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[寄稿]行き詰った韓日関係、「拡同縮異」で解決していこう

登録:2021-12-02 08:53 修正:2021-12-02 18:29
チョウ・ソンリョル | 駐大阪大韓民国総領事

 韓日関係は日本の岸田内閣の発足後、新たな転機を迎えている。韓日両国で現在の状況をこれ以上放置してはならないという世論が高まっている。1998年の金大中(キム・デジュン)・小渕宣言(日韓共同宣言)が新しい韓日関係の出発点になったように、韓日首脳が会って包括的解決策を模索すべきだという意見もある。しかし、国民的共感のない首脳間の合意だけでは悪循環の輪を断ち切ることは容易ではない。新たな宣言が採択される過程では「植民地支配の違法性」が争点になる可能性もある。

 ここ数年の韓日対立のきっかけとなったのは、2012年5月の韓国最高裁判所(大法院)1部の判決だ。最高裁は、日本企業に強制動員被害者への賠償を命ずる判決を下し、2018年10月に最高裁全員合議体で最終確定した。2015年12月の韓日「慰安婦合意」についても、国際法の被害者中心主義に反するという指摘が出た。これをめぐり、韓国の裁判所で食い違った判決が下されたが、韓国政府は2018年1月、これが政府間の公式合意であることを認め、日本に再交渉などの追加請求はしない方針を明らかにした。

 こうした状況で、日本政府は韓日関係回復のためには、まず「国際法違反状態」を是正しなければならないというレトリックを使い、韓国政府を圧迫している。しかし、現状は韓国の国際法違反のためではなく、被害者中心主義の導入をめぐる国際法論争と、国際法と国内法の衝突から始まった。したがって今後の解決策は、韓国の国際法違反の是正ではなく、韓日両国が国際法と国内法の衝突をどのように解消するかに焦点を当てなければならない。

 一部では、日本軍慰安婦および強制動員被害者問題が解決されれば、直ちに韓日関係が改善するかのように楽観的な見通しを示しているが、これは厳しい現実から目を背けたものだ。韓日関係においては、これらの問題のほかにも輸出規制や福島第一原発の汚染水の海洋放出など、複雑で解決が難しい問題が山積している。したがって、関係改善のためには、求同存異(同じところを求めて、異なる点は残しておくこと)、求同除異(同じところを求めて、異なる点はなくしていくこと)、拡同縮異(同じところを拡大し、異なる点を縮小していくこと)の三つのアプローチを検討する必要がある。

 「求同存異」とは隔たりがある歴史問題はそのままにして、協力を模索していこうという主張だ。「求同除異」とは慰安婦問題、強制動員被害者問題が放置できない主要懸案になったという点で、これを積極的に解決しようという立場である。しかし、歴史問題はこれ以上避けることはできないが、国民感情まで複雑に絡み合っているため、完璧に解決することは容易ではない。そうした点で協力を拡大すると同時に、隔たりを埋めていくことで韓日関係における対立要因の比重を画期的に減らす「拡同縮異」が代案になり得る。

 「拡同」のためには、経済と安全保障の分野における協力を拡大する必要がある。最近展開されているグローバルサプライチェーン(GSC)の再構築およびインド太平洋経済の枠組み形成などの経済協力、シーレーン(SLOCs)の安全・保護と北朝鮮の核とミサイル脅威に関する安保協力、拉致問題に関する人道的協力が考えられる。「縮異」のためには、歴史問題で完全な解決ではなくても、進展した妥協が必要だ。日本軍慰安婦問題は、韓国政府が2015年の合意を公式合意と認めているだけに、合意事項を基にしつつも、被害当事者との協議を通じて円満に解決しなければならない。強制動員被害者問題は最高裁判所の判決の趣旨や被害者の権利の実現、両国関係を考慮しつつ、すべての当事者が満足できる妥協策を見出さなければならないだろう。

 ならば、どこから始めるべきなのか。まず、相互関係の規定を「基本的価値を共有する(隣国)」に正常化することから始めよう。韓日首脳の施政方針演説や外交・国防文書などで両国関係を従来通り正常化してこそ、韓日関係の重要性を国民に説得する根拠ができる。次に、韓国に対する日本の輸出規制とそれに関連した韓国の世界貿易機関(WTO)への提訴を同時に解除しよう。これがうまくいけば、後続措置として、韓国は軍事情報包括保護協定(GSOMIA)をいつでも終了できるという方針を取り消し、日本は韓国を輸出管理で優遇するグループA(旧ホワイト国)に復帰させることを議論できるだろう。三つ目に、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン」の拡散で困難があるものの、両国国民の人的交流を最優先的に再開する善意の措置を取るようにしよう。これらは今後、新しいリーダーシップの下で両国関係の改善を円滑に進めるためにも、解決しなければならない最小限の課題だ。

*この文は筆者の個人的な意見であり、韓国政府の立場を反映したものではありません。

//ハンギョレ新聞社
チョウ・ソンリョル | 駐大阪大韓民国総領事(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1021616.html韓国語原文入力:2021-12-01 19:00
訳H.J

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