ロシア軍が占領してから退却したウクライナ北部の小都市ブチャの凄惨な姿に、世界が驚愕している。廃墟と化した都市のいたるところで、民間人とみられる遺体が大量に発見されている。一部には手を後ろに縛られたまま銃殺されたという情況も出ている。大型教会の前庭で集団埋葬地が発見されたが、10体余りの遺体が袋一つにまとめられ、埋葬されていた。ウクライナ政府は今月3日(現地時間)、ブチャをはじめとするキーウ(キエフ)付近で、民間人410人の遺体を収拾したと明らかにした。 ロシア軍が民間人を集団虐殺したという疑惑が強くなっている。
この悲劇は、ロシア軍が兵力をオデーサ(オデッサ)などの南部海岸地域の攻勢に集中するため、キーウ付近から兵力を撤退させたことで現れた氷山の一角だ。ロシア軍が最近攻勢を集中してきた南部マリウポリなどでも、病院や学校、劇場などの民間人施設が爆撃され、多くの民間人が犠牲になった。ロシア軍が撤退した北部地域の女性たちは、現地の警察やマスコミ、人権団体に性的暴行の被害を打ち明け始めたが、ロシア軍が占領地で広範囲に性的暴行を犯した情況も明らかになっている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3日、ロシアの行為は、国家全体を抹殺しようとするジェノサイドだと主張した。ジェノサイドは、国民や民族の一部を絶滅させる意図で行われる非人道的な暴力犯罪を意味する。米国や欧州では、ロシア産エネルギーの輸入中止をはじめ、さらに強力な制裁を求める声も高まっている。
ロシア政府はいずれも「フェイクニュース」だと否定しているが、侵略戦争を中止して真相究明に協力することが優先だ。アントニオ・グテーレス国連事務総長は「ブチャで殺害された民間人たちの姿を見て深い衝撃を受けた」とし、「効果的な責任究明を保障するために独自の調査が欠かせない」という声明を発表した。国連のこのような立場にもかかわらず、ロシアのウラジ―ミル・プーチン大統領とロシア軍を断罪できるかどうかについは、懐疑的な見方が少なくない。国連が深刻に分裂しているうえ、大国の非人道的犯罪が国際社会でまともに処罰されたことがないからだ。だからといって、このような悲劇をそのままにしておいていいのか。真相を究明し、責任を問うため、国際社会が力を合わせなければならない。大国が弱小国を侵略し、民間人に虐殺と性的暴行を犯す「野蛮な時代」が新たな国際秩序として定着することを共に阻止すべきだ。