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[コラム]文在寅とバイデン、1年の同行

登録:2021-02-09 10:21 修正:2021-02-09 10:47
南北米の時間はこれまで食い違ってきた。金大中が初の南北首脳会談で平和のタイムテーブルを作ったが、ジョージ・W・ブッシュの登場で乱れが生じた。盧武鉉が任期最後に迎えた2回目の会談でタイムテーブルを元に戻そうとしたが、力が及ばなかった。文在寅とバイデン、文在寅と金正恩の残りの1年はどうなるだろうか。今回も食い違いが続くだろうか。別々に回る南北米の時計に最小限の共通部分を見出すことはできないだろうか

ペク・ギチョルㅣ編集人

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領とジョー・バイデン米大統領が先週、初の電話会談で1年間の同行を開始した。概して無難な出発だ。1週間の間隔があったが、日本の首相に続き、文大統領が電話会談を行い、バイデン大統領が就任した後に電話で協議を行った「最も近い9カ国首脳」に入ったのも悪くない。

 外交の時間から見れば、文大統領の残り1年の任期はそれほど長い時間ではない。だが、短すぎる時間でもない。おそらく文大統領が年初に構想したような「1年のバケットリスト」には朝鮮半島の平和問題が上段に置かれているだろう。

 不幸にも、これまで南北米の時間は概ね食い違っていた。金大中(キム・デジュン)が初の南北首脳会談で平和のタイムテーブルを作ったが、ジョージ・W・ブッシュの登場で乱れが生じた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)が任期最後に迎えた2回目の南北首脳会談でタイムテーブルを元に戻そうとしたが、力が及ばなかった。米国側でもビル・クリントン政権末期の対北朝鮮アプローチを実現するには、時間があまりにも不十分だった。ブッシュは任期終盤に遅れて北朝鮮の核解決に関心を示したが、韓国で李明博(イ・ミョンバク)政権が登場した。

 文在寅とバイデン、文在寅と金正恩(キム・ジョンウン)の残りの1年はどうなるだろうか。今回も、南北米の交錯は続くだろうか。文大統領と違って、バイデン大統領と金正恩国務委員長には少なくとも4年、多くは8年が残っているかもしれない。別々に回る南北米の時計で、最小限の共通部分を見出す道は何だろうか。

文在寅大統領が今月4日、米国のバイデン大統領と電話会談を行っている=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 第一に、南北であれ朝米であれ、「オール・オア・ナッシング」流の原理主義的なアプローチから抜け出さなければならない。これまで朝鮮半島問題を一気に解決しようとする「一発逆転」方式はことごとく失敗してきた。南北は、すべてがすぐに解決しそうな状況から一転し、何事もなかったようになるパターンを無限に繰り返した。朝米はまともに始動もできず、「根本的要求」を振りかざし、いがみ合ってきた。

 南北はもう落ち着いた隣人、淡々とした兄弟関係に進んだ方がいいかもしれない。まず北朝鮮の核問題を解決すべきなのではと思う人もいるだろう。だが、淡々とした隣人として生きていく過程が北朝鮮の核問題を解決する過程かもしれない。段階的な経済協力、慎重な軍縮を通じて、持続的で実用的な関係に進まなければならない。朝米も北朝鮮の核廃棄と平和協定の前後をめぐって神経戦ばかり繰り広げるのではなく、段階的・同時的にアプローチしなければならない。

 このような点で、現政権の残りの1年は、北朝鮮核問題の完全な解決よりも、これまでの成果をもとに今後を見据える時間にした方が望ましい。文大統領が3度も金正恩国務委員長に会ったので、今年上半期中に実務的に再び会い、持続可能な課題のいくつかを整理することができればいいだろう。また、今後4~8年続く米国の北朝鮮政策をきちんとセッティングするための韓米協力も非常に重要だ。

 第二に、残る1年間、北朝鮮政策に対する社会的合意のレベルを高めてほしい。現政権と与野党が冷静さと合理性を加えた対北朝鮮政策をともに模索しなければならない。

 今の韓国の国民感情は北朝鮮も嫌いだが、だからと言って対決的南北関係に戻ることも警戒しているようだ。北朝鮮に冷め切った国民感情を反映し、平和を実質的に維持する道を模索しなければならない。北朝鮮人権問題の場合、「ドルをもらって風船を飛ばす」ようなものではなく、合理的な市民の声が反映されるチャンネルを探すのも一つの方法だ。北朝鮮が戦術核を云々する状況で、北朝鮮の核抑止力をどのように確保するのかも考えなければならない。

 米中問題でも、国民的合意をもとに堂々と進まなければならない。この70年の歴史は、大韓民国の体制が正統性に欠けてはいたものの、北朝鮮体制よりは優位に立っていることを示している。その体制の柱が韓米同盟であることは否定できない。中国にもこの点を明確に認識させなければならない。中国と最大限協力し、過度な要求には、日本の輸出規制問題の時のように、決死抗戦できるという覚悟を示さなければならない。

 保守野党は、北朝鮮への原発建設支援関連文書をめぐる物議でも見られたように、理念論式の北朝鮮政策を変えない限り、政権の座に就くことは難しいだろう。強硬策で突っ走るだけの北朝鮮観では、平和を望む国民の同意を得ることは困難である。北朝鮮に原発を建設するのは、北朝鮮核問題の解決策とかみ合った古い外交安保事案であり、今になって騒ぐようなものではない。保守野党が「安全保障は保守、経済は革新」を掲げる時代もあったが、今は安保問題もある部分では中道に移行しなければならない。

 第三に、北朝鮮は朝鮮半島問題の単純な定数ではなく、状況に変化をもたらす主要な変数であるという点を自覚しなければならない。北朝鮮自ら平和を成し遂げなければならない。

 金正恩はすでに政権10年目だが、これまでの成績はみすぼらしい。戦術的に核兵器を保有しているかも知れないが、戦略的に北朝鮮は失敗した非正常国家だ。北朝鮮は、核廃棄の過程で国際社会の支持を得て、正常な国家に生まれ変わらない限り、決して人民の暮らしに責任を負うことはできないということを、明確に認識すべきである。

//ハンギョレ新聞社

ペク・ギチョルㅣ編集人(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/982356.html韓国語原文入力: 2021-02-09 02:40
訳H.J

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