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[コラム]チャン・ハジュン教授先生、“本心”で言われたのですか?

登録:2018-12-19 00:05 修正:2018-12-19 08:36
キム・ヨンベ論説委員//ハンギョレ新聞社

 「国家非常事態」が宣言されて10日ほどが過ぎた。厳重な言語に相応しい事態の展開が見られないのは、目が見えていないからか、あるいは安全不感症に危機鈍感症が重なったからなのか。非常事態の宣言者が、世界的な碩学の英国ケンブリッジ大学経済学科のチャン・ハジュン教授だというのに。

 安全不感と危機鈍感を反省するという話から始めなければならないようだ。碩学の発言を報じるインタビュー記事が出たら、下線を引きながら読んで十分に噛みしめて熟知するのが当然なのに、「非常事態」というタイトルに眉をひそめて「最低賃金」発言の内容に少しうなずくだけで済ませてしまったから。

 「非常事態」がコラム・社説で繰り返し使われ、ネット放送の俎上にも上がったので、反省の意味で遅ればせながら探してもう一度読んでみた。チャン教授が診断する韓国経済の問題は、「20年間積もり積もった投資不足と新技術不足により主軸産業が崩壊したことが原因」だ。続いて来年の展望、所得主導成長と包容的成長に対する問答がなされた後、「代案は何か」という質問で問題の発言が登場する。「国家非常事態という認識を持ってこそ解決策が見つけられる」。要約すれば、企業政策をうまく使って投資を増やさなければならないということだ。

 投資が萎縮している最近の状況を言っているのではなく、投資不足が20年間継続してきたということが今回のインタビューで議論された核心論拠だ。外国為替危機以前の過剰投資は言うまでもなく、その後も投資は少なくなかったのに。国内総生産(GDP)に対する総投資率が31.2%(2017年)で、経済協力開発機構(OECD)1位という事実はどうなのか。サムスン電子が世界の企業のうち研究開発(R&D)投資を最も多くした企業だという、欧州連合(EU)執行委員会の「2018産業研究開発投資スコアボード」の内容が知らされたのが今月の12日だ。サムスン電子にだけ規制を解いて、サムスン電子だけのための“特級秘密”企業政策を使ったようだ。

 非常事態と言いながら、提示した解決法も腑に落ちない。非常事態には、非常措置が伴うのが常なのに、所得主導成長と最低賃金引上は対症療法に過ぎず、体質改善をしなければならないとは。救急救命センターを訪ねてきた患者に、筋肉運動をしろと言っているように聞こえる。「次世代産業」は何が挙げられるか聞かせてほしいという注文には「かつて5、6つの重化学工業を行なっていたように集中しなければならない」と話した。政府主導でそれがうまくいくというそんな時代なのか、本心からの助言だったのか。米国の“FAANG”(フェイスブック・アマゾン・アップル・ネットフリックス・グーグル)は産業政策のおかげで誕生したのか?

 碩学なりに忠言を韓国経済に伝えたかったのかも知れないが、本当に「非常事態」という話はあんまりだ。それを裏付けるデータの適合性まで疑問を感じる。碩学の発言という理由で、談論市場はもちろん政府の政策にまで影響を及ぼす恐れがあるということを考えれば唖然とする。

 さらに気の毒なのは政府だ。17日に発表された政府の「2019年経済政策方向」で「投資活性化」はあふれていて、産業生態系の造成と直結する「公正経済」の痕跡は薄い。“チャン教授”を宿主とする“彼ら”が、少しずつ成功を収めているのではないことを望むばかりだ。“彼らの成功”が“韓国経済の成功”につながるとは思えないからだ。

 民生が苦しいことを誰が否定できようか?大企業と中小企業の格差に代表される二極化、自営業の困難、雇用難、家計負債と高い住居価格の問題。挙げればキリがない。政府の責任も小さくはない。利害関係者の調整失敗、必要な規制と必要ない規制の精巧な分離の失敗など。それでも、地震や戦争で起きる国家システムの崩壊にでも相応しい言葉が、穏当とは思えない。政府の冷徹な分別力が切実に求められる時だ。

キム・ヨンベ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/874893.html韓国語原文入力:2018-12-18 18:58
訳J.S

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