本文に移動

[寄稿]良心的兵役拒否者を苦悩させる韓国検察の「良心の鑑別方法」

登録:2021-03-25 02:15 修正:2021-03-25 09:13
イム・ジェソン|弁護士、社会学者

 私は、エホバの証人ではない兵役拒否者たちの刑事事件の弁護を受け持っている。良心的兵役拒否は、2018年に憲法裁判所と最高裁判所によって憲法上の権利として認められた。その後、現役服務の2倍の期間を刑務所で合宿するという代替服務が立法化された。このような変化にもかかわらず、2018年の最高裁による判例変更前の兵役拒否によって起訴された者に対する裁判は続いている。

 2018年以前の兵役拒否者に対する裁判は、問答無用で「懲役1年6カ月」が固定で下される裁判が大半だった。2018年以降は良心について具体的な判断がなされている。最高裁が兵役拒否を「権利」としたため、その権利を行使する資格である「良心」が存在するかどうかを審査しているのである。

 検察が考案した良心の鑑別方法はこうだ。まず、ウェブハード(ウェブ上のストレージサービス)の照会。加入していたウェブハードが10あまりに及ぶかどうか、加入していたならどんな動画をダウンロードしていたかを照会する。暴力ものや淫乱ものを視聴していたかを照会するためだそうだ。次はゲーム会社に対するプレイ履歴の照会。軍事作戦と似ている一人称視点シューティングゲームをはじめ、どのようなゲームをしていたのかを確認する手続きだ。それに加えて、兵役拒否者が自身の良心を外部に向けて表現する宗教・社会活動などを行ったと陳述すれば、その場所を特定させ、1年分の携帯電話の位置情報と照らし合わせる。

 個人のインターネット利用内訳、位置情報などを調べた後には、21世紀版の「踏み絵」が被告人尋問の手続きを通じて行われる。「5・18抗争における市民の武装抵抗をどう評価するか」「1980年の光州(クァンジュ)に戻ったとすれば銃を握るか」「日帝の侵略に抵抗するため武力を行使するか」「家族の命が脅かされた時、あなたはじっとしていのるか」という質問が代表的な例だ。

 質問を受けた兵役拒否者たちは、無罪を引き出すための正解が何なのかよく知っている。全ての質問に「いいえ、いかなる条件においても武力は使用しません」と答えればよいのだ。しかし彼らは苦悩しつつ答える。「銃を握って光州の道庁に残ると思います。でも誰かに向かって引き金を引くことはできないと思います」「私は武力ではない他の方法で日帝に抵抗します。しかし抗日武装闘争を非難したり、けなしたりはしません」「私の家族が私の目の前で危険な状況に直面しら、実際にはそうした状況に直面したことがないため、その瞬間に私がどのような選択をするか、明確にはお答えできません」。兵役拒否者たちの真摯で何よりも率直な回答が、有罪判断の根拠となる。裁判所はこれらの回答を根拠に、彼らの反戦・平和主義の良心は可変的で一貫していないと判断してしまう。現在までに、エホバの証人の信徒ではない現役の兵役拒否者のケースで、無罪が勝ち取られたのは1件に過ぎず、この無罪もやはり現在も上告審が継続中で、確定していない。2018年の兵役拒否権認定は大きな前進だったものの、その後は良心判定の手続きが準備もなく始まってしまい、その手続きは現在、大きな苦しみの中で進んでいる。

 以下は、ある裁判で検事が行った被告人への尋問の一部だ。「被告人は、日本軍が性奴隷にするために被告人の知人の女性を連れて行ったとしたら、どのように行動するのですか」、「被告人が主張する平和的方法で、第2の慰安婦問題は発生しないと言えるのでしょうか」、「結局は、まともな軍事力を持っていなかったために、大韓民国に慰安婦問題が発生したのではないのですか」。法廷でこの質問の書かれた紙を受け取った時、私は言葉を失った。

 良心にかこつけて特恵を享受しようとする者をふるいにかけるために必要な手続きだ、との主張もあり得る。現役の2倍の期間、刑務所での合宿服務である代替服務が、果たして特恵なのか差別(処罰)なのかは別に論ずることにして、一定の審査が必要だということには同意する。しかし、果たして現在のような粗探し式のインターネット使用内訳の照会や、侮辱するような質問で良心を審査しなければならないのなら、韓国社会は依然として良心の自由を尊重する方法を全く見出せていないと言わざるを得ない。

 このような審査が一般化すれば、すべての市民の権利である「良心の自由」という基本権の行使そのものが萎縮せざるを得ない。兵役拒否権が認められてからは、数多くの制度と慣行が良心の自由を侵害していないか疑いの目が向けられるだろう。国がこのように拒否者を侮辱するようなやり方で良心を審査し、この審査方式が一般化したとしたら、果たして誰が自分の良心を明らかにできるだろうか。

//ハンギョレ新聞社

イム・ジェソン|弁護士、社会学者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/988056.html韓国語原文入力:2021-03-24 16:31
訳D.K

関連記事