政府は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事態で困難を負っている中下位所得の世帯に、緊急災害支援金(災害支援金)を支給する案を固めた。中央政府が災害を理由に大多数の国民に支援金を与えるのは史上初の事だ。ソウルや京畿道など一部の地方自治体で先に推進されていた災害基本所得支給が触媒の役目を果たしたが、それだけ国民の生活と経済が類例がないほどに大きな打撃を被っている現実を反映したのだ。韓国は感染症対応がうまくいっており、全世界から拍手を浴びている。今回の措置で国民が心を一つにし、経済危機も賢明に乗り越える「呼び水」になることを願う。
政府は30日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領主宰で開かれた第3回非常経済会議で、所得下位70%の世帯について、1人世帯に40万ウォン(約3万5100円)から4人以上の世帯に100万ウォン(約8万8千円)まで災害支援金を支給することに決めた。所得下位70%以下は韓国全体の2100万世帯中1400万世帯に相当する。政府が支給対象を広げたのは、COVID-19による経済への衝撃で国民の大多数が大きな苦痛を負っている現実を考慮したものだ。生計ですら困難な脆弱階層に生活の「救命胴衣」のような役割を果たし、危機を乗り越えることができる勇気も培うことを願う。また、凍りついた消費を振るわせ、経済を生き返らせることに大きな助けとなることを期待する。
政府は受益層を増やすために労力を費やしたと言うが、結果的に支給対象から除外された所得位30%の世帯には物足りなさが残ることがあり得る。文在寅大統領も「容易ではない決定であり、多くの会議と討論を経た」と明らかにした。政府としては今後、雇用不安と企業流動性の危機のような経済の衝撃に対処しようとするのであれば、財政の余力を最大限備蓄しなければならない現実を考慮するしかなかったはずだ。これまで、大きな危機が迫る度に自分よりさらに苦しい人に譲歩する美徳を見せてきた成熟した市民意識が、もう一度発揮されると信じる。
政府は危機克服のために途方もない予算を注ぎ込んでいる。災害支援金予算も9兆1000億ウォン(約8000億円)に達する。この日、同時に発表された低所得階層と小商工業者のための社会保険料減免額(猶予を除く)も9000億ウォン(約790億円)だ。今は事情が切迫しているので、財政健全性を問う余裕はないと口をそろえる。しかし、危機の火がある程度収まれば、結局、政府と国民が後始末をせざるを得ない。そのような点で、政府が全財源の中の自治体負担分(2兆ウォン、約1760億円)を除いた大部分は、骨身を削る予算構造調整で用意すると明らかにしたのは正しい方向だ。必ず約束を守らなければならない。
政府は迅速な執行のために7兆1000億ウォン(約6240億円)規模の第2次補正予算案を速やかに提出し、総選挙後の4月中に国会で処理できるようにする計画だ。これについて未来統合党は「一回性の対策」「総選挙用ポピュリズム」との非難を繰り返した。すでに国民から支持を得られない主張だ。未来統合党が妥当な理由もなしに2次補正予算処理に協調しなければ、無責任であるとの批判は避け難いだろう。