新任のチョン・ウンボ金融監督院長が6日の就任あいさつで「パーフェクト・ストーム」という表現を使った。台風そのものは威力は大きくなくても、それが他の自然現象と相まって巨大な破壊力を持つ現象を示す言葉で、ここでは金融市場に様々なリスクが一気に押し寄せることで発生する「金融システムの危機」を指す。金融監督機関の長が市場に及ぼす悪影響を知りつつ使った言葉だ。軽く聞き流してはならない。過去にはこれといった予告なしに金融危機が訪れたことも多かったが、今はいたるところで危険の要素がキャッチされている。
チョン院長は「限界企業や自営業者の不良債権拡大の可能性、バブルの懸念が提起される資産の価格調整など、様々なリスクが一度に押し寄せてくること」を警戒し、パーフェクト・ストームに言及した。コロナ禍の長期化で損失が累積し、実際に限界線上に置かれている自営業者は少なくない。彼らの一部が借金を返済できなくなる可能性も排除できない。これらを考えると、財政拡大と金融緩和が同時に必要だ。しかし、家計が借金を増やしてマンションをはじめとする不動産に攻撃的に投資する流れが変わらないのは、さらに大きな危険要素だ。バブルがさらに大きくなってから崩壊すれば、資産デフレが金融システムを脅かし、実体経済にも大きな打撃を与えることが懸念される。
韓国銀行の基準金利引き上げ以外では、リスクがさらに大きくなるのを抑制するのは難しいと思われる。低金利をこのまま引きずって経済主体の借金がさらに増えれば、経済に及ぼす悪影響のため、金利を引き上げようとしても引き上げられない事態を招きかねない。コロナ禍の長期化で困難に直面している経済主体に及ぼす打撃を最小限にとどめつつも、借金をして住宅を購入することを抑制する基準金利の引き上げを積極的に模索しなければならない。
通貨政策を決定する韓国銀行金融通貨委員会が26日に開かれる。韓国銀行は5月末の今年の経済見通しの発表以降、年内の基準金利引き上げの可能性を示唆し続けてきた。7月15日に開かれた金通委では、7人の委員中5人が金利引き上げの必要性に共感を示した。ところが、7月初めに始まったコロナ第4波が長引いていることから、金利引き上げは遅れるだろうとして投機をあおる声が市場に広がっている。通貨政策がいつにも増して重要な局面であることを韓国銀行は認識すべきだ。財政当局と金融監督当局は、基準金利を引き上げる際には、コロナ禍ですでに大きな打撃を受けている小商工人を支援する対策も準備しておかなければならない。