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[寄稿]安倍政権の転機

登録:2018-10-07 18:31 修正:2018-10-07 21:28
山口二郎・法政大学法学科教授//ハンギョレ新聞社

 9月に、自民党総裁選挙と沖縄県知事選挙が行われた。総裁選挙では、現職の安倍晋三首相が国会議員票では挑戦者の石破茂氏を圧倒したが、一般党員票では55%対45%と肉薄された。自民党支持者の中でさえ、安倍首相に対する不満が大きいことが明らかになった。沖縄県知事選挙では、与党系候補、野党系候補の事実上の一騎打ちの結果、野党系候補の玉城デニー氏が圧勝した。この選挙では、安倍政権が進める名護市辺野古での米海兵隊基地の建設が争点となり、建設反対を唱える玉城氏が勝利した。安倍政権の強権的な手法に対する不満が沖縄では極めて大きいことが明らかとなった。

 自民党総裁選の結果、安倍首相はさらに3年間自民党総裁を務めることとなり、自民党が衆議院選挙で負けないかぎり、安倍政権も3年間続く。しかし、総裁選での苦戦と沖縄での敗北によって、安倍首相の政治戦略には大きな困難が付きまとうこととなった。

 安倍氏がさらに3年首相を務めれば、近代日本史上最長の政権となる。その間に憲法改正を実現することが、首相の念願である。しかし、与党の中は決して改憲推進でまとまっているわけではない。総裁選の中で石破氏は安倍首相の改憲推進論を拙速と批判し、国民的合意が必要と主張した。また、連立与党の公明党は、沖縄県知事選挙で自民党とともに与党系候補を全力で応援したにもかかわらず、平和意識の強い沖縄県民に拒絶されたことにショックを受けている。沖縄県内の公明党支持層の3割が野党系候補に投票したと、出口調査は示している。したがって、公明党は憲法9条の改正には極めて消極的な姿勢を明らかにしている。

 10月2日、安倍首相は内閣改造と自民党の人事の刷新を行った。しかし、新内閣はかつてないほど右翼的な色彩が強い。従軍慰安婦や南京虐殺の存在を否定する発言をしてきた歴史修正主義者、教育勅語を賛美する復古主義者が閣僚に並んでいる。唯一の女性閣僚である片山さつき氏は、かつて、天賦人権論を否定し、生活保護受給者バッシングの先頭に立ったことがある。国民主権、個人の尊厳など近代政治の基本的価値を理解していない人物を、安倍首相はあえて閣僚に起用したのである。安倍首相は穏健、中間的な国民の支持を得るよりも、右翼的イデオロギーを持つ中核的保守層の支持を固めることで政権を維持しようと考えているようである。

 この路線は、安倍政権が売り物とする外交にとって悪影響を与える危険が大きい。これから安倍政権は中国との関係密接化、北朝鮮との国交正常化と拉致問題の解決に取り組もうとしている。アジアの近隣諸国との外交においては、歴史問題についての正確な知識と慎重な配慮が必要とされる。安倍政権の閣僚はそのことを理解しているのだろうか。国内の右派メディアで言いたい放題の放言をする感覚そのままに、閣僚として公式の場で歴史修正主義や人権無視の発言をするならば、すぐに外交問題になる。安倍首相の親衛隊を自任する政治家たちは、政権の足を引っ張る可能性が大きい。

 このような次第で、もうすぐ発足後6年になろうとする安倍政権は、にわかに前途多難の様相を呈している。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2018-10-07 20:43

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/864815.html

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