政府は6日、ソウル江南4区(江南(カンナム)、江東(カンドン)、瑞草(ソチョ)、松坡(ソンパ)の各区)、麻龍城(麻浦(マポ)、龍山(ヨンサン)、城東(ソンドン)の各区)、永登浦(ヨンドゥンポ)区で27棟を選び出し、民間マンション分譲価格上限制の適用地域に指定した。民間マンションの分譲価格上限制は、朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2015年4月以降、事実上廃止されていたが、4年7カ月ぶりに再施行されるかたちだ。政府は今回の「ピンセット指定」により、高分譲価格が周辺の住宅価格を引き上げ、これが分譲価格上昇へと跳ね返ってくる悪循環を断ち切ると主張する。
しかし、この程度の措置で住宅価格不安を払拭できるか疑問だ。よく言えばピンセット指定であって、実際は高価値住宅所有の富裕層の反発と保守マスコミの反対に押し切られた「ちょびちょび指定」だ。
現在の住宅市場の状況は、キム・ヒョンミ国土交通部長官が「分譲価格上限制の実施検討」に初めて言及した7月初めとは大きく変化している。ソウルのマンション価格上昇傾向は江南4区と麻龍城を超え、江西(カンソ)、銅雀(トンジャク)、西大門(ソデムン)、永登浦(ヨンドゥンポ)、鍾路(チョンノ)、中区(チュング)など、全域に広がっている。また京畿道果川(クァチョン)、光明(クァンミョン)、河南(ハナム)の各市と城南市盆唐(ソンナムシ・プンダン)などはマンション価格の上昇率がソウルを上回っている。ソウル25区をはじめ投機過熱地区に指定されている所は、特別な事情がない限り、今回、分譲価格上限制地域に指定すべきだ。
特に銅雀区黒石洞(フクソクドン)、西大門区北阿ヒョン洞(プクアヒョンドン)、果川など、最近住宅価格が跳ね上がっているうえに分譲市場まで過熱気味の所まで抜けているのは、市場でも意外だという反応が出ているという。これらの地域に投機需要が集まる「風船効果」が現れかねない。低金利を背景に市中にあふれている浮動資金が不動産市場を狙っているためだ。国土部は「今回指定されなかった地域に対してはモニタリングを強化し、市場不安を誘発する兆しが見られた場合、追加指定を検討する」と明かした。しかし、過去の経験に照らすと、「後の祭り」となる可能性が高い。
政府は、経済事情が悪いのに住宅価格まで下がってしまえば、状況がさらに悪化するのではないかと懸念している。企画財政部がこのような理由を挙げて分譲価格上限制に歯止めをかけたという。ホン・ナムギ経済副首相はこの日、「経済活力対策会議兼経済関係長官会議」の後、記者団に対して「不動産市場の不安を予防するための側面と経済に及ぼす影響を最小化する方策を考慮した」と述べた。判断ミスではないかと思う。政府がいま本当に心配すべきなのは、経済事情は悪いのに住宅価格だけが上がり続けることだ。こうなると、本当に「制御不能」の事態に陥ることになる。
不動産対策は「心理戦」の性格が強い。政府が中途半端な態度を見せれば投機勢力が頭をもたげ、住宅価格は上昇する。ほとんど例外はない。これこそ以前の政府が住宅価格の安定化に失敗してきた最大の理由だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権さえも試行錯誤を繰り返すのではないかと心配だ。