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[コラム]限りなく政治的なワクチン

登録:2020-09-17 02:34 修正:2020-09-17 08:51
//ハンギョレ新聞社

 まもなく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンが出るという「朗報」があちこちから聞こえてくる。しかし、懸念も高まっている。数年はかかると言われていたワクチンの開発が繰り上げられたのは、11月3日の米大統領選挙前にワクチンを発売せよとのドナルド・トランプ大統領の催促、「ワクチン戦争」で勝利を得ようとする米中の攻防、金と名声を得ようとする製薬企業の熾烈な競争が絡み合っているからだ。

 トランプ大統領は「非常に近い時期にワクチンを手に入れることになるだろう」「おそらく特別な日(大統領選挙の投票日)以前だろう」とし、露骨に「大統領選挙前のワクチン開発」を迫っている。トランプ大統領にとって、大統領選挙前に実際に効果があり安全なワクチンが出ることは、それほど重要ではないように思われる。投票所に入ていく支持層に「ワクチンが出たのだから、もうCOVID-19危機は終わった」と思わせるのが目標とみられる。

 中国は11月か12月頃にCOVID-19ワクチンの大量接種を始めると、中国疾病予防統制センターの武桂珍首席専門家が14日夜、中国中央テレビ(CCTV)で明らかにした。世界で最終の臨床試験第3相が進められている9つのCOVID-19ワクチン候補のうち、5つは中国が開発中のものだ。中国はすでに7月から医療陣と国境勤務人員にワクチンを接種している。また、ワクチンが開発されればカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、アフリカ諸国に最優先で提供すると公言している。「マスク外交」に続く「ワクチン外交」を予告しているのだ。

 英米の製薬会社もスピード違反を続けている。米製薬会社のファイザーは、ワクチンが今年末に米食品医薬品局(FDA)の使用承認を受けることに備えて、すでに数十万回分のワクチンを生産してあることを明らかにしたが、臨床試験参加者たちには副作用が現れている。英製薬会社アストラゼネカとオックスフォード大学の臨床試験でも、参加者1人が横断脊髄炎との診断を受けたことを巡り、論争が続いている。新型コロナワクチン臨床試験のすべての段階の透明な公開を科学界の専門家たちは強く求めているものの、製薬会社が応じる動きはない。

 ワクチン争奪戦はすでに熾烈だ。米国は人口の2倍を超える7億人分のワクチンを買い占める契約をしており、欧州諸国がそれに次ぐ量を獲得するものと見られる。韓国政府も人口の60%に当たる3000万人分のワクチンの確保を進めていることを明らかにしている。しかし、「スピード違反ワクチン」の安全性と効能に対する懸念の中で、ワクチン拒否論者の陰謀論もより猛威を振るうだろう。北半球の冬が近づくと新型コロナの第2波が襲ってくるという暗鬱な警告が出ている中、「ワクチン・ジレンマ」が深まっている。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/962400.html韓国語原文入力:2020-09-16 15:44
訳D.K

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