不幸と苦難を耐え抜く力は一縷の希望だ。今はお金がなくても、家がなくても、人間として尊重されなくても、もう少し我慢すれば、今よりは良くなるという希望がある時、人は超人的な誠実さと忍耐力を発揮する。しかし、希望にも有効期限がある。希望が水の泡となり、事あるごとに無視された時、希望は挫折し、悲しみを通り越して怒りへと変わる
6年前、セウォル号惨事で娘を失った「ユミンパパ」キム・ヨンオさんが46日間にわたるハンストを敢行した。当時、文在寅(ムン・ジェイン)民主党議員は10日間、彼のそばで共にハンストを行った。彼が大統領になった今、大統領府前でセウォル号生存者のキム・ソンムクさんが1カ月以上ハンストを続けている。要求事項は6年前の「ユミンパパ」の時とあまり変わらない。徹底した真相究明と責任者の処罰。セウォル号調査を担当してきた社会的惨事特別調査委員会(社惨委)の活動が来月10日で終了し、5カ月後にはセウォル号関連の公訴時効も満了する。依然として事件の真相は五里霧中だ。セウォル号遺族が真相究明を要求する度に、政府は「社惨委の調査と検察の捜査を見守ろう」と述べてきたが、そうやって見守っているうちに期限が迫ってきた。今月2日、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の記録物を公開し、社惨委の期限を延長してほしいという国会請願に10万人超える市民が参加した。ところが、まだ政府与党からは反応がない。
4年前、国会ではテロ防止法の通過を阻止するための議事妨害(フィリバスター )が行われた。合計192時間27分という世界最長の記録を打ち立てて、フィリバスターに参加した野党議員は「多数党になれば真っ先にテロ防止法を廃止する」と公言し、共に民主党はこれを総選挙の公約に掲げた。2016年の第20代総選挙で与野党の議席数が逆転したが、テロ防止法廃止案を提出した政党はなかった。第21代国会が始まってから、与党の共に民主党のイ・ビョンフン議員のテロ防止法改正案が発議された。テロの定義を拡張し、「感染病に対する検査と治療を拒否する行為」もテロ行為と見なすという内容だ。「テロ防止法は令状なしの国民査察を許容し、憲法上の基本権を制限する」としてフィリバスターを主導した政党が、テロ防止法を一層強化する案を出したのだ。
2年前、24歳の下請会社の青年労働者キム・ヨンギュンさんが泰安(テアン)火力発電所でベルトコンベアに挟まれて死亡した。文在寅大統領はキム・ヨンギュンさんの母親のキム・ミスクさんと面会した際、「利益よりも命と安全を重視する制度を作る」と約束し、イ・ヘチャン当時共に民主党代表は「二度とこんな事故が発生しないよう、処罰の強化と関連立法に向けて努力する」と述べた。さらに「キム・ヨンギュン法」と呼ばれる産業安全保健法(産安法)改正案が国会で議決されたが、危険の外注化を防ぐという約束は破棄された。責任を負わなければならない元請会社の業種範囲は極めて制限的だった。キム・ヨンギュンさんや九宜(クイ)駅のホームドアを修理中に事故に遭い死亡したキム君の仕事場は、同法の適用対象ではなかった。
今年8月、重大災害企業処罰法の制定を求める国民同意請願が提出された。提案者はキム・ヨンギュン財団のキム・ミスクさんだった。9月7日、新たに選出されたイ・ナギョン共に民主党代表も国会演説で、「毎年約2000人の労働者が犠牲になる不幸を防がなければならない。重大災害企業処罰法が早期に処理されるよう、所管常任委が努力してほしい」と述べた。しかし最近、与党は企業の負担を考慮し、重大災害企業処罰法の代わりに産安法の改正を推進する案を検討している。
チャン・チョルミン共に民主党議員が発議した産安法改正案は、元請企業の責任者を処罰する代わりに課徴金を大幅に引き上げる方に重点を置いている。同時に3人以上、または1年間に3人以上の労働者が死亡した場合、課徴金を最高100億ウォン(約9億4千万円)まで払わせるという内容だ。キム・ヨンギュンさんが死亡した泰安火力発電所では、今年9月にも貨物車の運転手が再び機械の下敷きになって死亡した。2年間で2人が死亡したが、共に民主党の産安法案によると、巨額の課徴金の対象にはならない。「1年に3人、100億」という基準が一体どこから出たのかは不透明だ。1年に5人、1000億ウォンだとしても、元請と下請けの鎖の中で1日5.5人が労災で死亡する現実を変えられない。
不幸と苦難を耐え抜く力は一縷の希望だ。今はお金がなくても、家がなくても、人間として尊重されなくても、もう少し我慢すれば、今より良くなるという希望がある時、人は超人的な誠実さと忍耐力を発揮する。しかし、希望にも有効期限がある。希望が水の泡となり、事あるごとに無視された時、希望は挫折し、悲しみを通り越して怒りへと変わる。
4年前の今頃を覚えている。アスファルトの冷気が背筋まで伝ってきたが、寒さを感じなかった。これを機に、腐敗した政治を正せるという期待があったからだ。今のような現実を迎えるために、ろうそくを掲げたわけではない。ろうそくに込められた希望を担保に権力を得たなら、ろうそくに込められた熱望を一つひとつ実現することに、その権力を使うべきだ。岩盤支持層を盾に傲慢で安逸だった権力がどんな結末に至るのかを、はっきり覚えておかなければならない。誰のための改革なのかを明確にできなければ、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の新設や検察改革も虚しいだけだ。「政権継続」は改革の結果であって、目的ではない。