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[記者手帳]ユ・ミョンヒ通商交渉本部長はWTO事務局長になるだろうか

登録:2020-07-18 06:59 修正:2020-07-20 11:54
産業通商資源部のユ・ミョンヒ通商交渉本部長が16日(現地時間)、スイス・ジュネーブのWTO本部で事務局長候補者の政見発表を終えた後、記者会見をしている//ハンギョレ新聞社

 スイスのジュネーブの現地で今、3人の国際外交・通商部門のパワフルな女性たちが、国際機関のトップの座を巡り争っている。

 164の加盟国を率いる世界貿易機関(WTO)の次期事務局長(任期4年)に産業通商資源部のユ・ミョンヒ通商交渉本部長(53)など8人が挑戦に出、16~17日の一般理事会で政見を発表し、翌日から2カ月ほどの選挙運動キャンペーンに入った。「挑戦が成功すれば、韓国経済にとって一大快挙だ。勝算があると確信している」(政府通商高官)。政府は「謙虚な姿勢で臨んでいる」とし、強い「希望」を明らかにしている。

 選挙の構図は興味深いものになった。候補者の8人のなかには、米国・欧州連合(EU)・中国・日本・インドの出身はいない。WTO事務局長の選出規定では地域配分が「考慮事項」とされているが、特定の地域ごとに順番が決まっているものではない。外信やWTOの本部があるスイスのジュネーブの内外では、事実上「女性3人」に圧縮されているという分析がすでに流れている。ユ本部長、ヌゴジ・オコンジョイウェアラ元世界銀行専務(ナイジェリア)、アミナ・モハメド元WTO閣僚会議議長(ケニア)だ。世界銀行に25年勤めた経歴を足場に、国際社会で「政治的ヘビー級」だと評価されるオコンジョイウェアラ氏が先に登録を終え、続いてユ本部長が挑戦状を出した後、モハメド氏が終盤に加勢した。モハメド氏の出馬をユ本部長が事前に感知していたかを知るのは難しい。モハメド氏は2015年のWTO閣僚会議の議長を引き受けるなど、強大な「国際通商ヘビー級」だと言われる。「特有の弁舌と優れた組織掌握力をすべて備えており、すでに世界的に有名だ」という論評が出ている。韓国政府の選挙チームも「女性候補三つ巴戦」を選挙戦の形勢だと判断し、戦略を立てる雰囲気だ。

 「長期間の無気力状態に陥っているWTOを救う」。8人が一様に第一声で主張するスローガンだ。約500年前、カルヴァンがジュネーブで宗教改革を叫んだように「WTOの更生と回復」を叫ぶ。ユ本部長は「今は沈没している船(WTO)の命運がかかっている非常事態だ。自由開放貿易と多国間主義貿易の体制の存続のために、ユ・ミョンヒを選択して欲しい」と訴えている。オコンジョイウェアラ氏は米国と中国の間の仲裁者の役割を、モハメド氏は新たな通商秩序・規範を樹立する貿易交渉に「再始動」をかけるという抱負を明らかにした。

 第二次大戦直後のブレトンウッズ体制から誕生したGATT(関税と貿易に関する一般協定)に続き、ウルグアイラウンド(UR)交渉の結実により1995年に発足したWTOは、長期間の無気力に陥っていた。国家間の貿易通商が、円満な合意・譲歩・履行より「自国の利益の保護のための紛争・対立・不履行が幅を利かせる世界」だという点が、漂流の基本的な背景だ。ドーハ開発アジェンダ(DDA)貿易交渉は、数十年間決裂して事実上失敗し、WTOの中心機能として唯一残っていた上訴機関(紛争解決機関)の構成さえも、米国が新規パネルの任命を常に退け、動きが止まっている。WTOが担当しなければならない国際貿易通商の問題を、むしろ「主要7カ国」(G7)グループのような他の機関が論議する現実が、最近の立場を示している。

 果たして日本は、ユ候補を絶対に阻止しようと否定的な行動に乗り出すだろうか?政府当局者は「日本政府の公式の立場は『立派な人物が選ばれるよう、選出過程に積極的に関与する』というレベルだ。特定候補の落選キャンペーンに乗り出す可能性は低く、満場一致で選出する構造において、日本が最後の1票を握り最後まで反対する名分もあまりない。コンセンサスが形成されれば、反対した国家も一致した行動に転じるはずだ」と述べた。強大なこぶし(影響力)を行使しWTOを動かしてきた米国・EU・中国は状況を見守るばかりだが、最後には意見を表明する公算が高い。事務局長の選出は、加盟国の支持率が低く見込みが少ない候補を途中で自主的な撤回の形式で脱落させる手続きを順に繰り返した後、最後の1人を満場一致で推薦する方式で進められる。加盟国が米国の大統領選挙(11月3日)以後に決定を先送りする可能性も考えられる。

 この1週間、候補者は現地で各国がジュネーブ代表部に派遣した通商貿易担当大使と個別に接触し、支持を訴えた。政府関係者は「貿易通商だけでなく政府のすべての省庁が駆けつけ、支援の選挙運動をあらゆる手段で展開するだろう」と述べた。国際外交通商の世界で幅広い人脈と知名度がある大統領府のキム・ヒョンジョン国家安保室第2次長が、選挙キャンペーンを終始後方から見えないように動くはずで、終盤にさしかかれば文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、加盟国の首脳たちにユ候補への支持を求めると予想される。ユ本部長が行政考試に合格した後、事務官として最初に勤務した部署が「世界貿易機関課」だった。

//ハンギョレ新聞社

チョ・ゲワン産業部記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/954158.html韓国語原文入力:2020-07-18 02:30
訳M.S

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