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[記者手帳]逆差別を主張せよ…韓国野党第一党の36歳代表がトランプと共有するもの

登録:2021-06-12 05:22 修正:2022-09-17 08:39
[土曜版]来週の質問
米国のドナルド・トランプ前大統領(写真)と国民の力のイ・ジュンソク新代表は似ている。両者とも既成体制から最大の恩恵を受ける者として、ジャングルの法則こそ「公正な競争」だと主張するが、現実に取り残された者たちは現実に不満を抱き、むしろ彼らを支持する/UPI・聯合ニュース

 従来の左右の既成エリートを否定し、保守的な社会文化の価値を擁護する右派ポピュリズムが動力であるトランプ主義が、韓国にいつ、どのように出現するのかは関心事だった。今やトランプが韓国に本格的にやって来た。彼とは年齢やスタイルの全く異なる人物を通じてだ。イ・ジュンソクだ。

 トランプは当初、年齢と言動が彼と似ているホン・ジュンピョ元自由韓国党代表に憑依するものと内外では推測されていた。既成の左右エリートを蔑視し、保守的な右派の価値を積極的に擁護しており、マッチョで大胆な言行が似ていたためだ。だがトランプは、ホン・ジュンピョとは全くスタイルの異なるイ・ジュンソクに憑依して、彼を野党第一党「国民の力」の代表にまで押し上げた。

 トランプ大統領の当選は、共和党支持層の反民主党感情が低学歴の白人中下流層の不満と結びついたものだ。イ・ジュンソク代表の当選も、国民の力の支持層の反民主党感情、すなわち政権を取り戻さなければならないという切迫した欲求が、20~30代の若者の不満と結合したものだ。米国では史上初の黒人大統領を頂くバラク・オバマ政権に対する反発が背景にあり、韓国ではろうそく革命で誕生した文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する失望が背景となっている。自由主義的で進歩的な政権に対する期待が満たされなかったことが共通している。

 米国の共和党や韓国の国民の力の支持層の政権を取り戻すという欲求は、低学歴白人の中下流層や20~30代の若者が既存の左右エリートや既成世代(権力の主流となっている旧世代)に対して持つ不満を全面的に受け入れた。その結果は、既成の政治家ではない新たな人物の選択だ。しかし大衆は、新しさを望みながらも馴染みのあるものも求める。その結果こそ、マスメディアに芸能人のようにさらされてきたトランプとイ・ジュンソクだ。

 「新しくて馴染みのあるもの」という必要条件において、ホン・ジュンピョはもともと脱落の対象だった。これに加えてホン・ジュンピョは他の必要条件も欠いていた。つまり、トランプは米国で大衆が最も羨望する億万長者であり、イ・ジュンソクは韓国社会で若者が渇望する「良いスペック」を完璧に備えているのだ。

 発言が乱暴で非合理的な主張をするトランプと、洗練された言葉を発し、既存の非合理的な主張を排撃するイ・ジュンソクはスタイルが異なる。しかし、彼らの言動が伝えるコンテンツが違うわけではない。両者とも「逆差別」を指摘しつつ「公正な競争」を主張する。既存の多数派や主流派は少数派と非主流派に比べて差別されていると主張する。

 トランプを支持する低学歴白人の中下流層は、少数人種と移民のせいで自分たちの正当な分け前が減ったと憤る。イ・ジュンソクを支持する20~30代、特に若い男性たちは、女性や弱者の優遇政策は公正な競争ではないと主張する。

 トランプは、白人優越主義勢力が挑発した人種差別主義暴動の責任を進歩勢力や有色人種にも転嫁する人種差別主義的扇動を続けてきた。長官やホワイトハウスを白人、特に白人壮年男性で埋めておきながら、実力による公正な結果だと主張した。

国民の力のイ・ジュンソク代表=国会写真記者団//ハンギョレ新聞社

 イ・ジュンソクは著書に『公正な競争』というタイトルを付け、女性や若者、弱者に加算点を与える制度は公正な競争ではないと主張する。「あらゆるものが自由な世界はジャングル」で、「ジャングルの法則、弱肉強食の原理…それこそ自然の摂理」だと考える。

 トランプとイ・ジュンソク、そして彼らを支持する人々の矛盾はそこから生まれる。トランプとイ・ジュンソクが弱肉強食、ジャングルの法則こそ公正な競争だと主張することは、彼らはその論理の勝者なのだから当然だと言える。しかし、そのような現実に取り残され不満を抱く人々が、トランプやイ・ジュンソクを支持している。既成体制で最大の恩恵を受ける者であり勝者であるトランプとイ・ジュンソクが、その体制から落伍して不満を抱いている人々の代弁者になるという、矛盾した現実。

 トランプとイ・ジュンソクに対する歓呼は、進歩派のアイデンティティ政治も一役買ったのではないかと省察する必要がある。進歩勢力では、68革命以降は社会大衆の全般的な社会経済的地位を向上させる運動が動力を見出せず、マイノリティーと弱者のアイデンティティに依存した動員政治の比重が大きくなった。両極化が進む状況において、人種、ジェンダー、宗教などの敏感なアイデンティティ問題をめぐり激しい文化戦争が繰り広げられている間に、進歩運動の動力となるべきマジョリティ集団の中下流層は保守化した。これこそトランプが出現した背景の一つだ。

 トランプはイ・ジュンソクを通じて韓国へやって来たのだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/999061.html韓国語原文入力:2021-06-11 20:04
訳D.K

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