「米国は対北朝鮮対話の再開条件を“非核化”に大幅に高めている」
わずか一週間の間に、この命題が真実であるかのように固まり飛び交っている。文在寅(ムン・ジェイン)政府とドナルド・トランプ行政府の対北朝鮮政策が「食い違い」を見せているという主要根拠としても活用されている。だが、これは“偽ニュース”とは言わないまでも、事実に近くはない。
発端は一週間前の15日(現地時間)、ナウアート米国務部報道官の定例ブリーフィングから始まった。文在寅大統領は、6・15南北共同宣言17周年記念式の祝辞で、北朝鮮の核・ミサイル発射中断を対話の条件として明らかにし、これを支持するかを尋ねる質問が出てきた。ナウアート報道官は「私たちの立場は変わっていない」として「会談のためには北朝鮮が先に非核化をしなければならない」と話した。
ナウアート報道官の発言が事実ならば、トランプ行政府の対北朝鮮政策が180度転換されたことを意味する。トランプ行政府の任期中には、そもそも北朝鮮と対話自体をしないということと同義であるためだ。北朝鮮が突然に心を入れ変えて、明日から熱心にすべての核プログラムおよび既存の核兵器を解体し始めても、おそらく少なくとも10年以上はかかるだろう。
文大統領の発言に反論するために、米国務部がその翌日に対北朝鮮政策を変えたと想像することは難しい。「非核化しなければならない」という発言は、それほど曖昧な話だった。
事実、フォックスニュースのアンカーだったナウアート報道官は6日に初の国務部ブリーフィングをした“新参”報道官だ。15日が4回目のブリーフィングだった。世界のあちこちにまたがる難しい懸案を記者たちの前で上手に答えることは困難だったろう。
国務部東アジア太平洋報道官室に、ナウアート報道官の発言が具体的に正確に何を意味するかを尋ねた。東アジア太平洋報道官室は、韓国担当者らと日常的に疎通するので懸案にはるかに明るい。
アリシア・エドワーズ東アジア太平洋報道官は「朝鮮半島非核化に対して信頼でき信じるに足る交渉に復帰することを目標にする北朝鮮との対話の門は開いている。非核化に向けた意味ある措置をとり、挑発を自制する責任は北朝鮮にある」と答えた。交渉の目標が非核化にあることを北朝鮮が明らかにし、これに対する誠意ある措置と緊張高揚行為の自制を交渉開始の条件として提示した。これは新しい事実でもなんでもない。
トランプ行政府は、北朝鮮との対話再開の条件をめぐり苦悩している。バラク・オバマ行政府の対北朝鮮政策である「戦略的忍耐」が失敗したと宣言したものの、非公開の集まりでは今のところ自分たちの対北朝鮮政策がオバマの時とほとんど差がないことを認めているという。新たな動力とアイディアの必要性を認識しているという話だ。北朝鮮に抑留された米国の大学生オットー・ワームビア氏の残念な死が、対北朝鮮との対話の時期をことによると相当に遅らせることはありうるが、北朝鮮核問題をいつまでも放置することは難しいだろう。
中国は、対話再開のためには北朝鮮が満たさなければならない低い条件は必要だという立場だったが、最近に入り「条件なき対話再開」側に移動しているという。習近平中国国家主席が今年11月初めの党大会を控えて、9月末までに「いかなる代価を払ってでも」北朝鮮との交渉を始めるよう指示を与えたという中国専門家の伝言もある。
このような渦中に、文大統領の“提案”があった。私たちは誰も米中の議論だけを見守っていれば良いとは言えないだろう。
韓国も積極的に介入しなければならない。ただし、ひとまず投げてみる形よりは、米国、中国、北朝鮮の反応を非公式に慎重に打診した後に、実現可能な提案を作り出すことがことの順序から見て一層賢明と言える。どれほどもっともらしいアイディアでも、周辺国との信頼がなければ実行可能ではない。