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血まみれのウクライナ… 迫りくる「核戦争」(2)

登録:2022-04-13 06:37 修正:2022-04-13 12:14
ロシアのプーチン大統領が3月10日、モスクワで政府閣僚たちとテレビ会議を行っている/AP・聯合ニュース

 ロシア軍はこのような戦略の変化に合わせて核戦争の演習も行ってきた。ロシア軍は1999年、NATOによるカリーニングラードへの攻撃を仮定した戦争演習を実施したが、このシナリオにはロシア軍がポーランドと米国に核攻撃を加えた後、敗北の混乱から抜け出す内容が含まれていたという。また、実際に使用できるように核弾頭の威力を下げた核兵器も開発した。特に2005年に配備されたイスカンデルミサイル(推定射程500キロメートル)の核弾頭は、威力を広島に落とされた原爆の3分の1水準まで下げられるという。「米国科学者連盟」(FAS)のハンス・クリステンセン氏は、ロシアがこのような戦術核弾頭を2千基ほど保有していると推定した。

低威力弾の開発など対応に乗り出した米国

 米国も冷戦解体後、一時は核兵器の削減を進めてきた。しかし最近、ロシアと中国の核戦力強化の動きに対する懸念の声が高まり、このような動きにブレーキがかかっている。

 冷戦解体とともに、旧ソ連の通常侵略にも核使用オプションを排除しない、いわゆる「柔軟対応戦略」が正式に廃棄された。核ではない攻撃には核使用を自制することにしたわけだ。ジョージ・ブッシュ大統領は1991年、海外に配備された戦術核兵器の削減と撤退を宣言した。このため、朝鮮半島に前進配備されていた核兵器も撤退された。米国がこのような措置に乗り出すことができたのは、冷戦解体で旧ソ連の軍事的脅威が減り、先端兵器とミサイル防衛(MD)などが劇的に発展したためだ。「核なき世界」を目指したバラク・オバマ政権時代に出された2010年の「核態勢見直し(NPR)」では、「核不拡散条約(NPT)に加盟した非核国に対しては核を使わない」といういわゆる「消極的安全保障」(NSA)が明確に宣言された。

 このような流れは、ドナルド・トランプ政権以降、止まることになる。トランプ政権は2018年の「核態勢見直し」で消極的な安全保障を一部再確認しながらも、「核ではない他の重要な戦略的攻撃」を受けた場合も核を使用すると明らかにするなど、核使用のオプションを再び広げた。また、威力が広島に使用された原爆の3分の1以下の潜水艦発射弾道ミサイル用の低威力核弾頭「W76-2」を開発した。核兵器使用の敷居を下げたわけだ。ジョー・バイデン大統領も候補時代にはW76-2の開発について「悪いアイデア」だと非難したが、就任以降いまだに廃棄していない。また、候補時代には「米国と同盟国に対する核攻撃を抑止するためだけに核兵器を使う」といういわゆる「唯一目的」の原則を公約したが、先月公開された2022年の「核態勢見直し」の要約版ではこの原則を放棄した。

米海軍のオハイオ級戦略原子力潜水艦(SSBN)「テネシー」。低威力核弾頭W76-2を装着したトライデント弾道ミサイルを搭載している=米海軍ホームページより//ハンギョレ新聞社

統制の利かない核衝突…瞬く間に拡大の可能性も

 このような状況でウクライナをめぐる米ロ間の対立が激化すれば、予期せぬミスや事故、誤算などが偶発的核衝突の火種になりかねない。専門家らは特に、ウクライナがNATOとロシアの対立の真っ只中に位置している点、また米国とロシアの核使用の「レッドライン」が比較的曖昧な用語に規定され明確ではない点などが、核の危険性をさらに高める要因だと指摘する。

 米国とロシアという二大国の間で核戦争が勃発すれば、どんなことが発生するだろうか。米国のプリンストン大学の研究チームが2019年9月に公開したシミュレーションによると、NATOとロシアが核戦争を行った場合、わずか数時間で9千万人以上が犠牲になることが分かった。米ロ間の核衝突は直ちに反撃と再反撃などにつながり、瞬く間に拡大する恐れがある。

 核戦争の序幕は、米ロの戦術核兵器が開ける可能性が高い。米ロはまず、人命被害のない公海や荒れ地などに威力の低い核弾頭で警告や威嚇射撃を行うものと考えられる。しかし対立が激化すれば、野戦指揮部や戦闘部隊など戦術目標にその対象が変わる可能性があり、敵の核能力を無力化するために大陸間弾道ミサイル(ICBM)など戦略核兵器を動員した全面的な核戦争に飛び火する恐れもある。

 問題はこの過程で米ロ両国が自制力を発揮できるかどうかだ。オバマ政権で国家情報局長を歴任したジェームズ・クラッパー氏は、プーチン大統領が核攻撃を行った場合、バイデン大統領にどのように助言すればいいのか確信がないと述べた。核報復と関連し、「いつ止まるのか」というニューヨーク・タイムズ紙の質問に、「反対側の頬も差し出すわけにはいかない。ある時点では、我々も何かをしなければならない」と述べた。米ブラウン大学のニーナ・タネンウォルド氏は「核抑止力」戦略に疑問を呈し、「危機の時、意図通りに作動しないだろう」と述べた。

パク・ピョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1038490.html韓国語原文入力:2022-04-1210:56
訳H.J

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