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[コラム]新年の韓国の世論調査の読み方

登録:2021-01-08 10:08 修正:2021-01-08 12:20
柔軟でなければならない事案では柔軟でなく、スピーディーに断固としなければならない事案ではそうでないという態度が、支持率により大きな影響を及ぼす。李明博、朴槿恵両元大統領の赦免に関する論争も同じような脈絡だ。国民統合と外延の拡大は国民生活と政策を通じて実現していかなければならず、価値をあきらめたり、政治的座標を途中で動かすことで得られるものではない。
今月5日午前、文在寅大統領が大統領府で開かれた新年初の国務会議で国旗に対し敬礼をしている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 2021年はマスコミが実施した世論調査で新年の幕開けとなったようだ。大統領選挙を約1年後に控えた時点なので、自然とそうなっただろう。今年最初の世論調査の結果は2つに要約できる。一つは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政運営支持率が就任以降最低値に落ちたということだ。「岩盤支持層が崩れた」または「レームダック開始」という分析があふれる。二つ目は、世論調査機関ごとに差はあるものの、ユン・ソクヨル検察総長が大統領選の支持率2、3位または1位に明らかに上り立ったという点だ。

 世論調査は民意の行方を示すバロメーターとよくいわれる。しかし、振幅の大きい針の志向点を正確に読み取るのは、思うほど容易ではない。期待と希望に偏って見たいものだけを見たり、状況を暗鬱に思うことはむしろ毒になりやすい。世論調査に酔った権力と政治家が失敗した事例は枚挙にいとまがない。

 まず、好むと好まざると、ユン総長が野党の有力な大統領選候補になったことは否定できない現実となった。ユン総長が新年、国立顕忠院を訪れ、昨年とほぼ同じ内容の芳名録を書いたことは意味深い。1年前の芳名録と変わったのは「国民と共に」という言葉が抜けたことだけだ。なぜ外したのかは自明だ。政治的論議を避けるためだ。しかし昨年と同じ内容を書いたことから、「国民と共に」という部分まで一緒に読みとってほしいという真意をたやすく察することができる。このような検察総長が政治的中立を守れるのかという懸念と批判は妥当だ。しかし重要なのはユン・ソクヨル総長ではなく、1年前に彼が言及した「国民」だ。ユン・ソクヨル総長と直接争うよりも、4月のソウル・釜山市長補欠選挙で国民の支持を得るほうが検察改革推進にはるかに効果があるという点を受け入れなければならない。

 新年の世論調査で文大統領の支持率は30%台後半から40%台前半まで様々だった。いずれにせよ、就任以来の最低値であることは否定できない。これは本当にレームダックの始まりであり「岩盤支持層」崩壊の兆候だろうか。レームダックが政権に与える最大の負担は、議会と政権与党が大統領の政策アジェンダを立法化することに消極的になるという点だ。これでは「成功した大統領」になるのは難しい。しかし、議会が全面的に立法権を持つ米国と違い、韓国ではこの問題が政権の成否を分ける決定的な要因にはならない。むしろ官僚に対する統制力が弱くなるのが問題だが、官僚社会の気流は4月の補欠選挙の結果にもっと大きな影響を受けるだろう。

 文大統領の支持率が落ちたことについて、まるで政権崩壊の序幕のように言うのはナンセンスに近い。歴代大統領の任期5年目の第1四半期の世論調査の結果(韓国ギャラップ)を一度見てみよう。国政運営支持率が、金泳三(キム・ヨンサム)14%、金大中(キム・デジュン)33%、盧武鉉(ノ・ムヒョン)16%、李明博(イ・ミョンバク)24%だった。弾劾で任期を1年ほど残して退陣した朴槿恵(パク・クネ)大統領の4年目(2016年)1~3月の支持率は36~43%の水準だった。今の文大統領の支持率と近い。その時マスコミはこれを「朴槿恵(パク・クネ)のコンクリート支持率」と言った。この支持率を信じて朴大統領は2016年4月の総選挙で「朴槿恵派の議員公認」を無理に推し進めて、結局総選挙の敗北とともに20%台に支持率が崩れた。文字通り「コンクリート支持率」はその時崩れた。文大統領と朴前大統領の政治的立場は異なるが、支持率の基準を恣意的に適用することは政治攻勢以外には特に意味がない。

 本当に重要なことは、政権勢力が世論調査の結果を正確に解釈することだ。支持率が落ちたなら、その理由が何なのかを明確に悟ることは緊要だ。不動産や教育のように多くの国民の利害が交錯する事案は、十分な時間をかけて様々な意見を収れんし、解決策を模索することが望ましい。こうした事案で「迅速な効果」を強調すれば、予期せぬ弊害が出やすい。コロナ防疫も似ている。進歩政権であれ保守政権であれ、コロナ防疫の目標と価値が異なるわけではない。だからこそ野党に積極的に説明し、協力を求めなければならない。しかし、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の発足のように、政治的価値が明確に分かれる事案では、迅速に実行し、その結果に対する責任を負うのが正しい。柔軟でなければならない事案では柔軟でなく、スピーディーに断固としなければならない事案ではそうでないという態度が、支持率により大きな影響を及ぼす。

 李明博、朴槿恵両元大統領の赦免に関する論争も同じような脈絡だ。この事案は、政治的志向と価値によって明確な見解が分かれざるを得ない。国民統合と外延の拡大は国民生活と政策を通じて実現していかなければならず、価値をあきらめたり、政治的座標を途中で動かすことで得られるものではない。

//ハンギョレ新聞社

パク・チャンス先任論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/977573.html韓国語原文入力:2021-01-0702:38
訳C.M

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