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[寄稿] 都羅山駅から見た南北関係

登録:2019-09-29 20:57 修正:2019-09-30 09:14
金景一北京大学教授//ハンギョレ新聞社

 久し振りに都羅山(トラサン)駅を訪ねた。都羅山は、新羅の最後の王である敬順王が高麗に投降した後、新羅の首都を懐かしみ涙を流したとして付けた名前だという。別の見方をすれば、高麗三国統一を見守った生き証人といえる。その歴史と縁があるためか、都羅山駅は今や韓国と北朝鮮の統一を紡ぎ出すプラットホームとして生まれ変わっているようだった。

 都羅山駅で目についたものは、朴槿恵(パク・クネ)政府の時に建てた統一プラットホームだった。ドイツの壁をそのまま持ってきて、東西ドイツを行き来した米軍の貨物列車が異色だった。貨物列車の内部には、統一前の東西ドイツ鉄条網、東ドイツ警察の制服のような東西ドイツ時期の物品が展示されていた。

 疑問が起こった。なぜ韓国と北朝鮮の統一を紡ぎ出すプラットホームに、東西ドイツの文物が場を占めなければならないのだろうか?ひそかに南北統一を東西ドイツの統一方式で推進するというメッセージを表わしたのではないだろうか?

 これまで韓国の首脳たちは、ドイツを訪ねて「統一宣言」をしながら、ドイツ統一の経験から南北統一の糸口を見つけようと考えた。ドイツ統一を南北統一の他山の石としようとしたのだ。ところが北朝鮮は、東西ドイツの統一を東ドイツに対する西ドイツの体制吸収方式の統一だったと見ている。北朝鮮のこうした認識は、南北関係の本質である“ゼロサム関係”から派生したものだ。2045年までに統一を成し遂げるという文在寅(ムン・ジェイン)大統領の光復節演説を非難したが、その底辺にはまさにこのゼロサム認識がある。故に韓国と北朝鮮は、互いに統一を強調すればするほど相手に対する憂慮をなくせない。韓国が推進する南北経済協力を、北朝鮮はむしろ威嚇と見なす理由もここにあるだろう。

 南北のゼロサムゲーム構造は、冷戦時期には米ソ間の勢力均衡の枠組みの中でバランスを成してきた。経済的にも互いに二転三転して、天と地ほどの差を見せることはなかった。だが、冷戦が終わりバランスがこわれ始めた。北朝鮮は、北朝鮮対韓米日という冷戦構図の中に閉じ込められ、韓国と北朝鮮の経済格差は一瀉千里に大きくなっていった。外交的、経済的、安保的危機が同時に押し寄せた。北朝鮮は、核開発でこの崩れたバランスを取り戻そうとした。北朝鮮は果たして核という万能の宝剣で勢力均衡を見つけられたのだろうか?

 北朝鮮核30年に北朝鮮は最貧国の飢餓状態まで体験しながら、すさまじい代価を払った。今は米国が作った「制裁フレーム」に閉じ込められている。その北朝鮮核開始の時点に、東西ドイツの統一が成り立ち、韓国はそれをロールモデルとして韓国主導の統一を指向した。李明博(イ・ミョンバク)政府の「非核・開放・3000」や、朴槿恵政府の「統一大当たり論」はその真髄であった。進歩政権の「太陽政策」もやはり内容は韓国主導の統一だ。それほど統一に限っては韓国社会のゼロサム認識は堅固なものだった。北朝鮮の安保に対する憂慮が消えない原因だろう。

 南北関係の核心は、このゼロサム関係を跳び越えることだと言える。冷戦が終息した後、北朝鮮はあっという間に広がった格差により安保に対する憂慮が優先順位を占めた。その憂慮を解消するために核開発をしたが、安保憂慮はむしろ加重されてきた。そこで北朝鮮は、自分たちの制度の安全への脅威と障害物が透明に疑う余地もなく除去される時にこそ非核化議論もできるという論理を展開している。そうするためには、朝米関係の改善や停戦協定の平和協定への転換のような制度的装置が絶対に必要だろう。

 ところが、北朝鮮の制度安全を不安にする最も重要な要素は、まさに南北相互のゼロサム意識といえる。その温床は、まさに韓国と北朝鮮の途方もない経済的格差であろう。経済的優位にある韓国が、南北関係と統一を主導すると言えば言うほど、劣勢の北朝鮮はトラウマを抱くことになるだろう。結局、南北はお互いを認め尊重していくことが基本だが、それほど難しいものもないだろう。

 都羅山駅に続き再び訪ねた板門店は、警戒所も、武装も撤去されたこぢんまりとした平和ムードだった。文在寅大統領は、その非武装地帯を国際平和地帯にしようと語った。南北がゼロサム関係を跳び越えるモデル区域として生まれ変わることもできるのではないだろうか。

金景一北京大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/china/911358.html韓国語原文入力:2019-09-29 19:53
訳J.S

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