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[コラム]サムスン副会長裁判、“法律技術”使って勝っても負ける道

登録:2020-12-11 10:56 修正:2020-12-11 12:42
[コラム]サムスン副会長裁判、“法律技術”使って勝っても負ける道
今月7日午後、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所で開かれた国政壟断破棄差し戻し審裁判に出席するサムスン電子のイ・ジェヨン副会長と元役員たち。一番左がイ・ジェヨン副会長/聯合ニュース

 一昨日、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の国政壟断破棄差し戻し審の裁判が開かれた。サムスン順法監視委員会(順監委)の活動を評価した専門審理委員団の3人が意見を述べた。被告人のイ副会長も法廷に出席した。裁判部は順監委に対する専門家の評価をイ副会長の量刑に反映することを予告している。メディアはイ副会長の運命を分ける裁判だと大騒ぎしたが、肝心の評価結果に関する報道はわずかなものだった。

 評価の核となったのは、順監委の実効性と持続可能性についてだ。特別検察官(特検)チームが推薦したホン・スンタク会計士は「不十分だ」という評価を、イ副会長側が推薦したキム・ギョンス弁護士は「肯定的な一歩」という意見を出した。裁判部が指定したカン・イルウォン委員(元憲法裁判官)は「順法監視組織の地位と人員を強化した点は肯定的だが、新たに発生しうる危険を定義し、先制的に予防するには至らなかった」と指摘した。全体的な文脈を見ると「限界が多い」ということが強調されたが、是非を明確に問わずどっちつかずでやり過ごした。

 評価が食い違うのは予想されたことだ。裁判所は当初「客観的で中立的な専門家の意見を聞く」と約束した。しかし、サムスン側の事件を担当した弁護士を審理委員に指定した。一致した意見を出せずうやむやにならざるを得ない構造だ。評価過程はどうだっただろうか。審理委員を指定してわずか1カ月で評価意見を出すよう求められた。審理委員らが現場調査を行ったのはわずか3日、10時間足らずだった。3人とも与えられた時間が少なく、調査と面談に限界があったと評価したほどだ。量刑の主な基準にするとしながら、拙速に進めたのだ。

 最高裁の破棄差し戻しの趣旨に戻ろう。最高裁は懲役2年6カ月に執行猶予4年を言い渡した二審を完全に覆した。二審と異なり、朴槿恵(パク・クネ)前大統領に経営権継承の援助を期待し、黙示的な請託をしたことを認めた。賄賂・横領の金額も36億ウォンから86億ウォンへと拡大した。一言で言って、より重刑に処するようにしたというのが要旨だ。

 しかし、予想しなかったカードが登場した。破棄差し戻し審裁判部が「回復的司法」という理論に基づき、「サムスンの順法経営を量刑に反映する」と明らかにしたのだ。順法経営の意志と活動を示せば善処の根拠にすると宣言したわけだ。サムスンはすぐに順法監視委員会を設置した。これまで背任・横領・賄賂行為で「善処の機会」もなく処罰されてきたほかの財閥のトップたちは、どう思っただろうか。

 今回が初めてではない。イ副会長とサムスンは危機が起きるたびに、新しく多様な「法律技術」で処罰を避けてきた。経営権不法継承疑惑の捜査で二度目の拘束の危機にぶつかると、「捜査審議委員会」という武器を取り出した。法曹記者たちにも馴染みのない、できて2年足らずの機構だ。無実の刑事事件の被疑者を保護するための制度だが、これを財閥のトップが使ったのだ。委員会は各界の市民と専門家250人のうち13人で構成され、サムスンを積極的に擁護してきた教授が委員に抽選される偶然まで重なった。結果は「捜査も起訴もするな」ということだった。結局、イ副会長は拘束を免れ、検察はあやうく起訴もできないところだった。イ副会長の法的対応には多様な助力者が登場する。法律技術者たちだ。彼の弁護団には元検察総長や元最高裁判事など、数百人の法曹人が布陣している。国内の大手法律事務所や会計法人の専門家も数え切れないほどいる。サムスンの守護神を自任する一部マスコミと教授らも欠かせない。

 強固な「サムスンカルテル」に対する自信からだろうか。サムスンのオーナー一家の態度には変わりがない。大型の不法・不正が明るみになれば、ひとまず全方位に世論戦を繰り広げる。うまく行かなければ、検察捜査と裁判で法的有利・不利を執拗に問い詰め、処罰を最小化する。そして、どうしようもない場合には国民向け謝罪と約束し、そしていつそんなことを言ったのかというような過去への回帰を繰り返してきた。法は最小限の常識と道徳というものではなかったか。常識と道徳に反する「法的勝利」を正義と公正とは思わない。やむを得ず受け入れるだけだ。勝っても負ける道である。

 イ副会長の破棄差し戻し審は早ければ年内に最終判決が出る。専門家の評価が分かれており、何を取捨選択するかは裁判部の役目となった。「正義にのっとった判決は結果ではなく過程だ。判決に至る過程が正義で公正に見えるようにすることだ」。教科書に出てくる司法の正義の本質をじっくり考えてみてほしい。

キム・フェスン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/973698.html韓国語原文入力:2020-12-1102:39
訳C.M

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