世界中が先を争ってジョー・バイデン候補の米大統領当選を祝った。躊躇していた中国の習近平国家主席もお祝いのメッセージを送った。しかし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とロシアのプーチン大統領は沈黙を守っている。なぜだろうか。時間は北朝鮮の味方だと思っているからなのか。
クリントン政権は第1次北朝鮮核危機(1993年)の際、軽水炉以外に抜本的な解決策を出すことができなかった。金正日(キム・ジョンイル)総書記は1993年7月、ジュネーブの朝米高官級会談に出席するカン・ソクチュ代表に「時間を稼げ」という指針を下した。北朝鮮は「苦難の行軍」時代にも核開発を中断しなかった。
ブッシュ政権は金正日総書記を「悪の枢軸」と見なし、斬首作戦を試みており、2005年9月にはバンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮秘密資金口座を凍結した。白旗投降すると予想されていた北朝鮮は2006年10月、1回目の核実験で対抗した。リ・ヨンホ初代駐英大使は3年前に赴任した時、「2~3年だけ時間を稼いでほしい」というカン・ソクチュ外務相の言葉をようやく理解できた。
オバマ政権は8年間にわたる「戦略的忍耐」で北朝鮮の核開発を幇助した。金正日総書記は2009年5月、二度目の実験を断行し、息子の金正恩委員長は、政権に就くやいなや、核とミサイルを爆竹のように打ち上げた。2017年9月の6回目の核実験を最後に水素弾の発射実験に成功し、11月には米国本土を射程圏内に捉える大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星-15の発射実験を行った。
トランプ大統領は就任直後、金正恩委員長と激しく対立するかのように見えたが、史上初めて朝米首脳会談を開いた。しかし、北朝鮮の核交渉はハノイでの2回目の朝米会談が物別れに終わって以来、約2年間足踏み状態だった。北朝鮮は今年10月、労働党創党75周年に世界最長の「怪物大陸間弾道ミサイル」を披露した。結果的にトランプ大統領も北朝鮮の核・ミサイル開発のための時間稼ぎに協力したわけだ。米軍事報告書では、北朝鮮が今年末までに核弾頭100個を生産できると明らかにした。
対北朝鮮制裁が続けば、再び「苦難の行軍」時代が到来するという予測は、単なる西側の希望にすぎない。1990年代後半には、伝統的な友好国だったソ連と中国が韓国と国交を結び、弱り目に祟り目でソ連が解体する世紀の混乱の中で、大飢饉まで襲った。いくら周囲を見回しても、北朝鮮を助ける国はいなかった。頼れるのは主体思想だけだった。「北朝鮮は草の根をかじってでも絶対屈しない」というプーチン大統領の指摘通りだった。
今、超強力な制裁下にいる金正恩委員長の後ろには中国とロシアがいる。特にロシアは、北朝鮮と同様、西欧の制裁を受けていて「同病相憐れむ」立場にあり、多様な方法とチャンネルを通じて北朝鮮に食糧とエネルギーを提供している。朝ロ国境の鉄道駅は24時間営業している。北朝鮮の軍事力は、全面的にロシアに依存している。1990年代の「苦難の行軍」とは比べ物にならない。
バイデン氏はトランプ大統領とは違って、ボトムアップ方式の対外政策を好む。これは、トップダウン方式よりも多くの日時を要する。バイデン氏と金正恩委員長は大統領選挙過程で、「ならず者」や「狂犬」と呼び合い、互いを激しく非難した。人権問題に対する認識の差も大きい。しばらく冷却期間が必要だ。先日の労働党創党75周年演説の最後の部分で、「時間は我々の味方」と豪語した金正恩委員長の発言をじっくり考えなければならない。金委員長と共に、バイデン候補の当選に沈黙を守っているプーチン大統領の考えも気になる。今週、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が派遣した特使のロシア訪問結果が注目されるのもそのためだ。