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[コラム]盧武鉉が「核カード」を悩んだ理由

登録:2019-12-25 09:45 修正:2019-12-25 12:45
5月23日、慶尚南道金海市の烽下村で行われた故・盧武鉉元大統領逝去10周年追悼式で、ジョージ・ブッシュ元米大統領が追悼の辞を行っている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 参与政府(盧武鉉政府)4年目の2006年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は独自の核武装を悩んだ。2005年に導出された9・19共同声明(6者会合に関する共同声明・北京)がバンコ・デルタ・アジア(BDA)問題で一歩も進められなかった時だ。当時、大統領府安保室長だったソン・ミンスン元外交部長官は、著書 『氷河は動く』にこのように書いた。

 「2006年4月初め、6者協議再開の動きが見えないなか盧大統領は、韓国が北朝鮮と米国の間に挟まれて縮こまっているが、やられてばかりではなく、少なくとも独自の核燃料サイクル問題を議題に上げる案を検討しなければならないと言った。そして『ソン室長が方法を講じてほしい』と言った」

 (2006年9月、ブッシュ元大統領に会った頃)「当時盧大統領は、BDA問題で米国が北朝鮮の核を放置すれば核拡散防止条約(NPT)体制は崩壊し、その時には韓国も核オプションを考慮しなければならないため、北東アジアは核拡散が避けられないだろうとも言っていた」

 2016年に本が出た時から、盧武鉉元大統領の「核検討」の実体が気になっていた。最近の尋常でない朝米の気流を見て、再びこれを思い出した。ソン元長官に電話で聞いた。

 ー盧大統領は実際に核開発を念頭に置いていたのか、交渉用と考えていたのか。

 「この問題を語るには、当時のメモや記録をすべて調べなければならない。本に基づいたほうがいい。核サイクルを備えるということか、交渉カードだったのかも文中に書かれている」

 ー核を備えるということと読みとれるが。

 「13年が経った今、(盧武鉉の考えは)示唆するところが大きい」

 ー最近、長官は「朝鮮半島の核バランスを新たに論議しなければならない」「核能力の土壌は守らなければならない」と述べた。

 「原子力の平和的、軍事的利用の間には防火壁がない。国家は可能性の扉をすべて開いておかなければならない。北朝鮮の誠意だけを信じて国家安保をかけることはできない」

 ー韓米原子力協定は非軍事的な(ウラン)濃縮・再処理も禁じている。

 「土壌には国民の世論、政策的意志、他国に対する名分の蓄積などがすべて含まれる。協定をどうこうしようというのではなく、停止作業をしようということだ」

 ー米国の戦術核(兵器)を配備または共有しようという主張もある。

 「そんなことをして、トランプのような人が言う通りに金を出せと言ったらどうするのか。そうすれば北朝鮮と一対一の対話ができないではないか。朝鮮半島の主人が米国と北朝鮮になってしまう」

 ―米国は韓国の少量のウラン濃縮(2000年)、プルトニウム抽出(1982年)を2004年に問題視した。盧大統領の核の意志と関係があるのか。

 「私が知っている限り、関係はない。盧大統領が核の意志を持ったのは、9・19共同声明で進展を期待したが、朝米が対立していたので、いったい我々は何なんだと言ったことからだ。盧大統領は気迫のある方だ。国の気風、我々も何かしなければならないのではないかという考えが強かった」

 当時を振り返ってみると、盧武鉉がそう考えたのはよっぽどのことだったろう。2003年2月、盧武鉉就任1カ月前に北朝鮮はNPTを脱退した。2006年といえば盧武鉉が3年余り取り組んだ朝米の“たちの悪さ”に嫌気がさす頃だ。

 「核カード」は、盧武鉉らしい“発想の転換”だ。韓米FTA、大連立政権のように勝負師的な気質がうかがえる。盧武鉉の悩みには、戦時作戦統制権の移管に代表される自主国防、朝米の引きずり回されないという独自外交、力のバランスを通じた対等な外交に対する意志が込められている。

 年末年始を境に「北朝鮮の核問題」は取り返しのつかない状態になるのではないかという心配がある。北朝鮮は米国との交渉をやめ、核保有国の地位を固めた後、新たに交渉しようとするかもしれない。盧武鉉の核検討は2007年2・13合意と南北首脳会談によって現実化しなかった。今回も韓国が核を検討する理由がなくなることを待ち望む。

 しかし、もし北朝鮮が核を放棄する考えがないなら、そのような北朝鮮とどのように向き合うか悩まなければならない。盧武鉉の問題意識は、単純に核武装をしようというのでなく、どのような制約や図式にも縛られず原点から方策を探そうというものだった。

 北朝鮮核政策のいわゆる「プランB」は前代未聞の平和攻勢にもなり得るし、「核開発カード」を切り出すことにもなり得る。北朝鮮の核凍結または一部核保有をカードにして、北朝鮮と不可逆な、想像を超える平和構造を作ることができるなら、それも一つの方法ではないだろうか。

//ハンギョレ新聞社

ペク・ギチョル論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/922013.html韓国語原文入力:2019-12-25 02:37
訳C.M

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