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[社説]“救助失敗”の法的責任を問えなかったセウォル号1審判決

登録:2021-02-15 20:10 修正:2021-02-16 06:47
2014年4月16日午後、全羅南道珍島東巨次島沖の海上でセウォル号が沈没し、海洋警察隊員を乗せた救命ボートが船首付近を巡っている=珍島/キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 セウォル号の惨事の際に初動対処を誤って乗客を死亡させた容疑で起訴された当時の海洋警察庁指揮ラインが一審裁判で無罪判決を受けた。ソウル中央地裁刑事22部は15日、キム・ソクキュン元庁長など海洋警察の救助関連責任者9人の業務上過失致死傷容疑について無罪を言い渡した。キム元庁長らは2014年4月16日にセウォル号惨事が起きた時、救助に必要な注意義務を果たさず、303人を死亡させ142人を負傷させた容疑で昨年2月に裁判に付された。惨事から7年近くが過ぎたが、なお苦痛から抜け出せずにいる家族だけでなく、国民も今回の判決にどこまで納得できるか疑問だ。

 裁判の最大の争点は、キム元庁長らが現場の状況を正確に把握し“ゴールデンタイム”中に退船誘導と船体進入を指揮できたか否かであった。裁判所は「惨事当時、被告人らは沈没が差し迫り船長を通じて直ちに退船措置をすべき状況とは認識しにくかったと判断される」と明らかにした。また「セウォル号の船員らが乗客に対し何の措置もしていない状況であるとまでは、被告人らには予想できなかったものと見られる」ともした。当時の状況を総合的に考慮する時、海洋警察の指揮ラインが正確な判断と決定を下すことは困難だったとみなしたということだ。

 一審の裁判部の判断の妥当性は、今後進行される上級審で争う余地が大きいと見る。特に裁判部が「被告人らがセウォル号の船長や船員らと直接交信し、退船準備などを指示したとしても、彼らはその指示を握りつぶしたり、脱出放送をしたという返事ばかりを繰り返した可能性が高い」と判断したことは過度な予断と思われる。被告人の刑事責任の有無を判断する上で厳格な基準を適用した筈だが、そうであれば発生してもいない状況に対する推論もそれだけ厳格であるべきだった。検察のセウォル号惨事特別捜査団は、二審で一層強固な法理で対応することを望む。

 ただし、裁判部が「大型の人命事故に備えて体系整備が不十分な状況に対する管理責任を叱責することができる」とし、海洋警察全体の物的・人的力量の不足を指摘したことは注視しなければならない。セウォル号の惨事は、韓国社会の安全に対する総体的無関心と無能、無責任を如実に見せた。同様な海上事故が再び起きたとき、政府は国民の生命と安全を守れるよう制度を改善し力量を強化したと言えるのか、さらにはセウォル号のような惨事が二度と起きないよう、韓国社会が安全になったのかを問わなければならない時だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/983080.html韓国語原文入力:2021-02-15 19:00
訳J.S

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