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[寄稿]「新冷戦」だって?

登録:2022-04-18 02:46 修正:2022-05-16 10:34
米国はこれまでに構築してきた国際機関と秩序に寄りかかってロシアを懲らしめるとともに、世界を縛りつけておこうとしている。世界貿易秩序とドルの力を振りかざしている。しかし、やればやるほど世界からの信頼は蝕まれる。覇権国が国際公共財を供与するのではなく自ら食ってしまったとしたら、その国際秩序は保たれるだろうか。 
 
ソ・ジェジョン|国際基督教大学政治学・国際関係学デパートメント教授
今月4日、米国のジョー・バイデン大統領が記者団にロシア軍によるウクライナの民間人虐殺について発言している=ワシントン/EPA・聯合ニュース

 「バルト海のシュテッティンからアドリア海のトリエステに至るまで、鉄のカーテンがヨーロッパ大陸を横切って降ろされている」

 英国の首相として第2次世界大戦を勝利に導いた「勝利の英雄」ウィンストン・チャーチルは、戦後の総選挙で衝撃的な敗北を喫した。しかし1946年3月に在野の人間として米国を訪問し、新たな戦争の到来を予言した。彼の「鉄のカーテン」演説は、連合国の団結が勝利とともに解体され、冷戦へと向かっていることを示す証左だった。

 すでにそれより1カ月前、モスクワ駐在米国大使館から「長い電報」がワシントンに届いていた。大使館の参事官だったジョージ・ケナンは、国務長官に宛てた5章からなる長文の電文で、「ソ連共産主義という問題」について強く警告しつつ、「戦争における重要な戦略的問題の解決策を探るかのごとく、慎重かつ徹底的に備えるべきだ」と主張した。「ソ連は、我々の社会の内的調和をかく乱し、我々の伝統的な生き方を破壊し、我が国の世界的権威を無にせねばならないと、狂信的に信じているからだ」。まさにソ連に対する封鎖政策の基礎ができつつあった。

 ソ連の鉄のカーテンと米国の封鎖政策は奇妙な調和をなし、「冷戦」という新たな国際秩序が形成された。しかし封鎖はソ連を「自由世界」から排除するだけでは完成しなかった。 米国は北大西洋条約機構(NATO)や日米同盟、韓米同盟などを結成し、同盟国に安保を提供した。朝鮮戦争で、そしてベトナム戦争で莫大な人命被害を被り、巨大な財政の出血があったものの、「自由世界」を守るために米国が負担すべきコストとして受け入れた。

 「我々の政策は特定の国家に反対するものではなく、飢え、貧困、絶望、混乱に立ち向かうものだ」。それだけでなく、米国は同盟国の経済再建のために大々的な経済援助を行った。米国の戦争英雄ジョージ・マーシャルは、戦後、国務長官として150億ドル規模の「欧州再建計画」を樹立した。当時の米国の国内総生産額の5%に匹敵する金額だった。マーシャル国務長官は、この経済援助に政治的意図は全くないと強弁した。1953年にはノーベル平和賞まで受賞した。しかし東欧圏にとって受け入れられない条件をつけ、マーシャルプランの最大の恩恵を受けたのは英国、フランス、西ドイツなどの西欧圏だった。この経済援助は、NATO結成の触媒の役割を果たし、欧州の冷戦の開始を知らせるシグナルだった。

 冷戦は米国が莫大なコストを支払って構築した国際秩序だった。もちろん、米国資本主義がその秩序の最大の恩恵を受けたとも言えるはずだから、「惻隠の情」の発露ではなかったであろう。とはいえ、冷戦という秩序を維持するための「公共財」を供与したのは米国だという事実を想起することは重要だ。

 それは、「新冷戦」といわれる今の状況とはあまりにも異なるからでもある。ジョー・バイデン政権は声を大にして中国とロシアのことを権威主義国家だと批判し、ウクライナに侵攻したロシアの戦争犯罪を糾弾している。しかし行動が伴っておらず、公共財を供与するのではなく食い荒らしている。

 ウクライナが権威主義国家に侵略されているが、米国は軍事的介入とは一線を画している。もちろんウクライナは米国の同盟国ではないが、1950年の韓国も米国の同盟国ではなかった。世界大戦へと拡大する危険性が言及されているが、1950年にもそのような懸念はあった。もはや米国は、国際秩序の維持のために自国民の命を投入したがらない、というだけだ。代わりにウクライナ政府に兵器システムを供給し、軍事訓練を提供しつつ、背をたたいているに過ぎない。うまく戦えよと言って。

 戦争の経済的コストも米国の負担ではない。今のところウクライナからは戦争によって400万人を超える避難民が発生しているが、担うべきは欧州だ。米国は「様々な法的ルートを通じて」最大で10万人を受け入れるという。ロシアを懲らしめるため様々な経済制裁を行っているが、最大の被害者も欧州だ。天然ガスなどの天然資源をロシアから輸入し、様々な工業製品を輸出していた欧州経済は動揺しているが、「マーシャルプラン」は考えてもいない。米国は原油と天然ガスを販売し、背中をたたくだけだ。うまくやっていると言って。

 米国はこれまでに構築してきた国際機関と秩序に寄りかかってロシアを懲らしめるとともに、世界を縛りつけておこうとしている。世界貿易秩序とドルの力を振りかざしている。しかし、やればやるほど世界からの信頼は蝕まれる。覇権国が国際公共財を供与するのではなく自ら食ってしまったとしたら、その国際秩序は保たれるだろうか。「新冷戦」は冷戦ではない。韓国と東アジアも、かつてとは異なる戦略を模索すべきなのではないか。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ジェジョン|国際基督教大学政治学・国際関係学デパートメント教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1039255.html韓国語原文入力:2022-04-17 18:04
訳D.K

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