フランスの原子力安全局は昨年、ある原発で非常用の原子炉冷却水供給用の配管の腐食亀裂が発見されたことから、最近精密検査のために類似の原発の稼働を実に12基も中止した。これらの大部分は設備の交換も必要なため、年末までは再稼働が難しい。さらに、フランス検察は原発の安全に関する文書の偽造、報告義務違反および傷害の疑いでフランス電力(EDF)を捜査している。これは、稼働延長が進められているトリカスタン原発で、原子炉の出力急上昇、浸水事故の隠蔽、有毒物質の放出、検査業務の妨害があったという内部告発による措置だ。1月にフランスの電気委員会が電気料金の原価が45%も上がったと発表した中でも、原発の安全問題に妥協せず対処している格好だ。
一方、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、国際的なエネルギー供給難にともなう電気料金の引き上げは、前政権の「脱原発政策のせい」だとして、原発利用率を高めることで料金を抑制するとの立場を明らかにしてきた。しかし、このかんの原発利用率の低下は、多数の原発で放射能災害の際に防壁の役割を果たすコンクリート格納建屋で穴と鉄板の腐食が大量に発見され、稼動が中断されたことが原因だ。それなのに利用率をどのように高めるというのか、意図が知りたい。
政府が稼動を求めている新ハヌル1、2号機の計測制御システム(MMIS)と水素除去装置(PAR)も問題だ。MMISは原発の運転状態を監視、制御する最重要設備だが、2012年の入札不正と試験成績書の偽造に加担した複数の企業は、開発への参加後も最近まで性能試験で問題を起こし、稼動を実に5年も遅延させた主犯だ。PARは福島第一原発事故で浮き彫りになった水素爆発を防止するために国内企業が開発したものだが、3回の性能試験ではむしろ火花と火炎を発生させるばかりで、「水素爆発点火装置か」とため息が出る。
この5年のあいだに問題を起こしたこれらの設備が、政権が変わったことで突如変身したとでもいうのだろうか。このような状況での尹政権による「原発利用率発言」は結局、規制機関である原子力安全委員会(原安委)に対して、安全に穴のある原発を無理にでも稼動させろと圧力を加えているのに他ならない。
果ては、検察が月城(ウォルソン)1号機の閉鎖決定に関与した産業通商資源部の複数の公務員を「経済性評価を操作した」として捜査し、起訴までしている。まるで安全問題と安全にかかるコストは存在しないかのような論理だった。すでに裁判所は、月城1号機の稼働延長を許可した原安委の決定について、最新の技術基準の未適用を理由として行政取り消し判決を下している。
さらに月城1号機は、朴槿恵(パク・クネ)政権時代に無理なフィルターベントシステム(CFVS)の工事により、使用済み核燃料プールの設備が破損し、その後10年間も汚染された冷却水の地下水への流出が放置されていた。当時、原安委がこのような事実を知らなかったはずはないが、稼働延長を許可したのだ。このような内幕は、原安委の傘下機関である原子力安全技術院の担当者が内部での問題提起の末、昨年マスコミに暴露したため明らかになったが、彼は人事で不利益ばかりを被った一方、原安委は民間調査団の調査も妨害した韓国水力原子力を黙認し、早く忘れられることを待っている様子だ。
これまで韓国の原子力業界が「原発大国」としてあがめてきたフランスの原子力安全局と検察だったら、韓国のこのような事態にどのように対応しただろうか。政界の「原発政争」に合流して刀を振り回してきた検察は、自分たちが原発の安全に対して何をしているのかを熟考してほしい。また、政府は国際的なエネルギー難による電気料金の引き上げの要因をありのままに伝えるべきだ。そして、このかん表明しているように電力市場の改善に集中するとしても、それを安全性に穴のある原発で解決しようなどという冒険はやめるべきだ。
ソク・クァンフン|エネルギー転換フォーラム専門委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )