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[寄稿]微生物、免疫、そしてワクチン

登録:2021-10-14 02:07 修正:2021-10-14 08:21
キム・ジュン|ソウル大学基礎科学研究院研修研究員

 免疫系さえなければ、人の体は多様な微生物が依存して暮らすには栄養分にあふれていて実によい環境だ。細菌やウイルスのような微生物の一部は、このような養分を得ようとして人の体内に侵入する。しかし、私たちの体もじっとしてはいない。防御システムである免疫系は侵入者の撃退に努め、大半はそれらを阻む。しかし、いくつかの微生物はこのような免疫系を無力化し、私たちの体内に定着して徐々に増える。増えた微生物は臓器がまともに機能できなくすることもあり、新型コロナウイルスのように深刻な場合は大きな苦痛を伴うこともある。

 初めこそ何も知らずにこの侵入者たちに防御が破られるかもしれないが、私たちの体は二度とやられないように万全の準備をする。免疫細胞に視覚があったなら、侵入者の写真でも撮って備えることだろう。しかし細胞には目がないため、他の方法をとる。微生物をやっつけて出た残りかすを利用するのだ。「今度入ってきた奴だ。よく触って覚えておいてくれ」。抗原と呼ばれるこのかすは、まるで指紋のように独特な形をしている。だから、この独特な形さえ覚えられれば、次に入ってきた時には問答無用ですぐさま攻撃できるのだ。

 このかすの形は特別な免疫細胞が記憶する。これら免疫細胞たちは種類が実に様々で、それぞれ違う形のかすにくっつくことができるという特徴がある。そのため、これらのうちのいくつかは、一部のかすには非常によくくっつく。その代わり、他の侵入者のかすにはくっつくことができない。このようにうまくくっつく細胞が信号を受けて、その敵を覚えておく。そして次の侵入に備えて何年も待つ。

 それから時間がそれほど経過していないある時、再び同じ侵入者が入ってくると、すぐに攻撃が始まる。この侵入者はいくつかの免疫細胞に細かく噛み砕かれ、そのかすが公開される。すると私たちの体は他の免疫細胞の助けを借りて武器工場を稼動させ、侵入者は武器に撃たれて無力化される。再びやられることはないのだ。

 問題は、コロナウイルスのように二度目の機会を与えてくれない侵入者が存在するということだ。だから、このような侵入者が初めて入ってきた際にも、二度目の侵入であるかのように前もって備えておく必要がある。侵入者を区別するのに必要なかすや、そのかすを作るのに必要な設計図を作り、私たちの体に注入すると、体はまるですでに一度やられたことがあるかのように備える。これこそまさに私たちが打ち続けているワクチンだ。このように体に入ってきたかすやその設計図は、侵入者を記憶する免疫細胞に直ちに信号を送ることができ、私たちは侵入者が直に入ってくる時より、はるかに苦痛を感じることなく二度目の機会を得ることになる。

 かつてないほど迅速に、新種の感染症に対処できるようにした設計図であるワクチンが誕生したということは、必ず記録しておかなければならない。もちろん、依然として新規の感染者も少なくないし、ワクチン接種者が感染したケースも少ないながら存在する。しかし、新種の感染症が登場してから、このように短時間で効果的なワクチンが大量生産され、不足してはいるものの全世界に広まったというのは、前例のない成功だ。新種の感染症がいつでも新たに登場する可能性があるということを考えると、信じられない成功でもある。コロナウイルスだけでなく、新たな微生物が常に人類に侵入しようとするだろうが、今回蓄積された経験を通じて、いかなる微生物でもワクチンで対処できるという可能性が立証されたからだ。

 これからは、技術では答えられない問題も解決しなければならない。「ワクチンの副反応は少ないと言うけれど、自ら接種を受けに行くのは心配じゃないの? コロナはかかったら大変だろうけど、必ずかかるわけでもないし」。わずかでも残っているこのような心配を解消し、韓国だけでなく全世界のワクチン供給不足も解消しなければならない。コロナ以降に襲ってくる可能性のある感染症を予防するためにもだ。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジュン|ソウル大学基礎科学研究院研修研究員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1015045.html韓国語原文入力:2021-10-13 17:55
訳D.K

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