれ時間をずらして主催する「朝鮮人犠牲者追悼式」だ。これらすべてに民団と総連の地域代表が参加した。朝日新聞は2日、「(民団の埼玉県地方本部団長と総連の埼玉県北部支部委員長の)両氏とも、追悼を続けてきた市や関係者への感謝」を示し、「不幸な過去を教訓にして日本と南北朝鮮の未来につなげることへの期待をにじませた」と報じた。「反国家的勢力」と協力する民団の埼玉県地方本部はどのように説明するのだろうか。

 在日コリアン社会は簡単ではない。韓国と日本が解決しなければならない争点である強制動員被害者、日本軍「慰安婦」、関東大震災朝鮮人虐殺、原爆犠牲者などの歴史問題を追っていくと、「総連」と常に向き合うことになる。総連の人たちは、民族の痛みをめぐり日本を相手に激しく闘ってきた。不幸なことに、民団と総連は、南北分断にともなう理念対立のため、「共通の痛み」ですらともに感じることができない場合が多かった。

 韓国の民主化や冷戦終結などの時代の変化によって、在日コリアン社会も大きく変わった。1980年代後半から留学や就職を目的に韓国から日本に渡った、いわゆる「ニューカマー」が急速に拡大した。理念を跳び越え文化で一つになる「ワンコリアフェスティバル」(1990年開始)には、民団・総連・ニューカマーがともに参加している。

 「理念論争」は、日本で在日コリアンへの差別・排除・ヘイトにもつながる。韓国人ヘイトで悪名高い極右団体「在日特権を許さない市民の会」は、朝鮮学校に対して「日本人を拉致する学校は追い出さなければならない」としてデモを行い、最近になり裁判所で名誉毀損罪が認定された。新型コロナウイルスが荒れ狂った2020年には、マスク不足現象が深刻化したため、埼玉県が教育機関などに備蓄マスクを配布する計画を立てたが、朝鮮学校幼稚部だけ対象から除外した。フジ住宅は、2年半以上にわたり「(韓国は)嘘が蔓延している民族性」と書かれた文書を社内に配布し、化粧品大手のDHCが運営するネット番組の出演者は「チョーセンジン」というヘイト発言を浴びせかけた。

 100年前の関東大震災「朝鮮人虐殺」という惨劇は、朝鮮人に対する差別とヘイトも一つの原因だった。私たちは歴史から何を学んでいるのだろうか。

//ハンギョレ新聞社

キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1107611.html韓国語原文入力:2023-09-08 02:36
訳M.S

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