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ウクライナ侵攻が呼んだ「安全保障のジレンマ」…欧州、共倒れの道を進むのか

登録:2022-04-16 08:38 修正:2022-04-16 09:02
ロシア、NATO加盟を検討するフィンランド・スウェーデンに「核増強配備」で脅す 
西側が強行対応した場合、悪循環が生じて共倒れになることも
8日、ロシア軍の民間人虐殺疑惑が提起されたウクライナの首都キーウ(キエフ)郊外の都市ブチャを訪問したEUのウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長が現場を見回り、深刻な表情をしている=ブチャ/AP・聯合ニュース

 フィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟を検討すると、ロシアがバルト海沿岸に核兵器と超音速ミサイルを配備すると脅しにでた。2カ月目に入ったロシアのウクライナ侵攻が、NATOとロシアの双方に「安全保障のジレンマ」を呼び、冷戦以来維持されていた欧州大陸の地政学的均衡を揺さぶっている。

 15日のロイター通信などの報道を総合すると、ウラジーミル・プーチン大統領の最側近であるロシアのドミトリー・メドベージェフ国家安全保障会議副議長は、「フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟すれば、バルト海の近くに駐留しているロシアの陸海空軍の能力を強化せざるをえない」と述べた。さらに、「フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟するのであれば、バルト海沿岸では、これ以上は『非核地帯』の話をすることができなくなるだろう」としたうえで、「誰も核や超音速ミサイルを近くに置いて過ごしたくはないだろう」と述べた。メドベージェフ副議長は、プーチン大統領が再選制限の規定により大統領選に出馬できなかった2008年~2012年に「代理」としてロシア大統領を務めさせた人物だ。

欧州のNATO加盟国拡大の現状//ハンギョレ新聞社

 これに先立ち、英国紙「ザ・タイムズ」は11日、名前を伏せたNATO当局者の言葉を引用し、「フィンランドとスウェーデンは、早ければ今年の夏にNATOに加盟できる」と報じた。実際、フィンランドのサンナ・マリン首相は13日(現地時間)にスウェーデンを訪問し、スウェーデンのグダレナ・アンデション首相と首脳会談をした後、記者会見を開き、「今後数週間のうちにNATO加盟問題に対する決定を下すことになる」と明らかにしている。ロシアと約1300キロメートルにのぼる長い国境線を接するフィンランドは、第2次世界大戦時、ロシア(旧ソ連)の侵攻により国土の約9%を渡した苦い経験がある。

 フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、プーチン大統領がウクライナ侵攻を決めた際に明らかにした戦略的目標に、正面から反旗を翻すものだ。プーチン大統領が当初主張したウクライナ侵攻の論理は、冷戦の遺物であるNATOが冷戦終結後も拡大したこと▽冷戦のもう一つの主軸だったロシア(旧ソ連)が主導したワルシャワ条約機関はすでに消失していること▽ウクライナまで加盟すればロシアはNATOと国境を接しなければならないこと▽これを事前に防止するためにはウクライナ侵攻は不可避だというものだった。

 問題は、自らの「安全保障の懸念」を解消するためのロシアの行動が、フィンランドとスウェーデンの「安全保障の懸念」を強めたという点だ。その結果、第2次大戦以降は「中立」を標榜し、どちらか一方の側には入らなかった両国が、ロシアのウクライナ侵攻後はNATO加盟を真剣に打診し始めた。プーチン大統領としては、ロシアの安全保障上の脅威の解消のために取った行動が、フィンランドとスウェーデンの安全保障上の脅威をあおり立て、いっそうロシアの安全保障を脅かす状況に直面することになったわけだ。典型的な「安全保障のジレンマ」だ。これについて、外交・安全保障専門メディアの「フォーリン・ポリシー」は、「トルコが南部で構えている状況で、バルト海沿岸の3国が中部で、フィンランドとスウェーデンが北部でロシアと対峙する形が演出されることになりうる」とし、「プーチン大統領とロシアの民族主義陣営が懸念してきた、まさにその『大連合』が作られる形になるだろう」と指摘した。

 この日メドベージェフ副議長が出した核と超音速ミサイルの配備の脅しは、目新しくはない内容だ。これまでロシアは、米国の欧州版ミサイル防御網(MD)の構築に対抗し、バルト海沿岸に戦術核を配備すると脅し続けてきた。ロシアは実際、2018年にリトアニアとポーランドの間に位置するバルト海沿岸でありロシア唯一の不凍港であるカリーニングラードにイスカンデルミサイル・システムを配備したことがある。リトアニア政府は、メドベージェフ副議長の警告の直後、「ウクライナ侵攻のはるか以前に、バルト海沿岸に核兵器が配備されているということは、だれもが知っていること」だと述べた。

 ロイターは、「イスカンデルミサイル・システムの公式射程距離は500キロメートルだと知られているが、実際にはさらに長い距離を飛ぶことが可能だというのが一般的な評価」だとしたうえで、「カリーニングラードからベルリンまでは500キロ、ロンドンとパリまでは1400キロほど離れている」と指摘した。ロシアがカリーニングラードに核兵器を増強配備すれば、西側の「危機感」も強まらざるをえない。西側がこれに対応する措置に乗りだせば、安全保障のジレンマのいっそう大きな悪循環が発生し、全員が共倒れになる状況になることもありうる。

チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1039112.html韓国語原文入力:2022-04-15 15:48
訳M.S

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