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[コラム]大転換時代、“米国か中国か”の「二進法外交」を越えて

登録:2021-05-19 06:34 修正:2021-05-19 09:29
文在寅大統領が13日、京畿道平沢市にあるサムスン電子平沢団地の建設現場に用意された野外ステージで行われた「K-半導体戦略報告」で演説をしている=平沢/聯合ニュース

 21日(現地時間)、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領の初の対面での首脳会談を控え、韓国外交の優先順位が変わった。「ワクチン外交」が重要な議題として浮上した。会談を準備する実務陣に加え、大使館や企業まで乗り出し、可能な限り多くの新型コロナワクチンを速やかに確保し、韓国国内での生産も増やす成果を上げるため、あらゆる手を使い動いているという。これとともに、半導体を始めとする先端技術分野で米国主導のサプライチェーン再編に参加し、中国牽制協議体であるクアッドにも一部協力を推進する方向に流れが変わっている。北朝鮮核問題と朝鮮半島平和プロセスは今でも重要だが、文大統領が就任4周年の演説で明らかにしたように、「急がないが、機会が来れば全力を尽くす」課題となった。

 ワクチン確保が切実な国民の生活の問題だという点で、現実的な変化だ。しかし、「ワクチン外交」の目にみえる成果を上げることに汲々とし、韓国外交の青写真が左右されるのであれば、本末転倒だ。今回の会談は、数十年ぶりの国際秩序の大転換のなかで、韓国が長期戦略を設け緻密に準備していく出発点にならなければならない。

 何より、米国と欧州連合(EU)を中心に始まった「中国牽制時代」の大きな流れのなかで、韓国が主要10カ国(G10)にふさわしい役割と発言権を確保していく設計図を作成しなければならない。今回の韓米首脳会談に続き、韓国は6月11日に英国で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議に招かれた。今年の下半期に米国のバイデン大統領が開催するとしている「民主主義首脳会議」にも参加する可能性が高い。米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本など既存の主要7カ国に、韓国、インド、オーストラリアを加えた主要10カ国または「民主主義10カ国」(D10)を中心とする新たな国際秩序が登場する可能性が高く、韓国がこの流れにどのような役割を果たしていくのかが、今後数十年の運命を左右することになるだろう。韓国はこれまで「米国側でなければ中国側」方式でどちらか一方の強大国を選択し、その要求に従っていく外交にとどまっていた。自ら戦略的な目標と原則を決め、国際社会の複雑な流れを綿密に読んで複合的に動く外交は、十分にできなかった。今後は0か1かの二つの選択肢しかない「二進法」外交から脱し、柔軟かつ積極的に動くことで、様々な道を作ることができる。

 まず、中国政府の大規模な支援を受けている中国国有企業がグローバル市場で不公正な競争を行い、先端技術の移転を強要することに対抗する国際規範を作ろうとする国際的な動きに、韓国も合わせなければならない。トランプ政権は「米国と中国の二者択一」を要求し、中国との取引を打ち切るよう求めた。どの米国の同盟国もこれには参加できなかった。現在のバイデン政権は「中国との取引は続けるが、中国の不公正な行為を防ぐ規範を共同で作ろう」とし、枠組みを変えた。中国の技術侵害と経済的な圧迫を懸念してきた国々にも必要な変化だ。EUと米国はすでに「中国のように貿易を歪曲させる政策を支持する国家に対し責任を求めることに協力」することで合意した。11月30日から開かれる世界貿易機関(WTO)閣僚会議では、中国の国家主導の資本主義を牽制しようとする貿易秩序が本格的に姿を現わす可能性が高い。

 北朝鮮核問題の解決と分断の克服は放棄できない重要な課題だが、国際秩序の変化の大きな流れに合わせて解決していくしかない。今回の韓米首脳会談で「朝鮮半島の完全な非核化を目標とする漸進的かつ実用的な解決策」を中心に、両国の協力を強調する結果が発表されるだろうが、ただちに朝米対話の大きな進展を期待するのは難しい局面だ。米国は、北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)の核施設以外のほかの核施設や、核物質、ミサイルなどを差し出すことを要求し、北朝鮮は、対北朝鮮制裁の大幅な緩和を始めとする敵視政策の撤回を要求することで対抗している。このような状況で韓国は、国際秩序の大転換が東アジアでの軍事的緊張を高め、北朝鮮核問題の解決と朝鮮半島の平和の土台を初めから損ねてしまわないようにすることに、より集中する必要がある。米中新冷戦が朝鮮半島周辺における双方の軍事力増強など軍拡競争の悪循環に陥らないよう、韓国が明確な役割を果たさなければならない。

 大転換のなかで韓国外交の空間を「北朝鮮核問題」に狭めず、国際社会の主要な懸案として責任ある役割を果たしてこそ、発言権を強めることができる。韓国の未来を決めるこの礎石を適切に置いたのかどうかは、後日、文在寅政権の遺産を評価する重要な基準になるはずだ。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/995696.html韓国語原文入力:2021-05-19 02:09
訳M.S

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