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[コラム]ノーベル賞受賞の特典が「専用駐車スペース授与」の米国

登録:2020-10-16 09:34 修正:2020-10-16 18:33
2020年ノーベル化学賞共同受賞者、米カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授=スウェーデン・ノーベル委員会のホームページよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 10月初め、ずっと国際部の夜勤者が神経をとがらせていた二つの悩みが解消した。ノーベル賞受賞者の発表と、ドナルド・トランプ米大統領の新型コロナ感染だ。米大統領に何か大きな変化が生じた際、夜勤記者に起こる事態を読者も容易に想像できるだろう。毎年日程が予告されているノーベル賞は、読者にとっては意外かも知れないが、一度でも経験した記者は誰もが知っている緊張感あふれるイベントだ。

 ノーベル賞受賞者は、たとえば文学担当記者が有力作家たちの文学世界を解説する記事を予め書いておいても、10年連続でお蔵入りになるほど、予測が難しい。個人的には、2013年にヒックス粒子を予見した2人の老学者の物理学賞受賞日に夜勤担当ではなかったことを、今も天運だと思っている。世界で最高の知性を称える記事は、いくら短くても、下手に書いたら恥をかくはめになる。韓国時間で夕方に発表されるため、これまでの経験を総動員しても、締め切りを守るのは至難の業だ。

 12日(現地時間)、トランプ大統領が米現代医学の“奇跡”を誇示するかのように、感染確認から11日後に“平然と”フロリダ州遊説現場に現れた。就任以来、ノーベル賞受賞を切望してきた彼は、退院後の初めての遊説でもその賞について言及した。彼は「(私が)ノーベル平和賞候補に指名されてから、フェイクニュースを見たが、どのメディアもこれについて言及しなかった」とし、受賞失敗の怒りをメディアにぶつけた。

 現職大統領がノーベル賞に恋い焦がれる中、米国には「ノーベル賞を持つ者の余裕」を“遊戯”に昇華させる集団がいる。2009年にあまりにも虚しかったある記事を通じてその存在を知ることになったが、当時の記事はこのように始まる。「ノーベル賞受賞は確かに難しい。しかし、カリフォルニア大学バークレー校にはさらに困難を極めることがある。中央キャンパスで駐車スペースを確保することだ」。同大学のキャンパスには駐車スペースが足りず、駐車するためには当時、年間1500ドルを支払わなければならなかった。大学側は「ノーベル賞受賞者(NL)予約席」を特典として用意し、教授たちを励ましていたが、その年、同大学の教授が経済学賞を受賞したことで、駐車スペースが話題になった。この大学では8番目の受賞者かつ現職としては5番目の受賞者だった教授は、お祝いのメッセージが殺到する中、「駐車許可証をもらって有用に使う計画」だと冗談を飛ばした。

 ノーベル賞の権威は以前ほどではないが、その受賞は多くの国で依然として受賞者の名前を取った記念館が建設されてもおかしくない快挙として受け止められている。 同大学はそんな世界最高権威賞への礼遇として、専用駐車スペース“なんか”(というには大都市であまりにも大切な特権であることを知らないわけではない)を掲げ、当事者もその特典に大げさな意味合いを与えていた。「わが校はそれほどノーベル賞受賞者が多い」ということを誇示する、知性人たちの洗練された“遊戯”のように見えた。

 今月6日、同大学のジェニファー・ダウドナ教授がノーベル化学賞を受賞した。「バークレーニュース」は「専用駐車スペースを与える伝統について、総長に感謝の意を表した」というダウドナ教授のコメントを取り上げた。ソーシャルメディアでも、学校の伝統遊戯に参加する化学科卒業生たちのお祝いのメッセージが相次いだ。彼らはノーベル賞受賞よりも経済学科で独占していた「NL専用駐車スペース」が化学科にも与えられたことを歓迎し、母校に対する自負心をあらわにした。

 ダウドナ教授は同大学の25番目のノーベル賞受賞者だ。韓国が2000年のノーベル平和賞を受賞して以来20年間、一人の受賞者も輩出できない間、同大学は11年間でさらに17の賞を追加しただけでなく、24番目の受賞者は前日に物理学賞受賞者となった同校のラインハルト・ゲンツェル教授だった。さらに言えば、カリフォルニア大学バークレー校は米国でノーベル賞受賞者数で首位の大学でもない。

 ノーベル賞受賞者が米国に偏っているのは事実だ。1901年から2020年まで、ノーベル賞の歴代受賞者933人のうち、米国出身が391人だった。第2位の英国133人と比べても3倍も多い。この数字に内在する偏向性を考慮しても、特に科学分野のノーベル賞受賞は個人の力量はもとより、国家的投資と研究基盤の優秀性を示す指標であることは否定できない。この4年間で、韓国の小学生もトランプの例を挙げて米国がどれほどおかしいかを少しは語れるようになった。依然として気位の高い米国大学の「ノーベル賞受賞者専用駐車スペース」の遊戯は、トランプがまだ壊していない米国の威力を感じさせる。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ジョンユン国際部長(お問い合わせjapan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/965738.html韓国語原文入力:2020-10-15 10:30
訳H.J

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