「京義線(キョンウィソン)を複線化し、中国の商品を南側に運んでくれれば年間4億ドル、東海線(トンヘソン)で黒龍江省やロシアの物資を運べば年間10億ドル以上稼ぐことができる」。北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席が、1994年にベルギー共産党の幹部にした話で、『金日成著作集』にも出てくるという。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に渡したUSBの中の「朝鮮半島新経済地図」の二本の軸が京義線と東海線という事実にも一脈通じる。
南北の鉄道が連結されれば、北朝鮮はもちろん韓国も物流費の削減と時間の節約など、相当な経済効果を上げることができる。北朝鮮と1億の人口を持つ中国東北3省経済圏を背景に、運送・保管・荷役などで少なからぬ雇用も創り出すことができる。南北経済協力が深まれば、33年後には1人当たり国民所得(GDP)が韓国8万ドル、北朝鮮5万ドルを超えるだろうという研究結果もある。
2013年から「一帯一路」を推進してきた中国は、すでに東北3省に大連~瀋陽~長春~ハルビンを連結する高速鉄道を中心に物流ネットワークを作った。瀋陽と大連につながる高速鉄道と高速道路が全て通る丹東(タンドン)は、北朝鮮の新義州(シンウィジュ)と目と鼻の先にある都市だ。北朝鮮は2014年2月、その新義州から平壌(ピョンヤン)を経て開城(ケソン)まで続く高速鉄道と高速道路を6年以内に建設(契約金240億ドル)するとして、国際投資団(SPC)と契約したことがある。ロシアの事業者(モストビク)も、2014年10月、北朝鮮と「ポベダ(勝利)プロジェクト」と呼ばれる朝ロ鉄道現代化事業契約を結んだ。北朝鮮が希土類、ニッケル、亜鉛などの鉱山開発権を提供することを条件に、20年間かけて進めようとしていた事業だった。
二つの契約は共に北朝鮮核問題で不発になりはしたが、朝鮮半島の南北が冷戦と核で足止めを食っている間に、中・ロは中国大陸貫通鉄道(TCR)とシベリア横断鉄道(TSR)など、極東からヨーロッパまでを鉄のシルクロードで連結する野心に満ちたプロジェクトを推進してきた。
北朝鮮の非核化意志表明以後、南北は板門店(パンムンジョム)宣言で「東海線および京義線の鉄道と道路の連結」を約束し、朝鮮半島新経済地図も北に渡された。しかし、新経済地図の設計者だからといって、韓国が北朝鮮経済開発の主導権を持つという保障はない。4・27首脳会談の晩餐会場の和気あいあいとした雰囲気の中で、韓国政府関係者が「今後(事業を)上手くやろう」と言ったところ、北朝鮮側の要人が「(あと)4年はなんとかなるだろうが…」と言ったという。政権の浮き沈みに伴う経済協力の断絶を経験したことから出てきた憂慮が含まれている。
最近の雰囲気は、その4年とて順調ではないことを予告している。北朝鮮は南北高官級会談を取り消し、キム・ゲグァン外務省副相の口を借りて「朝米会談再考」の可能性にまで言及した。ジョン・ボルトンの「リビア方式」発言や、テ・ヨンホの金正恩委員長家族史の言及なども、北朝鮮を刺激するものだ。根本的には朝米が交換する「非核化」と「体制保障」の段階と手続きをめぐる意見の相違によるところが大きいだろう。そこには長年の敵対から来る相互不信も敷かれている。
私たちの内部にも非核化と体制保障を対等交換しようという板門店宣言自体に拒否感を示す人々がいる。北朝鮮の人権問題と対北朝鮮支援を連係させなければならず、最終目標は北の「体制変化」にあるとしたり、6・25戦争(朝鮮戦争)の責任を断罪しなければならないという主張まで展開する。北朝鮮の立場としては「不可逆的な非核化」と同時に履行されなければならない「不可逆的な体制保障」の約束を信じがたくする部分だろう。
南北首脳会談の前後に、北朝鮮と中国は二度にわたり首脳会談を行った。最近は労働党市道党の委員長が訪中し、中国の企業家は平壌(ピョンヤン)を訪問するなど、経済協力の歩みを続けている。鉄道、道路などインフラ需要だけでなく、希土類など莫大な地下資源も北の魅力要素だ。「非核化」公言以後、韓国政府と中・ロはもちろん、米国側でも関心表明が相次ぐと、北は両手に餅を握って秤にかけるような格好だ。
板門店宣言と徒歩橋会合で南北経済協力の期待は高まったが、私たちが描いている朝鮮半島新経済地図の実現可能性はまだ流動的だ。北朝鮮と米国の軋轢のみならず、トランプに「体制保障も非核化の完結後でなければならない」という公開書簡まで送った野党代表が、「偽装平和ショー」だとして予算支出に反対しただけでも、新経済地図構想は動揺しかねない。
何よりも21日に訪米の途についた文大統領が、トランプと対座して北朝鮮も受けいれられる非核化ロードマップの仲裁案を作り出すことが急務だ。それでこそ非核化も巡航し、新経済地図の設計者としての優先権を行使できる空間も開かれる。