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[特派員コラム] 北朝鮮と東京オリンピックの想像

登録:2018-06-21 22:46 修正:2018-06-22 07:15
安倍晋三首相//ハンギョレ新聞社

 「チョ記者も東京オリンピックの準備をしておいた方がいいのでは?」

 数カ月前に会った同胞ジャーナリストは、2020年東京オリンピックの話題を持ち出した。日本政府が東京オリンピックのムード盛り上げに熱心であることは知っているが、2年以上先の東京オリンピックの準備だとは、少しいぶかしかった。「何の準備のことですか?」と尋ねると、想像もできない返事が返ってきた。「朝米首脳会談が成功すれば、日本も北朝鮮と首脳会談をするのではないですか?朝日国交正常化の交渉まですれば、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が東京オリンピックの開幕式に出席するんじゃないですか?」と話した。

 この話を聞いた瞬間、正直少しぼんやりしていた。朝鮮半島の平和ムードを期待する同胞の気持ちが分からないではないが、「あまりに気の早い話ではないか」という気がした。そうした気分は、金正恩委員長が12日にシンガポールでドナルド・トランプ米大統領と会って、二人が並んでホテルの庭を歩く場面が全世界にメディアを通じて広まった今でも大きく変わることはなかった。

 しかし、最近日本が北朝鮮に積極的に首脳会談の意志を打診する姿を見ていると、事実は小説よりも奇なりという言葉を改めて思い知ることになる。

 3月に朝米首脳会談開催計画が発表される前まで、安倍晋三政権は北朝鮮とは話す価値すらないという雰囲気が強かった。安倍首相は「対話のための対話は意味がない」、「北朝鮮に最大限の圧力を加えなければならない」という話を繰り返した。

 朝米首脳会談の計画発表後から安倍首相の話は少しずつ変わり始めた。安倍首相はまず「平壌(ピョンヤン)宣言」は今も有効という言葉を投じた。平壌宣言は、2002年に当時の小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問し、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長とした宣言で、国交正常化を指向し国交正常化以後に日本は北朝鮮に経済協力をするという内容だ。

 安倍首相は、先月初めにはフジテレビに出演し「朝日首脳会談を実現したい」として、「金正恩国務委員長は朝米、南北首脳会談だけすれば良いと判断して欲しくない」と話した。16日には読売テレビに出演し「北朝鮮との信頼関係を作って行きたい」として、「相互不信という殻を破って前進したい。私の決意に対する北朝鮮の反応を待つ」と話した。18日の参議院決算委員会で日本人拉致問題の解決方案を尋ねる質問には「北朝鮮と相互信頼を作り解決に注力したい」として「(金正恩)委員長には朝米首脳会談を実現した指導力がある」とも話した。対北朝鮮強硬論を最大限に活用してきた安倍首相が、北朝鮮の指導者をここまで評価する発言をした点は、超現実的という感じすら抱く。

 もちろん、朝日首脳会談に意欲を見せる安倍首相の発言には、国内政治を考慮した展示性の性格があるように見える。安倍首相は、日本人拉致問題の解決を政権の優先課題としてきたので、朝鮮半島対話ムードを活用して、この問題を解決するために努力していることを見せる必要がある。日本国内で起きている「日本はカヤの外」という憂慮も払拭する必要がある。

チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 安倍政権の急変は、力と利益に左右される国際政治の冷厳さを見せつける。米国の対北朝鮮政策の方向が変われば、安倍政権の北朝鮮と対話を摸索する努力もいつものように消え失せるだろう。朝米首脳が会って握手をする歴史上初の事態が実現されたが、朝鮮半島をめぐる情勢は冷厳でいつでも急変しうるという現実は変わりがなく見える。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/850107.html韓国語原文入力:2018-06-21 19:02
訳J.S

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