本文に移動

[寄稿]韓米合同演習、少なくとも日本を引き込んではならない

登録:2023-03-05 20:08 修正:2023-03-06 07:18
[ハンギョレS] ムン・ジャンリョルの安保多焦点 
合同訓練、それでも守らなければならないこと
昨年8月31日、京畿道抱川市のロドリゲス訓練場で行われた韓米合同演習で、韓国軍の戦車が煙幕弾を発射している/聯合ニュース

 「もう」3月だ。春と共に訪れる多くのものの中に兵器と軍隊がある。大陸の向こう、眩しい青空の下、黄金色の麦畑は戦争の地になり1年。その2回目の春のぬかるみの中へ「帝国」の戦車が入ってくる。ともすれば、それだけの重さの血と肉で代価を払わなければならないかも知れない。大陸のこちら側は、世界一といわれる錦繍江山は戦争の地となって73年。再び黄砂と粒子状物質の中で爆撃機が空を切り裂き、空母が海をかき乱す。帝国の戦略資産が無料で使われるはずはない。

 なぜ、よりによって3月と8月に韓米合同軍事演習を行うのか。冬が終わる頃、また休暇が終わる頃だからだと考えればわかりやすい。それでも、一方では意地が悪い、いや悲しいという思いを振り払えない。人間の存在は記憶の塊にすぎず、国家も歴史的記憶なしには存在できない。だからこそ、帝国の圧制に民族が丸腰で抵抗した春の日々、そしてその支配からついに解放された熱い夏の日の記憶のためにも3月と8月くらいは避けてほしかった。過去の帝国に対する記憶はあらかた忘れ、新しい帝国だけをしっかり眺めろという「企図」が隠れていると感じるなら、それは行き過ぎた考えだろうか。

誰のための韓米合同演習なのか

 冷静に合同演習の必要性の論拠を挙げてみよう。第一に、朝鮮半島はまだ分断と戦争(停戦)の厳しい状況に置かれているため、軍事態勢と訓練は必要だ。朝鮮戦争の主な交戦当事国のうち、米国と中国、韓国と中国は国交正常化を通じて戦争を終えた。南北は様々な合意と首脳会談を通じて事実上の終戦を宣言したわけだ。残るのは北朝鮮と米国の関係だ。明白な敵対関係にあり、少なくとも北朝鮮の立場から見れば「熾烈」な戦争のさなかにある。

 第二に、韓国が米国と「相互防衛条約」を結び、連合防衛体制を樹立した以上、韓米合同軍事演習の必要性は「論理的」帰結である。また、朝米関係から南北の敵対関係が「自動的に」派生する。第三に、おそらく最も重要な訓練の必要性の論拠は、北朝鮮をどう見るかにある。もし北朝鮮を武力赤化統一の野心と核兵器を絶対に放棄しない悪であり敵とみなし、圧倒的な軍事力で戦争を抑止し、経済制裁を通じてひざまずかせ、崩壊させられる対象とみなすなら、合同演習は拡大強化しなければならない。

 こうした論拠には十分反論できるが、現実的には依然として強い力を発揮する。その力を自分の利益のために最もよく活用し育て続ける国は米国だ。大韓民国という国は、最初からそれ自体として米国のさまざまな「戦略資産」の一つだった。血盟だ、友人だ、同伴者だという言葉は、主に韓国でのみ通用する方言だ。

 他人の土地だけで絶えず戦争を繰り広げている米国は、海外駐留軍を引き続き訓練させ、常に準備しておく必要がある。訓練は米軍ひとりひとりの経歴管理にも欠かせない。1954年から米軍(国連軍司令部)単独で実施してきたフォーカスレンズ(Focus Lens)演習は、韓国軍、韓国政府、米国増員戦力が参加する各種の合同演習に拡大強化されてきた。米国は脱冷戦期に入ってから、中東地域での実戦を除いてまともな大規模軍事訓練ができる場所は朝鮮半島地域だけになった。この地の戦略的資産価値はこれまで着実に高まってきた。

 米軍は訓練を通じて軍事態勢を強化するだけでなく、新しい兵器をテストする。同盟の主導権、すなわちパートナーに対米依存性を自然に高めさせる米国式戦闘作戦の概念を移植し、兵器の販売を促進する。戦術や作戦よりも高い戦略レベルで地域や世界戦略を実演することで、戦略的競争国へのメッセージ発信の効果も狙う。朝鮮半島地域での合同演習は、北朝鮮だけを狙ったものではない。したがって、合同演習は米国の利益のために米国が主導することになっている。それこそが、訓練と作戦計画の樹立を核心要素として含む作戦統制権を米国が決して自発的に韓国に返還しない理由だ。北朝鮮に対する認識を共有する韓国政府を好む理由でもある。

最低限禁止されるべき「3事項」

 昨年8月の合同演習の新しい名称は「乙支(ウルチ)フリーダムシールド」(UFS:Ulchi Freedom Shield、自由の盾)だった。軍事訓練だけを実施する3月の訓練は、ただのFSだ。過去に使っていた「フリーダムガーディアン」(Freedom Guardian、自由の保護者)に比べ、人間の匂いより武器の匂いがする名称だ。それに相応しく、米軍の戦略資産を大規模に展開する予定だ。北朝鮮も米国の行動に対応して、「太平洋を我々の射撃場として活用する」とし、「万事相応かつきわめて強力な圧倒的対応を実施する」と予告した。(2月20日、北朝鮮労働党キム・ヨジョン副部長談話)

 いくら戦争のリスクを理由に合同演習に反対しても、演習は予定通り実施され、リスクは予告通り高まるだろう。そうだとしても、誰もが共感できる最小限の禁止事項はなければならないのではないか。

 まず、直接的な軍事衝突と戦争への拡大は絶対に避けなければならない。戦争が起きれば、米国が自ら、または米国と共に勝利することはできるだろう。ただし勝利を「享受する」国民は存在しない。

 次に、訓練と武力示威の相乗は自制しなければならない。これは一つ目の禁止事項の先行条件でもある。北朝鮮は、核ミサイルの「試験」を終え「訓練」を実施している。訓練は戦争のように行い戦争は訓練通りに行うというのは、国籍を問わずすべての軍隊の行動準則だ。自尊心と決断力の競争に陥らないよう、譲歩も必要だ。譲歩は強者がすべきだ。

 三つ目に、合同演習に日本を引き込んではならない。昨年9月の韓米連合海上訓練に日本の準イージス級駆逐艦が、そして先月22日にはイージス級駆逐艦が参加したことで、「韓米日共同訓練」はますます既成事実化する雰囲気だ。日本の合同演習への参加は、対北朝鮮を越えて朝鮮半島に対する軍事介入を意味する。複数の政府にわたって熟慮した上で決定されなければならない事案だ。

 希望事項を2つ付け加えるならば、まずは徐々に忘れ去られていく戦時作戦統制権返還の努力を続けなければならない。文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮の反発を押し切って合同演習を強行した重要な理由は、作戦統制権返還条件の充足を検証するためだった。せっかく演習をすることにしたのだから、この問題もきちんと解いていくのが当然ではないか。最後に「力による安保」を追求する過程でも、何とか平和のための対話を推進しなければならないということだ。望みが薄い希望だが、まだ絶望したくないからだ。

ムン・ジャンリョル|元国防大学教授。盧武鉉政権の国家安全保障会議(NSC)戦略企画室国防担当、文在寅政権の大統領直属政策企画委員会委員などを歴任した。『軍事科学技術の理解』などの著者として参加した。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1082132.html韓国語原文入力:2023-03-04 16:59
訳J.S

関連記事