北朝鮮が文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対北朝鮮特別使節団に朝米間で非核化対話をする用意を表明し、北朝鮮の核問題をめぐる外交的解決の見通しが明るくなった。北朝鮮核問題は事実上2008年末の6カ国協議終結後10年間、外交交渉の舞台で真剣に論議されなかった。北朝鮮と米国は金正恩(キム・ジョンウン)体制発足直後の2012年2月、本格的な北朝鮮核会談を再開する内容の「2・29合意」をしたが、同年4月、北朝鮮の「光明星-3号」発射で“なかったこと”になり、その後北朝鮮核会談はまったく国際外交舞台で再開されなかった。
対北朝鮮首席特使のチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長が6日に帰国し、北朝鮮の核問題と関連して明らかにした南北間の合意は、予想をはるかに上回る内容を盛り込んでいる。北朝鮮はまず、朝鮮半島非核化の意志を明確にした。これまで北朝鮮は、金正恩体制になって核実験を4回も行うなど、核保有の意志を明らかにしてきた。2012年4月には憲法に核保有国であることを明記し、2013年3月の労働党中央委全員会議では核兵力の開発と経済開発を同時推進する「並進路線」を公式に採択した。だが今回、金正恩委員長は、特使団に「非核化は先代の遺訓だ。先代の遺訓に変わりはない」とし、非核化の意志を確認した。
今回、北朝鮮が非核化の意志を明らかにしたのは、金正恩委員長が政権についた後の行動とは異なる前向きなものだ。これまで米国が事実上、朝米対話の条件でとして北朝鮮の非核化の意志を要求してきた点に照らしてみると、朝米対話に進むする足かせを取り除いた措置と言える。北朝鮮は"対話が持続される間、北朝鮮側は追加核実験および弾道ミサイル試験発射など戦略挑発を再開することはない」ことも明確にした。北朝鮮の米本土に対する核攻撃能力を核心安保懸念事項として挙げてきた米国としては喜ぶべき発言だ。
北朝鮮と米国は最近、対話する用意があることを示唆してきた。しかし、朝米は有利な立場を先取りするための力比べを繰り広げており、対話が実現するかどうかは不透明だった。実際、ドナルド・トランプ米大統領は先月26日「『正しい条件』のもとでのみ、対話することを望む」と付け加えており、北朝鮮外務省も3日、報道官名義で「米国と前提条件的な対話の席に向き合って座ったことはなく、今後もそのようなことはないだろう」と反発した。今回の南北合意は、このような自尊心の対決が作動する余地を除去したと言える。
しかし、北朝鮮が今回明らかにした非核化の意志は「両刃の剣」の性格もある。北朝鮮は、非核化に向けた意志を明らかにしながら「北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され、北朝鮮の体制安全が保障されるなら、核を保有する理由がない」と明らかにしたが、これはこれまで北朝鮮が核保有の理由として米国の「敵対視政策」を挙げていたことと軌を一にする発言だ。言い換えれば、軍事的脅威が解消されず、北朝鮮の体制安全が保障されない限り、核保有を放棄しないという意味でもある。北朝鮮の核保有の責任を米国側に転嫁したということだ。
今後、南北首脳会談や朝米対話など本格的な対話局面が展開されれば、北朝鮮が核を放棄する見返りに、韓米など周辺国がいかに北朝鮮の体制安全を保障するかに対する答えを求める課題は避けられないものとみられる。
チョン室長の発表通り、北朝鮮が「非核化問題の協議や朝米関係正常化に向けて、米国と虚心坦懐な対話ができるという用意を表明した」と明らかにした点は、北朝鮮が長期的に朝米間の正常な外交関係樹立を視野に入れて、今回の朝鮮半島の和解局面を推進していることを示すものと見られる。事実、朝米関係の正常化は金日成(キム・イルソン)主席の時から北朝鮮が推進してきた外交的目標だった。しかし、北朝鮮の核・ミサイル問題が解決される前には遠い夢だ。結局、朝米関係の正常化への道は北朝鮮核問題の解決プロセスと共に進展されるしかない長い道のりとみられる。キム・ヨンヒョン東国大学教授は、今回の北朝鮮の立場について「米国が受けいれるしかない状況だ。米国側も、今回の合意について完全に100%ではなくても、かなり意味づけをしながら韓国側と会うことができるようになった。特使団が早めに米国に行くのは、今回の合意文に対し、米国側が肯定的な立場を示す可能性が高まったためだと思う」と話した。