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[寄稿]米国と中国、二人の巨人の被害妄想

登録:2021-11-08 09:25 修正:2021-11-08 10:32
ムン・ジョンイン|世宗研究所理事長 米国の東アジア専門家、ポール・ヒア氏は「戦略的被害妄想症」(strategic paranoia)という用語でこれを説明する。米国は、中国からの恐怖を過度に誇張し、中国はヒステリーに近い攻撃的防御でこれに対応することで、問題を悪化させているという。これは米中いずれにも蔓延している傲慢や不安、無知、不信がもたらした結果だ。

 この2週間、5回の国際ウェビナーに出席した。偶然にもテーマはいずれも米中対決だった。両国の関係がどれだけ深刻であるかを物語っている。米国と中国の間に不信の溝は深く、妥協の接点を見出すことが極めて難しいという印象を受けざるを得なかった。

 米国側の関係者たちは、バイデン政権はトランプ政権とは違うと強調した。中国に対して「3C政策」、すなわち協力(cooperation)、競争(competition)、対決(confrontation)を同時かつ柔軟に展開していると主張した。気候変動や伝染病、大量破壊兵器の拡散防止、北朝鮮の核問題などでは協力するが、貿易と技術分野では熾烈な競争を、地政学と価値問題では譲らない対決を3本柱とし、前任者よりも柔軟な政策を展開するという話だった。

 中国側の関係者たちは、次のように問い返した。中国が最優先事項とする領土と主権、すなわち地政学的争点と価値問題についてワシントンが対決的態度を示しているのに、他の分野での協力の幅を広げたり、建設的な競争を繰り広げるのが果たして可能なのかと。そして、台湾や南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区問題で米国が変化した姿を見せない限り、両国の協力は現実的に難しく、競争はさらなる軋轢に飛び火しかねないと見通した。

 中国の未来構想に対する両者の見解も正反対だった。2035年までに「強軍の夢」、中華人民共和国創建100周年の2049年までに「中国の夢」を実現するという習近平主席の構想が焦点となった。これについて米国側の関係者たちは、中国が2035年までにアジア太平洋での地域覇権を、2049年までに世界覇権を構築するという野望を表すものだと分析した。これは新しい主張ではない。トランプ政権でもずっと提起されてきた観点だ。問題は、バイデン政権でも同じ認識が継承されているという事実だ。

 中国側の関係者たちの反論は激しかった。1954年の周恩来の「平和5原則」発表以来、中国は反覇権主義を貫いており、今も地域または世界覇権にいかなる関心もないと主張した。米国と違って、中国はどの国とも軍事同盟を結んでいないという点をその証拠として示した。「強軍の夢」は、2035年までに立ち遅れた中国軍を、自強能力を備えた軍隊に発展させるという目標であり、「中国の夢」は、発展途上段階の社会主義中国を2049年までに先進国入りさせるという習近平主席の未来ビジョンにすぎず、覇権とは無関係だと彼らは強調した。

 最もデリケートな争点は、中国の自由化問題だった。1979年以降、米国の対中関与政策は改革開放を促し、中国の政治的自由化を期待するものだったが、習近平主席の就任後、中国が独裁政治に逆行し、この政策は失敗したというのがほとんどの米国側の観点だった。したがって以前の関与・協力の対中政策を全面的に改編しなければならないという主張だ。

 中国側の関係者たちの反応は明らかだった。中国は米国の関与政策に対する見返りとして政治的自由化を約束したことがないだけでなく、米国流の民主主義は人口14億を保有する中国の政治土壌には合わないということだった。彼らは価値の多様性と中国的特殊性を否定する価値の一極化には全く同意できず、中国共産党のリーダーシップを揺さぶり、中国の分裂と退歩を助長しようとする策に巻き込まれるわけにはいかないと、重ねて強調した。今やっと改革開放から40年、経済的浮上10年を通過した中国に、そのような要求は無理だとも語った。

 両国はなぜこのような厳しい対立構図に突き進むのだろうか。米国の東アジア専門家ポール・ヒア氏は「戦略的被害妄想症」(strategic paranoia)という用語でこれを説明する。米国は中国からの恐怖を過度に誇張し、中国はほぼヒステリーに近い攻撃的防御でこれに対応することで、問題を悪化させているという。これは米中いずれにも蔓延している傲慢や不安、無知、不信がもたらした結果だ。これに反中・反米の大衆的ムードと険悪な国内政治地形が連動し、両者の関係はさらに難しくなっている。

 しかし、明らかなのは、この戦いに一方的な勝者はいないという点だ。中国が米国の包囲と封鎖に簡単に屈するはずがなく、米国も中国の反射的抵抗のために今の路線をあきらめるはずがない。しかし、両者の対立が軍事的衝突や長期的な新冷戦の泥沼に陥れば、その被害は両国だけでなくこの地域、そして全世界に広がるだろう。根強い被害妄想から抜け出し、戦略的共感帯を構築して、共生、共存、共進化の可能性を模索する作業こそ、みんなに「ウィンウィン」の結果をもたらす最も理想的な選択であろう。

//ハンギョレ新聞社

ムン・ジョンイン|世宗研究所理事長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1018282.html韓国語原文入力:2021-11-08 02:33
訳H.J

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