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[コラム]反米感情と「ただ乗り」

登録:2022-04-21 03:06 修正:2022-05-01 07:10
[編集局から]キル・ユンヒョン|国際部長
ウクライナのゼレンスキー大統領が11日午後、ソウル汝矣島の国会図書館大講堂で与野党の国会議員を前にオンライン演説を行っている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 これはいつか書こうと決めていた話だ。陣営内での「袋叩き」を多少覚悟し、率直な考えをありのままに書く。

 ウクライナ戦争についての韓信大学のイ・ヘヨン教授の最近の文章を読んで、しばらく複雑な気持ちを禁じえなかった。韓国メディアは英米メディアの戦況報道を「つぎはぎ」しているという論旨には同意できないとか、戦争によってもたらされたウクライナ民衆の苦しみへの言及がないとかいうことばかりが理由ではない。文章全体から、現在の大韓民国の主流をなす、いわゆる「進歩86(80年代に大学生だった60年代生まれ世代)」において共通して観察される独特の情緒を改めて確認できたからだ。

 この情緒をなす2つの主な要素は、根強い反米感情と、朝鮮半島にだけは飛び火しないことを望む「フリーライディング(ただ乗り)」気質ではないかと思う。イ教授は4日、インターネットメディア「フィレンツェの食卓」への寄稿で、韓国メディアがウクライナ戦争の戦況について、「米英メディアの組織的誤報とオリエンタリズムに自発的に帰順」しているとし、あえて映画『マトリックス』に登場する青い薬と赤い薬の比喩を用いている。韓国メディアの国際報道に不足しているものがあるなら(実は問題が多い)、その話をすれば済むのに、米国が作った仮想世界に閉じこめられた「奴隷」という「物々しい」規定を試みているのだ。では、戦争初期のロシアのキーウ(キエフ)進攻はドンバス攻略のための「陽動作戦(すべてはプーチンのビッグピクチャー?)」だとする同氏の戦況認識は妥当なのか。徹底した反米主義に起因する被害意識がなければ、簡単には理解しがたい精神世界だ。キム・ジュンヒョン前国立外交院長は昨年出版された自らの著書で、米国が「圧倒的な支配力で韓国の合理的判断力と現実感を失わせ、統制力」を行使しているとし、これを「ガスライティング」と述べたが、彼らの認識論的地平は大きな枠組みにおいては同じであると思う。

 韓国の進歩陣営内の反米意識の源を探れば、実は「きりがない」。外国勢力による半分の解放と、それに続く血で血を洗う戦争の悲劇、さらに冷戦体制の中で、韓国の国益は米国の圧倒的影響力の下で大きく規定された。そして光州(クァンジュ)の悲劇。米国はあの「虐殺者」の権力奪取をついには容認し、1990年代以降は数多くの局面での「誤った判断」により事実上、北朝鮮の核開発を許した。弱小国だった韓国が絶えず米国の意図を疑い、事実か陰謀か確認しえないことで様々な感情に陥るのは、人間の心性としてはやむを得ないとは思う。しかし、この70年間の奮闘の末、大韓民国はD-10(10の主要民主主義国)のメンバーシップを手に入れた。現存する自由主義的な国際秩序を、米国が強要したものとしてではなく、朝鮮半島、地域、ひいては世界の発展と繁栄を保障する公共財であるととらえ、守らなければならない位置に立ったのだ。

 人類は第2次世界大戦後、「紛争を平和的手段によって解決」し、「武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも…慎まなければならない」(国連憲章第2条)という原則を打ち立て、守ってきた。ロシアの侵攻は、人類の数多くの試行錯誤によってこの70年あまり守られてきたこの秩序に対する露骨な挑戦だ。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は先月30日、中国安徽省屯渓で王毅外相と会談し、「私はこの結果(ウクライナ戦争の結果)によって国際情勢がより明確になると確信する」とし、「我々はより正義に則り民主的な『多極体制』へと移行するだろう」と述べている。

 ロシアの意図が貫徹され、米国の覇権が崩壊すればどうなるだろうか。力でウクライナを屈服させたロシアは、再び武力を用い、東欧で旧ソ連が行使したような影響力を回復しようとするかもしれない。中国も「中華民族の偉大な復興」のために、台湾の武力統一を試みる可能性もある。韓国は中国に屈服して、昔の中華秩序のような状況を受け入れるか、核武装を通じて国の自存を維持しなければならない状況に置かれることになる。このような極端なシナリオでなくても、朝鮮半島をめぐる不確実性は以前とは比べものにならないほど高まらざるを得ない。

 米国は成長した韓国が日本などとともに自由主義的な国際秩序の防衛に一役買うことを望んでいるが、「進歩86」は依然として反米とただ乗り情緒にとどまっている。朝鮮半島に火の粉が飛んで来ることばかりを心配し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の切なる支援要請に誠意なく冷淡な反応を示すのだ。

//ハンギョレ新聞社

キル・ユンヒョン|国際部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1039728.html韓国語原文入力:2022-04-20 17:12
訳D.K

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