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[コラム]彼らはなぜ「脱原発の破壊」に全力を挙げるのか

登録:2021-07-07 03:47 修正:2021-07-07 07:48
チョン・ナムグ論説委員
ユン・ソクヨル前検察総長が5日、ソウル大学工学館前で、現政権の脱原発政策を批判してきた同大原子核工学科のチュ・ハンギュ教授との会談後、記者団の問いに答えている。ユン前総長は「月城1号機の閉鎖に関する捜査に圧力がかかり、総長職を辞した」と述べた=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 2011年3月11日、日本の東北地方沖で大地震が起きた。その影響で福島第一原子力発電所のすべての冷却装置が破壊され、核分裂が制御不能になった。1986年のチェルノブイリ事故以来、最悪の原発事故が起きたのだ。外国人が日本から脱出し始めた。あの時、東京特派員だった私は、人々の重い沈黙の上を流れる恐怖を今でも生々しく覚えている。いま我々が知っている程度で事故が止まったのは「天運」だった。菅直人首相(当時)は「日本の国土の半分が失われるところだった」と回顧している。

 ちょうど10年が過ぎた。日本人は今、原発についてどう考えているのだろうか。NHKは全国の2311人から回答を得て、その結果を3月2日に報じた。今後、国内の原発は「減らすべきだ」と答えた国民が50%を占め、最も多かった。「現状維持」が24%、「全面的な廃止」が17%、「増やすべきだ」は3%だった。

 事故後、日本は電力生産の25%を占めていた原発の稼動を全て停止した。家庭用電気料金は、2010年の1キロワットアワー当たり20.4円から2015年には25.5円へと25%上がった。再生可能エネルギーを利用した電力生産を促進するため、負担金も課した。月に260キロワットアワー使う世帯なら、今年は年間で約10万7000ウォンを支払わなければならない。それを受け入れている日本人にNHKが再び問うた。「停止させている原発を再稼動させるべきだと思いますか」。賛成は16%のみで、39%が反対した。44%は「分からない」と答えた。日本人が原発事故から骨身にしみる教訓を得たことは明らかだ。

 電力会社にとって、原発の再稼働とはすなわち金だ。いくつもの利権集団が彼らを取り巻いている。電力会社は、以前から政治資金と広告によって政界とメディアを味方にしてきた。日本の政権を握る自民党は、福島第一原発事故の直後から原発を1基でも多く稼動させるために力を尽くしてきた。これまでに9基を再稼動することに成功している。福島第一原発の放射能汚染水を海に捨てようとしているのも、全面的な原発再稼働へと向かうためだ。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年10月に新古里(シンゴリ)5、6号機の工事を再開しつつも、残りの新規原発の建設計画の白紙撤回、老朽化した原発の稼働延長の禁止、月城(ウォルソン)1号機の早期閉鎖を骨子とする「エネルギー転換ロードマップ」を確定した。60年にわたる「段階的脱原発」計画だった。

 脱原発は、国民の命と安全を守るために目の前の利益を多少放棄する決断だ。原発に大きな利権を持つ少数は、あらゆる手段と方法を尽くしてこれを破壊しようとする。一方、多くの国民は安全の重要性を忘れて無関心になる傾向がある。電気料金が上がるだけでも動揺する。懸念した通り、政権末期に至って、大統領選挙を前に「脱原発の破壊」の旗の下に「輩」どもが総結集しつつある。彼らはエネルギー転換ロードマップが国民に損害を与えたとして総攻撃している。

 監査院は2019年9月、国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会の議決に沿ってエネルギー転換ロードマップに対する監査を行い、政府が月城1号機の経済性を実際より低く評価したと結論づけた。監査院はその後、別の監査で「違法ではなく、手続きに欠陥はなかった」と主張したが、国民の力の告発を受けて事件を捜査した検察は、月城1号機の経済性評価に介入したとしてペク・ウンギュ前産業通商資源部長官らを起訴した。

 ところが、監査院の指摘を反映して再評価を行っても、月城1号機の収益性は2015年6月に朴槿恵(パク・クネ)政権が経済性の低さを理由に閉鎖を決定した古里(コリ)1号機よりも劣る。「早期閉鎖するために評価を意図的に下げた」という論理は苦しい。しかも古里1号機の閉鎖も、経済性だけでなく安全性や国民の受け入れ度などを総合的に考慮した決定だった。検察の捜査と起訴は、有無を言わせず殴りかかって「悪い奴め」と叫んでいるのと同じように見える。

 保守メディアは「脱原発の請求書が送られてくる」といって家計の不安をあおっている。中長期的には電気料金は上がるだろうが、今はそのような話は嘘だ。電力生産における原発の割合を見れば、2018年の23.1%から昨年は28.8%にまで高くなっている。今年はさらに高くなる。脱原発はまだ始まってもいない。しかし、幻影まで作り出し、なぜこのように攻撃するのか。私の考えうる答えは一つだけだ。彼らにとっては、国民の命と安全よりも、自らに戻ってくる金と利権の方がずっと重要なのだ。再び汚い世の中がやって来つつある。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ナムグ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1002350.html韓国語原文入力:2021-07-06 13:29
訳D.K

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