世界の保健専門家たちは、アフリカの風土病から世界30カ国以上に広がったサル痘の診断法、治療薬、ワクチンなどの研究成果がこの疾病に長く苦しめられてきた低所得国に開放されるべきだと訴えている。
スイスのジュネーブにある国際保健医療NGO「FIND(ファインド)」のダニエル・バウシュ専務理事は2日、ロイター通信に対し「私たちは、この疾病が世界に出現したばかりの新しい病気ではないということを認識しなければならない」とし「高所得国にが広がったため、生命工学的関心が集まっている」と語った。そして、この病気を克服する「科学的成果が、サル痘の発生し続けてきたサハラ砂漠以南の人口に回るということを、どうやって確信できるだろうか」と疑問を呈した。
世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務局長のマシディソ・モエティ氏も、この日のWHOのオンラインブリーフィングで「世界各国がサル痘の拡散を抑制する方法を探りつつ、克服の道具を共有することが必要だ。最も重要なのは、新型コロナウイルスの時のように不平等なワクチンへのアクセスが繰り返される可能性を防止すること」だと語った。ロイターは、アフリカの風土病にとどまっていたサル痘が富裕な西欧諸国に広がったことで、製薬・バイオ産業はここ数週間でワクチンや治療薬などの開発を約束しているが、その成果がアフリカの低所得国にも拡散するかは疑問だと指摘した。
国際獣疫事務局(OIE)の野生動物作業部会事務局長ウィリアム・カレシュ氏も「衛生監視の継続と国際協力が、サル痘の勃発に打ち勝つためには絶対に必要だ」とし「私たちが(先進国に対する)治療ばかりに集中すれば、またしても新たな疾病に2年以内に出会うだろう」と警告した。
WHOは、1日現在で30カ国あまりから550件以上の感染例が報告されていると発表した。アフリカ諸国は、1970年にサル痘ウイルスが人から発見されて以来、サル痘に苦しみ続けてきた。サル痘が英国、スペイン、ポルトガル、イタリア、スイス、米国、イスラエル、オーストラリアなどの先進国へと拡散したのは今回が初めて。