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[コラム]南も北もトランプをよく分かっていなかった

登録:2019-03-06 23:31 修正:2019-03-08 08:07
ドナルド・トランプ米大統領が4日(現地時間)、米国大学フットボールFCS全国チャンピオンシップをとったノースダコタ州立大のフットボールチームをホワイトハウスの昼食会に招請したが、メニューがマクドナルドのハンバーガーとチキンサンドイッチだった。トランプ大統領は、ホワイトハウスの料理人のディナーを準備させたが、米国企業が作ったファーストフードに変えたと話した。ワシントン/AP聯合ニュース

 「私が会った皆がハノイでの朝米首脳会談の展望を暗く見ていて驚いた。ある情報専門家は『北朝鮮の核活動は減っていない。変わったのは今後は実験をしないことだけだ。“すべての”核施設を凍結することが核心だ』と話した。韓国国内では、少なくとも寧辺(ヨンビョン)の核に関する合意はなされるだろうし、“プラスアルファ”があるかが関心事だというが、ワシントンの雰囲気はあまりに違って当惑した」

 2回目の朝米首脳会談の前にワシントンを訪問し、米国務省と中央情報局(CIA)、議会関係者にくまなく会ったある人の話だ。その人は「寧辺の核に関し米国関係者たちは『今は核物質があまりない。寧辺の核廃棄には格別の意味はない』と言っていた。ソウルとは認識の差が大きい感じだった」と付け加えた。

 朝米首脳外交が始まった過程を振り返れば、ワシントンのこうした雰囲気は珍しいものではない。昨年3月、チョン・ウィヨン大統領府国家安保室長がドナルド・トランプ大統領に金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の「会いたい」という提案を伝えた時から、非核化交渉は「トップダウン方式」にならざるをえなかった。当時ホワイトハウスの参謀は驚いて反対したが、トランプは金正恩と会うことをその場で決めた。議会だけでなく行政府内部の反対ムードを突破し、朝米交渉をここまで引っ張ってきたのはトランプ大統領だった。米国の交渉チームは信じられなくても、トランプ大統領は一度信じてみる価値があると北朝鮮は考えただろう。

 その信頼がどれほど純真なものだったのか、ハノイ会談は見せてくれた。北朝鮮は、金正恩委員長が平壌駅でハノイ行きの列車に乗った事実を異例にもすぐに住民たちに知らせた。朝米首脳会談の前日には、金委員長が実務交渉チームの報告を受ける写真を朝鮮中央通信が配布した。首脳会談成功の確信がないならば、できないことだった。この信頼の土台は、朝米実務交渉の進展であっただろう。

 ハノイ宣言が水泡に帰した後、トランプは「(実務チームが作成した)合意文が準備されていたが、署名は適切でなかった」と明らかにした。また、ワシントンのコーエン聴聞会が会談の決裂に影響を及ぼし、寧辺でない別の地域の大規模核施設を持ち出すと金正恩が驚いたという。韓米防衛費分担金交渉の結果についても事実ではない話を遠慮なくするトランプの傾向を見れば、彼が金正恩との会談をありのままに説明したと見るのは難しい。

 しかし、朝米の実務チームが寧辺核を中心に交渉を進める間、トランプは北朝鮮の“すべての”核活動を凍結し検証を受けろという“グランドバーゲン”(一括妥結)オプションを別に準備していたことは確かだと見られる。ニューヨーク・タイムズは「(会談前から)ホワイトハウスのジョン・ボルトン国家安保補佐官とマイク・ポンペオ国務長官が率いる参謀陣の数人は、トランプ大統領の“グランドバーゲン”計画が成功する可能性はゼロに近いと見ていた」と報道した。実務交渉の結果とは全く別の提案を会談場で突然出すことは、外交的に見れば“反則”だ。国際関係で最も重要な“信頼”を害する。トランプは、それを気兼ねなく行なった。ロイターは「ハノイ会談の取材に35人の記者を投じたが、最初から最後まで霧の中をさ迷った」と舌打ちしていたが、実際に会談場で準備されたものとは全く違う話を聞いた金正恩のあきれ加減とは比較にもならないだろう。金正恩を「信じられない」と言うが、本当に「信頼できず即興的な」のはトランプの方ではないか。

 北朝鮮だけではない。韓国政府もやはり米国政府内部の無謀な“グランドバーゲン”のムードを事前に感知できなかったと見える。ソ・フン国家情報院長は5日、国会情報委員会で「段階的接近を要求する北朝鮮と、一括妥結をいう米国が、双方とも相手方の戦略に対する情報が不足していた」という趣旨で話したとしても、情報が不足したのは韓国政府も同じだった。交渉の基調や方式の問題点を指摘することと、状況を正確に認識することとは別の問題だ。北朝鮮問題のように、すべての情報が霧の中で曖昧な事案は、見たいものだけそう見えて結局それを信じることになる。ハノイ首脳会談を控えて、韓国政府の外交安保チームにそうした雰囲気が強かったのではないか点検する必要がある。

 映画『最終兵器 弓』の最後の場面で、主人公は曲射弓を撃ち「風は計算するものではなく克服するもの」と言う。そうだ。現在の困難は克服しなければならない課題であって、政策基調を変える要因ではない。“対話と交渉”以外に別の代案はない。しかし、風を克服しようとしても、風向と風速は正確に知らなければならない。首脳会談決裂以後、米国と北朝鮮の事情を冷静に探ってみる時だ。

パク・チャンス論説委員室長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/884826.html韓国語原文入力:2019-03-06 19:10
訳J.S

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